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絶賛以外の選択肢なし。映画レビュー「おおかみこどもの雨と雪」

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いや、素晴らしかった。絶賛以外の選択肢がない。

いや、無論細部の気になる部分をあげつらうこともできる。完璧な映画は存在しない。ていうか完璧は存在しない。しかし、知ったかぶりして映画の専門家風に「批評」ぶってみるなんて選択肢は喜んでゴミ箱に捨てる。ひねくれた自称シネフィルに嘲笑されようとも全く気にならない。この映画を見ていると、あれが描かれてない、これが描かれてないと無いもの探しをするのが本当に滑稽に思えてくるのですよ。

アニメーションの素晴らしさを再確認いたしました。あんなにも世界全体を優しさで包めてしまうとは。なんて美しい映画でしょう。こんなにも「映画館から出たくない」映画に出会ったのも久しぶりかもしれません。

冒頭数十秒のカットバックですでに涙腺崩壊。あの淡い色調と手描きの柔らかなキャラクターたちのせいかもしれません。

物語は主人公の花がおおかみおとこの彼に出会うところから始まります。人間社会にまぎれて暮らす彼に惹かれていく彼女はやがて、彼から秘密を打ち明けられ、愛し合い二人の子供を設けます。二人の子供、姉の名前は雪、弟は雨。それぞれ雪の日、雨の日に生まれたことからそう名付けられた二人は、人間とおおかみの血をひく「おおかみこども」として生を受けます。父親である彼は不慮の事故で失い、一目を避けるために田舎に引っ越す。二人がおおかみこどもであることは、三人だけの秘密。その秘密がバレれば三人は平穏に暮らすことができない。しかし、そんな不安をよそに田舎の温かな人たちにも支えられ、秘密を抱えながらも三人は平和に暮らしていく。
活発な雪、引っ込み思案の雨もやがて成長し、小学校に通うようになると徐々に自我が芽生え、自分たちが他の子供とは違うことを知っていく。人間として生きるのか、おおかみとして生きるのか。二人のおおかみこどもはそれぞれに自分たちの人生を考える。母親の花はひたすら子供たちが健やかに育ってほしいと願うごく普通の母親。そんな母親視点で進行する物語は、二人の子供の成長が頼もしくも見え、寂しくも見える。

活発ですぐに癇癪を起こしてはおおかみに変身する雪が、次第に女の子になっていく過程、臆病で引っ込み思案な雨がいつのまにか「男」になっていくその成長。それぞれをホントに奇をてらうことなくどストレートに描いていて見ていて大変気持ちいい。ひねりはなくとも素晴らしい。脚本の奥寺佐渡子さんの手腕はさすがの一言ですね。ここまで母親の気持ちに寄り添った描写はなかなか男にはできるものじゃないですね。

子供たちが「それぞれに」自立していくのを見送る母親と一緒に観客も一緒に彼らを見送ることになるのですが、その時の、葛藤がありながらもとても満足げな母親のその姿は凛とした美しさを感じます。
すごい寂しいはずなのですが、「やり遂げた」という達成感を感じさせるんですね、あの表情には。

家族愛、子供に自立、生きること。普遍的なテーマに正面から挑んで見事勝利。これは監督以下、スタッフの力量の高さを証明しています。

いや、特にあら探ししていちゃもんつける気になんて全くなりません。この美しさの前に何を云っても無駄な気がします。

となりのトトロに匹敵する傑作。映画の素晴らしさを再発見した思いです。

公式サイト
http://www.ookamikodomo.jp/index.html

予告編はこちら。

細田守監督作品

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