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ソーシャルメディアは視聴率に代わる番組評価の指標を作れるか

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ソーシャルテレビ推進会議に参加していることは以前ここにも書きました。
ソーシャルテレビ推進会議の公式サイト、ソーシャルテレビラボが公開されました。

参加当初、どういう思いで参加したのかは上記のエントリーをご覧いただくとして、この会議の大きな目標として以下のようなものが掲げられています。

・放送と通信、マスメディアとインターネットの融合の具体としてソーシャルテレビを日本で推進し、活性化させることを大目的とする。

「理念」として掲げているので、抽象的な物言いになっていますが、実際スタート当初は具体的な目指すものが見えているわけではなかったので、こういう書き方になったのでしょう。
実際のところ、ぼく自身も何かが具体的に見えていたわけではないですからね。

しかし、会合を重ねるうちにおぼろげながら何を目指すべきなのか、少しずつ見えて来たように思います。現在のテレビを取り巻く環境、ビジネスモデルに何が足りていないのか、ソーシャルメディアがそれに対して何ができるのかというのが、少しずつ輪郭が見えてきたように思います。

端的に言うと、ソーシャルメディアとテレビが融合の形を目指すこの会合の目標は、番組(コンテンツ)の価値を計る指標として、視聴率以外の指標を形作れるか、ということになるんじゃないでしょうか。

番組編成において視聴率は絶対の指標

番組編成の方にお話を伺うと、番組編成において、いまだに視聴率は絶対だと言います。
ここにもし、視聴率以外に番組の価値、または影響力を図る指標があったらどうなるでしょう。

お金を出すスポンサー側からすると、視聴率が唯一の指標。しかし、視聴率はどれだけ広く情報がリーチしたかの指標にはなりますが、CMなどで発した情報がどれだけ深く視聴者にささったかの指標まではわかりませんし、番組やCMに対して具体的にどんな印象を持ったのかまでは視聴率には反映されません。

ネットにも炎上によってPVがあがる現象がありますが、テレビにはそういう現象はないとは言えないでしょう。
人は番組に対してポジティブな評価を持って視聴しているか、ネガティブな評価を持って視聴しているかは視聴率ではわかりません。

あるスポンサー企業の方がおっしゃっていました。震災後に通常番組を再開する時、どんな反応があるのか、非常に気になったと。
こんな時に通常のバラエティなど流すのか、まだ早いだろ!という反応が多いのか、それとも気分転換になるし、通常番組が戻ってよかったという反応が多いのか、とても気にしていたのですが、視聴率という結果ではそれがわからなかったと。
そこで独自に独自にTwitterなどのソーシャルメディアをエゴサーチしたところ、ポジティブな反応が多くて一安心だったということです。

この時は肯定的な意見も多く、スポンサードしたかいがあったかもしれません。が、この時視聴率は通常放送と変わらなくてもネガティブな意見の方が多かったとしたら、それはどんな風に評価されていたのでしょう。

「視聴質」を計ることができれば番組作りそのものにも大きな変化をもたらす

視聴質の議論は随分前から行われています。しかしWikipediaにもありますが、何をもって評価するべきかの指標が存在しません。(番組アンケートを募るぐらいか)

しかし、今はまだ日本におけるソーシャルメディアもインターネットの利用の仕方も発展途上であるので、ボリューム感が半端な状態にありますが、
全体のボリュームがより増えれば、ソーシャルメディアは視聴質を計る指標になり得るのかもしれません。

最近ではソーシャル視聴という、番組を見ながらスマホやタブレットでツイートしながら楽しみ習慣が一部には定着しつつありますし、NHKのニュースWEB24などの番組ではそれを取り入れた番組作りを行っています。
オリンピック期間中は、ソーシャルメディアも多いに盛り上がったし、ジブリの映画放送の際には毎回ツイッターも盛り上がります。

ソーシャルメディアがテレビに与える影響は、こうした視聴側の習慣の変化だけに留まらないのはないでしょうか。作り手の意識変化とスポンサー側の要求にも変化を与える可能性があると思っています。
最大公約数的に製品を売ることが以前ほど簡単ではなくなってきているこの時代、スポンサー側も番組に対して視聴者のロイヤリティは如何ほどなのかを問う時代になってくるのではないでしょうか。

例をあげて言うと、時折ニュースやワイドショーで捏造や誇張表現などがあると、ネットで叩かれたりしますね。なぜニュース番組は捏造や誇張をする動機が働くのかというと、一言で言ってしまえば、センセーショナルな方が視聴率を取りやすいから。現在では、番組の成否を計る指標が瞬間的な視聴率しかないという状態が、捏造や誇張表現に対する動機を生み出している可能性があるのではないでしょうか。

しかし、もし番組中、ないし放送後にそうした不誠実な番組作りに対して、ネットでネガティブな意見が集約され、それが根拠あるデータとして提示されたらどうなるでしょう。
安易にセンセーショナルを煽る番組作りはしにくくなり、報道の質もあがるかもしれません。(逆にツイッターなどでセンセーショナルに乗っかるような意見ばかり集約されたら逆効果になる可能性もあるけど。。。)

あるいは、TBSドラマのSPECは視聴率はあまりふるいませんでしたが、2時間特番が放送された際にはツイッター上では大きく盛り上がり、個性的な内容もあって根強いファンを獲得しています。他のドラマ作品よりも熱狂的な固定ファンが多い。
視聴質が計ることがでれば、ああいう個性的な作品がもっと多く生まれる土壌ができるかもしれません。
SPECに関してはプロデューサーや作り手が制作デスクの中で外様というか、ちょっとアウトロー的なポジションらしく、それで実現できている部分があるようですが、視聴質指標はそういう作品を作るモチベーションをもっと広く与える可能性があると思います。

現在、テレビ局もソーシャルメディアに注目していることは確かです。しかし、その多くはソーシャルメディアが視聴率に貢献できるか、というところに関心があるのだと思います。それも重要かもしれませんが、視聴率とは違う視点から番組を評価することができるかどうかが、最も重要な点になるのではないでしょうか。

有志で集まって運営しているこのソーシャルテレビ推進会議の(壮大な理想で言えばですが)視聴率に変わる、あるいは視聴率とともに番組の価値を計る指標を作り上げることができるか、というところにあるのだと思います。

それがソーシャルメディアがテレビを変えるというのはそういうことなんじゃないでしょうか。

※ソーシャルテレビ推進会議では、ソーシャル×テレビの関連性を見るための調査結果やデータ一覧を公表しています。今後もこうしたデータや調査結果を公表していきますので、ご活用ください。
ソーシャル×テレビの関連性を見る調査結果レポート
ロンドン五輪におけるソーシャルメディアのツイート状況をまとめたインフォグラフィックスも作られました。

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