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まねきTVとSpider

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先日、佐々木俊尚さんのITニュースの読み方出発記念のセミナーに参加させていただいた。

そのセミナーでスパイダーの何がすごいのか、佐々木さんにお伺いした。アメリカ在住の僕には、あれの何がそんなにいいのかよくわかっかていなかった。
だってアメリカのでは通常のテレビ番組がどんどんオンラインでいつでも好きな時に観れるようになってきているし、視聴デバイスも豊富だ。テレビ、iPad、iPhone、PC、ネットさえ繋がればどこでも、いつでも好きな番組が見れるのだ。いつでもどんなデバイスでも見れるので、録画などという面倒なことをする必要はない。もはや、録画という概念が古臭くなってきていると思っていた。

だからスパイダーがなんでそんなにいいのかよくわからなかった。佐々木俊尚さんにご説明いただいてもイマイチピンと来なかった。
だって今時あんなバカでかい機械に、一週間分の番組全録画するってそんな力技ナンセンスだろって思ってた。
だってローカルHDに全番組のデータ突っ込むくらいなら、そのデータをクラウドなどにおいて、ユーザーはアプリなどを通じていつでも、どのデバイスからでも引っ張ってこれるようにすればいいじゃん、と思っていたので。実際、アメリカではそういう方向にむかっている。huluやNetflixがその典型的なサービスだ。

でもある事件をきっかけにようやくのスパイダーが、なぜ日本においてそんなにすごいのかわかった。その事件とはまねきTV訴訟の最高裁の判決。

ああ、なるほどね、と。ホントに府に落ちた。
日本では自分の好きな時にテレビ番組を視聴するには、ローカルHDに全番組突っ込む以外に方法が無いわけだ。
先に書いたようなクラウドベースのオンデマンドなんて提供したら、訴えられるわけだ。
判決内容や、その影響については、いろいろなブログで書かれてるのが割愛するが、こんな判決がまかり通っているようでは、オンライン配信が普及するはずもない。
http://twitter.com/#!/Hideo_Ogura/status/27277188705296384

アメリカでは、2010年からスマートTVの普及が本格化した。AppleTVやGoogleTVは日本でも聞き覚えあると思うが、実はスマートTVのデバイス他にもいっぱい出ている。rokuというプレイヤーはケービルTVチャンネルを配信することを発表した。
ABC、NBC、FOXなど大手テレビ局のオフィシャルサイトでは、人気ドラマなどがオンデマンドで視聴可能。もはやアメリカではテレビをオンデマンドで見るというのは当たり前になっている。

アメリカのテレビ局がオンライン化してゆく背景にはYouTubeなどの動画サイトの大流行がある。違法アップロードをいくら取り締まろうとユーザーのニーズが好きな時にどこからでも見たい、というところにある以上、この流れ自体は止められない。
FCCが独立行政法人としてきちんと機能しているというのも大きい。

全録と、オンラインアーカイブのどちらに優位性があるかは明らかだろう。スパイダーは一週間分の番組しか保存していない。2週間前の番組を見たいと思い立ってもすでに消去されている。大してオンラインアーカイブには当然2週間前だろうと1月前だろうと検索するだけで引っ張ってこれる。

ビジネス的に考えてもどう考えてもオンラインアーカイブ有利だ。何ヶ月前の番組にも需要されるチャンスがいつでもあるということだ。日本のテレビ局は自らのビジネスチャンスを狭めている。なぜ自分たちの首を絞めるようなことをしているのか、意味不明だ。

池田信夫先生が指摘しているように、この判決でオンライン配信が可能なのは既存テレビ局だけになってしまった。
これからもテレビ局は、競争のないヌルイ業界でぬくぬくやっていくつもりなのだろう。競争がないので、コンテンツの質の劣化に歯止めがかからず、そのうち誰からも見向きもされなくなる。そして日本の映像業界は死ぬ。

今回の判決は日本の映像業界がとんでもなくヤバイ方向に踏み出した、ということを示している気がする。
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