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デジタル時代のインディーズ映画配給のあり方とは。2011年カンヌ映画祭でのパネルディスカッションより

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photo credit: nooccar via photo pin cc

Instapaperを整理してたら、放り込んだだけで読んでない記事がたくさんあったので、整理がてら面白い記事をピックアップしてみます。

Read Laterポチッただけで読んだ気になってちゃいかんですね。これから定期的に昔の保存記事を掘り返してみようと思います。

The Five Smartest Things Said at the Cannes Distribution Panel

アメリカのインディーズ映画情報サイト、Indie Wireの記事ですが、カンヌでのインデペンデント映画向けの配給会社によるパネルディスカッションに関する記事です。

2011年の5月の記事ですのでそんなに古くないので、今もかなり参考になる部分があります。

テーマとしては、デジタル時代のインディーズ映画配給にあり方について。映画祭に選ばれる作品は非常にすくなく、さらに昔と違ってそこから配給に結びつく作品はもっと少ない。この現状、独立系の映画監督や、製作者は作品の出口をどう確保するのか、というお話です。

パネリストは、フェイスブックのJon Fougner 、オースティンファンタスティックフェスト(B級映画の世界では有名なテキサスの映画祭)のディレクターTim League、OscilloscopeのDavid Fenke、Phase FourのBerry Meyerowitzと雑誌Filmmaker Magazineの編集者、Scott Macauley。(敬称略)

今日の動きの速い市場の中では、インディ映画作家も先を見越した配給戦略というものを考えないといけませんよ、という話ですね。具体的には、劇場配給→パッケージ化→テレビ放映といったような従来の作品流通の流れとは別の選択肢に目を向けろ、ということになります。

このパネルディスカッションでは5つのポイントを挙げています。

ボックスオフィスの外側を考えろ

MacauleyとFougnerの2人はともにJon Reissの著作、「Think Outside the Box Office: The Ultimate Guide to Film Distribution and Marketing for the Digital Era」という本をお勧めしています。日本語に訳すと「ボックスオフィスの外側を考えろ:デジタル時代の映画配給とマーケティングの究極ガイド」ということですが、この本は、デジタル時代の映画館以外に作品を世に出すルート、今でいうとアマゾン、iTunes、Huluなどのオンデマンドやデジタル配信システムと、さらにその先を見据えた内容になっているとのこと。日本語にはなっていませんが、紙の書籍と公式サイトである程度の内容は読めるようです。

この本の公式サイトはこちら。

http://www.thinkoutsidetheboxoffice.com/

売ることばかりに固執するな

Fenkeは、消費者は製品の宣伝などを絨毯爆撃のように連続して受けると息苦しさを覚えるという点を強調しています。デジタル自体の新しいメディアを効果的な活用方法は、セールスコミュニティを作ることではなく、通常の友人たちと作るようなコミュニティを立ち上げることだ、と言います。ビダル・サスーンのフェイスブックページを例に挙げて、すでに8000人のユーザーがいいねを押している同ページのような存在は、ビダル・サスーンの映画を作った時にとても有効だという話ですね。ちょっと映画の公開3ヶ月前とかに宣伝するだけじゃなくて、ロングテールのエンゲージメントを今ま以上に意識しよう、ということですかね。

批判からシグナルを作ろう

PreScreenのShawn Bercusonが指摘していることですが、配給とはターゲットオーディエンスを特定することだけでなく、彼らとコミュニケーションする道を作ることでもあります。ソーシャルメディアはそうした道を作るために活用されるべきだとBercusonは主張しています。ターゲットとともにコミュニティを育て、エンゲージメントを深めていくと、ターゲットのオーディエンスはさらに深く映画にコミットメントしてくれるようになります。

この主張は、「サイタマノラッパー」がやってることに通じるかもしれませんね。あの映画は監督も主演俳優も自ら街頭でチラシ配って宣伝し、手作り感を強調して周囲を巻き込んで、映画製作にも宣伝活動にも多くのファンがボランティアとして協力しています。そうして輪を広げて、予算200万円だった超低予算映画が、現在シリーズ3作目が製作・公開されることになりました。ロングテールのエンゲージメントを作ったんですね。

ソーシャルメディアの活用で興行成績のさらなるアップを

ワーナーのダーク・ナイト(超メジャー映画じゃん。。。例えが悪いな。)は、公開2週間前からのフェイスブック上のキャンペーンで約400万ドル近くの売り上げ向上に貢献したそうです。

作品をリリースするウィンドウはたくさんある、しかし映画は一つ

デジタル時代になって、劇場配給やパッケージ以外の窓口もでき、作品をリリースする窓口は広がったと言えます。こうした多くのプラットフォームに一つの作品を流通させていくかを考えることが重要と、Leagueは主張しています。できるだけ多くの窓口で取り扱ってもらう可能性を考え、スタンダードな劇場配給だけに固執しない方がいいとのこと。

昨年5月の記事ですが、今読んでみても参考になる部分が多いですね。むしろデジタル化はドンドン進行していますので、より切実に感じられます。

この記事は、作品の配給部分、つまり出口に関する話ですが、クラウドファンドの普及によって、製作面でもデジタルコミュニケーション恩恵を受けて、大きな変化が起こってきています。今年2012年はKickstarterで資金を集めたインディーズ映画が、サンダンス映画祭に17本も出品されています。

Kickstarter @ Sundance 2012

こうしたクラウドファンドによって、ファンを製作段階から巻き込むのも、ロングテールのコミュニティ形成には効果的だと思います。その意味では、配給や宣伝は製作段階ら始まっている、といいのかもしれません。

製作も配給もソーシャルメディア全盛時代の「先を見据えた」方法を模索しないといけませんね。

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