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映画製作者とファンが傷つけあう時代。

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今月上旬に、シルベスター・スタローン監督・主演の「エクスペンダブルズ」の制作会社、Nu Image社が、同作をBittorrent経由で違法視聴をした23,00人以上を対象に訴訟を準備している、という報道がありました。
すでに同社はUSコピーライト・グループとサインを交わしており、ISPに対してIPアドレスの開示を要求していて、これが現実に裁判となれば、ネットの違法視聴を巡る裁判として、史上最大規模のものになります。シネマトゥデイによると、同社が訴訟に踏み切った背景には劇場での成績に割には、DVDセールスが伸び悩んでいたこともあり、その理由をネットの違法視聴にあると考えたようです。

この訴訟は、ネット時代のコンテンツビジネスと著作権の今後を占う上で、非常に重要な問題をはらんでいると思います。一つの訴訟での対象者の数が半端なく多いことだけではなく、コンピューターがインターネットに接続した際に付与されるIPアドレスは、そのコンピューターを所有している個人を特定しない)という判決が最近でた直後でもあるということ。

そして、制作サイドはDVDの売上不振をやっぱりネットのダウンロードにせいにしているのか、ということ。法律ではなく、ビジネスモデルを時代の変化に対応させることができないでいる、という事実に制作サイドはきちんと向き合えているのかどうかがあやしい。

それに付随する話だが、手っ取り早くお金を生み出す方法として、制作サイドがこの手の訴訟を今後、頻繁に利用する可能性があるんじゃないか、という点。 ポルノ系のコンテンツ業者がやっているようだが、Torrentなどで違法視聴している人のIPアドレスを特定し、訴訟をチラつかせて、和解金を要求するという手口がある。このサイトでも言及されているが、ポルノの場合、違法ダウンロードで訴訟になるというのは不名誉と考えてしまう人は多いだろう。だから和解金を提示されたらそれで済ましてしまう。もしハリウッド界隈の弁護士がこの手法を製作者に持ちかけているなら大問題だ。こんなものを新たな「ビジネスモデル」にされたらたまったもんじゃない。しかし、今回のエクスペンダブルズを巡る訴訟問題は、IPアドレスが法的には個人と特定しない、となる以上、こういうパターンで弁護士は行こうとする可能性が多いにあり得る。こちらの記事では、もし和解金が2000ドルならm23,000人のうち、10,000人が払えばオスカー映画「ハート・ロッカー」の興行収入を超えるそうだ。ちなみにハート・ロッカーも同種の大型訴訟を起こしてます。

ビョークは「違法ダウンロードをしている人たちが一番音楽を愛している」と言ったことがある。権益をむさぼるレコード会社への皮肉をあるんだろうけど、確かに違法ダウンロードをする動悸は、多かれ少なかれその作品が好きだからだと思う。たしかにDVDが売れなくなり、テレビも視聴率が落ち、放映権も値下がりし、オンデマンド配信ではそれを補うことはできそうにない。だからと言って、映画制作者は映画を観たいと思っている人達に対して弓引くような行為にでるのは正しいのだろうか。時代がかわり、映画を巡るビジネスモデルは、製作者とファンを傷つけあわせるような状態を作ってしまっている。自分たちの作品を愛してくれている人達に訴訟をチラつかせて、お金を巻き上げる方法が本当に正しいやり方なんだろうか。
早いとこ映像産業は、何か別の収益の柱を立てないと、こういう訴訟がまたぞろ出てくると思う。ファンはどんどん離れていくだろう。本当に悲しいことです。

ちなみに、このサイトで自分のマシンのIPアドレスが訴訟の対象になっているかどうかを調べることができます。記事の下の画像のような所のCheck For Your IP Addressをクリックしてください。Congratulationとでれば、あなたのIPアドレスは訴訟の対象ではありません。

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