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フィクションで描きうる真実とは。園子温の希望の国に期待すること

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神保哲生さんと宮台真司さんのビデオニュース.comに園子温監督と寺脇研さんが出演されているので観てみました。
番組はこちらでご覧になれます。
本当の世界を描くために映画を創る

テーマは世界をフィクションで描くというのはどういうことかについて。
フィクションで見せることができるものには、ドキュメンタリーでは捉えきれないものがあるのではないかという問題意識です。

震災系のドキュメンタリー映画が数多く作られ、小規模ながらも劇場公開されることが今年の前半には多かったので、僕も時間の許す限り観てきました。

ドキュメンタリーと言えば、震災前からインディーズの映画業界ではけっこう増えて来ていて、その理由はデジタルカメラの低価格化によって、カメラ一台あればそれなりの質の映像が撮影できるようになったから、予算も少なく制作できるということにあります。

そういう流れもあってか震災に見舞われた被災地を直接写しに行く映画作家が数多く現れたのでしょう。普段は劇映画の監督である岩井俊二までもドキュメンタリーを撮っていましたね。

報道やドキュメンタリーは実際の人を写し、事実から何かを伝える手段であることから、それが真実であるかのように捉えられることが多いのですが、世の中の事実というのは往々にして複雑に絡み合っていて、一つの目線から語られる事実関係は、一方の事実や事情を無視したものも少なくありません。

ドキュメンタリー映画というのは、こうした作品中で目線を変えて描くことが構造的に難しいという問題があります。超一流のドキュメンタリー作家ならできますが、多くは撮影者の立ち位置が、カメラ写された被写体とともにあぶり出されることとなります。


その意味ではドキュメンタリーだから本当のことを伝えているとは限らないわけですね。そもそも人はカメラの前で全てありのままをさらけ出すということはなかなか無いのです。これを引き出せる作家はそんなに多くない。たくさんの時間を積み重ねて対象者との信頼関係を築かないと本当のことを語ってもらうのは難しい。

その意味では、緻密に取材を重ねたフィクションの方が、真実を描き得る可能性があります。
このビデオニュース.comで園子温監督も語っていますが、取材を重ねることは、「だった」という過去形の話の繰り返しで、現在進行形にそれを追体験させることはドキュメンタリーにはできないことです。

その時、誰々がこう思った、という情報は入って来てもそこから先の実感は想像力に委ねられる。緻密な取材を重ねた上で、その想像力を持ってフィクションの形で再現することには大変大きな意味があると思います。

フィクションの劇映画を作る前提での取材には匿名という前提があります。対して報道やドキュメンタリーはそれが約束されるわけではありません。匿名で出してもともすれば、そうした記事や映像は説得力を欠く結果になり、しかもその情報が一面的だったりするとたんに混乱を招いて終わることもある。

園監督が一例として挙げていたエピソードの中に家の庭が20キロ圏内と圏外で分断された家の話を挙げていました。その家の庭にはひまわりが咲いているのですが、20キロ圏内では、ひまわりは全て枯れていて、圏外だけは咲き誇っていたそうです。
その理由を訪ねたら、圏内のひまわりが普通にしていたら、圏内への立ち入ったことを疑われて怒られるからだとのこと。

なるほど、理不尽かつ滑稽なエピソードですが、そんな話はなかなか報道やドキュメンタリーではみれません。しかし、実際にはこういう小さいエピソードに理不尽の真実があったりするんですよね。

こうした人々の等身大のエピソードや感覚を園子温監督は「下部構造」という言葉で表現していました。
国のあり方や原発処理のかかる東電の問題などの大きな「上部構造」問題に対して、実際に人々がどう感じて、どう生きているのかのリアリティを下部構造と呼んでいます。実はこうした下部構造は密着ドキュメンタリーでカメラで追いかけても、捉えきれないものも数多く存在します。カメラの前では誰しも本当のリアルをさらけ出すのは難しいものです。ましてはほんの数ヶ月の取材でそれをカメラに収めるのは至難の業。そこにフィクションの役割があるというのが園監督の主張です。

報道やドキュメンタリーでは描ききれない、問題の当事者たちの本当のところをフィクションという構造のなかでは、再構成して提示することも可能になる。そこに僕らが普段接する情報では捉えきれない感覚を学ぶきっかけにもなると思います。それゆえにフィクションの想像力というのは、社会に必要なものだと改めて思いました。

園子温監督最新作、「希望の国」は10月20日より上映開始です。
公式サイト

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