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Netflixがロビー活動のため政治活動委員会(PAC)を立ち上げ。その真意は?

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Netflix.comより転載

今朝は米国IT業界のニュースはフェイスブックのInstagram買収の話で持ち切りでしたが、もう一つ重要なニュースをがありました。政治、ハリウッド、ITコンテンツ業界といろんなところを巻き込んだ話ですので、なにげに重要度は高いかと。

 
映画オンデマンドのフラッグシップ企業であるNetflixが、political action committee(PAC)政治活動委員会を設立、選挙の際最大5000ドルまでの選挙活動資金を献金するというニュースがありました。
第一報は、politicoのこの記事だったのですが、
Netflix forms PAC

この記事によるとNetflixがネット規制を後押しし、SOPA/PIPAの支持者に対してもその活動をサポートしていたとあります。
 
Netflixもシリコンバレー近くに本拠を構えるネット企業ですが、ハリウッドとの関係は主要IT企業の中では最も緊密な存在です。何せ扱う主商材はアメリカ映画なわけですから。
 
しかし、ネット規制に加担するために政治活動委員会を作ったというのは、ホントでしょうか。SOPA問題でアメリカIT業界が大騒ぎしていた時もNetflixは割とおとなしくしていました。
 
Slash gearは、この逆の論調でSOPA問題が明らかにしたのは政治家たちがインターネットがどういうものかわかっておらず、何をどうしたら、どんな影響を現在のアメリカ人の生活に与えるかわかっていないということなので、政界に影響を与えるポジションを確保することは、Netflixにとって合理的な選択だ、いった感じです。

 
Techdirtも同様にNetflixがSOPA/PIPAを支持する意図はないとの論調ですね。

「公式の声明にもあるが、事実としてNetflixはSOPAに対して中立の立場だ。同社はハリウッドと常に交渉をしている立場にあるため、常にテクノロジーとのバランスを計らないといけない。そのため同社は政治的には基本、中立の立場を取らねばならない」
 
 
さらにSlash Gearもtechdirtも触れていますが、GigaomはNetflixのこの動きの背景にはケーブルTV会社との競争を有利にする意図があるとの指摘をしています。具体的にはNetflixはVideo Privacy Protection Act(VPPA)の改正を進めたがっているためにロビー活動を強めていると報じています。

 
Video Privacy Protection Actというのは、88年レーガン政権時代に制定された法律で、個人のビデオのレンタルや販売の記録の公表や使用を厳しく制限するもので、アメリカにおいての消費者のプライバシーを守る法律の代表的なものとされています。
 
NetflixはオンラインのDVDレンタル業からスタートしており、その業態はレンタルサービスに位置づけられています。オンデマンドサービスも同様です。

 
対して、コムキャストなどのケーブルTV事業者がオンデマンド配信を提供してもそれはレンタル事業ではなく、放送事業の枠組みになるんですね。なのでVPPAによる制限を受けることはない。
 
これが何を意味するかというと、VPPAに縛られたNetflixはその事業をソーシャルメディアと連携させることができないんですね。消費者の個人情報、視聴履歴は厳重に管理され、公表、共有してはいけないため。
 
 
昨年のテッククランチの記事ですが、NetflixのCEO、Reed Hastings(実はフェイスブックのボードメンバーでもあります)は、FBユーザーは、自分の友だちが何をNetflixで見ているのかがFBのフィード上でわかるようになり、それと同じモノをFB上で見れるようになる、と語っています。
ただしアメリカ以外の国で。
ちなみに現在世界45カ国で同社はサービスを展開しています。VPPAのせいでアメリカではこのサービスを展開できないんですね。視聴履歴を他のサービスと共有してはいけないので。
 
 
しかし、いわゆるソーシャルTVなんて言われますが、TVサービスとソーシャルメディアが連携するのは特に問題ないんです。これはいくらNetflixのUIが使いやすく、レコメンデーション機能が精度高くても、いずれ不利になるかもしれません。しかもアメリカ以外では実現できているサービスをアメリカでやれないというのも悔しいものがあるでしょうし。
 
既存の儲けやすいケーブルTV事業を維持したい目論みはあるんでしょうが、TVサービス契約率は確実に低下傾向にあり、インターネット接続からの収益が占める割り合いが増加する傾向にある昨今、このNetflixのワシントンDCへのロビー活動の増加は、アメリカのコンテンツ業界にとって大きな意味を持ちそうです。

ハリウッドのスタジオとしても、どうつくべきか難しいとこでしょう。ケーブル事業も大事ですが、時代の流れは完全にNetflixのようなオンデマンドネットを介したデバイスフリーのオンデマンドにシフトしているので、スタジオとしても舵取りの難しいところでしょうね。
 
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