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映画レビュー『009 RE: CYBORG』

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サイボーグ009は云わずとしれた石ノ森章太郎の代表作で、SFヒーロマンガの金字塔。その009がプロダクションI.G制作で、現代風に甦らせた本作「009 Re: CYBORG」。原作のキャラクター設定を現代21世紀に置き換えて、現代における正義とは何か、なんのために誰と戦うべきかを混迷の時代に向けて問い直す。

という作品になるはずだったのかな、この映画。


国家規模のテロから宗教観や脳と神の関係など、非常に大きな世界観を提示しておきながら消化不良に終わってしまった感が否めない。続編制作を前提にしているんでしょうか?

アクションはものすごいカッコいい。川井憲次の音楽も最高に血湧き肉踊る感じで最高。奥行きを生かした演出も素晴らしいし、サウンドもいい。キャラクターデザインには原作からかなり変わっているために賛否両論のようですが、僕はかっこいいと思いました。

しかし、「彼の声」を聞いた者たちが、示し合わせたわけではないのに、高層ビルを爆破するのはなぜなのかについての回答は結局ないまま終わってしまいました。今回の00ナンバーのサイボーグ達が再び結集する発端となっているにもかかわらず、そこは謎のまま終わってしまう。

彼の声は、一定の人間にしか聞こえず、それを聞いたものが各々に解釈をして正義と思う行動をするのだ、というような解釈が一応添えられてはいるのですが、じゃあなんで決まりきったように高層ビル爆破なのかがよくわかりません。

繋がりも黒幕もなく、人が連鎖搬送的に「世界をやり直させる」ために行動を起こす、という「彼の声」という概念はどこか攻殻機動隊のTV版に登場した「笑い男」とそれをその現象を表す「スタンド・アローン・コンプレックス」を連想させるのですがあのレベルまで消化しきれていません。

攻殻には、電脳ネットワークという世界観で人が多くの情報をや意識を共有した状態が架空の犯人像を作り上げるという仕組みを提示していましたが、この009での彼の声は神の声という解釈で、おそらく世界をやり直させるというのは、このどん詰まりの世界をリセットする以外には対処できない、という集合的意識の表出ということなのかもしれませんが、いかんせんそこまで説明も表現もできていない。

009を始めとするサイボーグたちは、正義を成す者たちであるのですが、この現代では絶対の正義なるものが存在せずわかりやすい敵がいません。軍産複合体の企業が登場し、世界を不安定化させることで利益を追求するというネオコン的な「見える」敵が途中まで示されるのですが、結局は彼らも彼の声に従って事を運んでいるだけという展開で、もはやどこにも真の黒幕がいないまま物語が終了してしまう。

なのでこんなにカッコいい映像と音の作品なので、カタルシスが半減しています。

しかし、ここまで明確に悪役の存在しないヒーロー映画は珍しいと思います。悪役にも悪役なりの事情や信念がある、というタイプの作品は普通に存在しますが、もはや戦うべき相手が見えていない。

この世の中は何かがおかしい。しかし何がおかしいのか見通すことができずにいるのは現実世界でも同じかもしれません。何を直せばいいのか、だれを打倒すればいいのかわからない。

戦うべき相手は見えない。そういう時代にヒーローはどうあるべきか。。。。その答えにくいそうなジレンマに答えを見いだしてこそ「現代風アレンジ」になるんじゃないでしょうか。

それができていないので消化不良な印象なんですよね。

まあ、フランソワーズがエロかわいいのでそれでいいのかもしれませんけど。

SOUND OF 009 RE:CYBORG
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