[PR]

ニールセンはTwitterを使ってTVを巡る生態系調査をしたいんだろう

[PR]

20121219-125309.jpg
via Nielsen

昨日、アメリカのTV視聴率の測定会社ニールセンがTwitterと提携し、Nielsen Twitter TV Ratingという既存の視聴率とは別の新しいTVの指標を開発するプロジェクトを発表しました。

TwitterとNielsenが提携―Twitterベースのテレビ視聴率調査開発へ

NielsenとTwitterは先ほど、ニールセン・Twitteテレビ視聴率(Nielsen Twitter TV Rating)というプロジェクトを発表した。両社はこれがTwitter上でのテレビ番組の反響を測定する標準的方法になるものと期待している。

両社によれば、2013年秋にも商業的サービスの開始を目指している。このTwitter視聴率は既存のNielsenのテレビ視聴率調査を補完するものとなる。

具体的にどのような測定方法になるのか発表されていませんが、このようなTwitterを用いたTV番組評価の測定方法が求められる背景としてニールセンのグローバルメディアプロダクト&アドバタイズソリューション部門の代表、Steve Hasker氏は「TV産業、とりわけ番組企画者や広告主にとって重要な前進」だと語っており、今後のテレビのビジネスモデルにも影響を与える可能性があります。

さて、この提携により生まれる指標は、既存の視聴率と何が違うのでしょうか。そしてTVを巡る何が変わる可能性があるのでしょうか。
テレビは面白くなるんでしょうか、それともさらにダメになるのでしょうか。

視聴率はテレビ所有世帯の何%がその番組を見たかを表す「推定値」です。その番組がどのように見られていたかテレビ所有世帯を分母に全体としてどれくらいの世帯が番組を見た(チャンネルをつけていた)かを示すもので、内容の良しあしを判定するものではなしですし、この数字そのものはどのように視聴者に評価されたのかを示すものではありません。
NHKを除く民法局ではスポンサー収入で運営をしていて広告効果の指標として唯一絶対の指標が現在の視聴率です。ところが視聴率はどれぐらい広く視聴者に見られたかを示すのみで、どれほど深く関心を持たれたかについてはわかりません。

森林調査に例えれば森の面積だけ測っていた状態ですね。

さて、今回ニールセンとTwitterが新しくTVの視聴率の開発に着手するということですが、従来の視聴率が測定していたのものとは何が変わるのでしょうか。

Steve Hasker氏は、「 TwitterはTVにおけるリアルタイムエンゲージメントデータの傑出したソースだ」とニールセンのプレスリリースの中で述べています。

ツイッターというソーシャルメディアを利用して測定するものは、どれだけ広くCMを見せれたかではなく、どれだけ深く視聴者に刺さったのかの深さ指標ということになるでしょうか。

以前この「ソーシャルメディアは視聴率に代わる番組評価の指標を作れるか」の記事でも紹介しましたが、

あるスポンサー企業の方がおっしゃっていました。震災後に通常番組を再開する時、どんな反応があるのか、非常に気になったと。
こんな時に通常のバラエティなど流すのか、まだ早いだろ!という反応が多いのか、それとも気分転換になるし、通常番組が戻ってよかったという反応が多いのか、とても気にしていたのですが、視聴率という結果ではそれがわからなかったと。
そこで独自に独自にTwitterなどのソーシャルメディアをエゴサーチしたところ、ポジティブな反応が多くて一安心だったということです。

TV番組が生み出すコミュニケーションの中で番組がどんな風に評価されているのか、どんなコミュニケーションが生まれるのかは今までテレビ局は可視化させようとしていなかったわけです。でもインターネットのような新メディアは細かいターゲティング設定ができるようになってきており、番組の質や視聴者の属性など視聴率では測れない情報を必要とし始めているわけですね。

今までは森の広さしか測っていなかった。テレビ業界は、その森にはどんな木々が生えていて、どんな生物が生息しているかまでは見るような生態系調査までは実施していなかった状態だったのです。

ソーシャルメディアに期待されているのは、番組から発生するコミュニケーションの生態系調査でしょうね。ボリューム指標はすでに既存の視聴率が担っています。(誤差の問題はありますが)どのようなタイプの人達がその番組に関してどのようなコミュニケーションをし、感想を述べているのかを細かく分析していく。

森が広ければその森が豊かな森だということにはなりません。どれだけ広くても生物が死滅していたら豊かな森とは言えないと思います。多様な生物が活発に活動している森の方が豊かな森でしょう。テレビにも同じことが言えないでしょうか。

視聴率がそれなりに高くても誰も話題にしないテレビ番組は優良な番組と言えるのかどうか。孤独のグルメのような視聴率は小さくても(深夜にしては高いですが)たくさんの人が感想を口にしたくなる番組は優良な番組かどうか。

既存の視聴率以外の切り口での番組評価がきちんと確立すれば、番組企画側も今までのロジック(視聴率至上主義)ではいられなくなります。今まで埋もれてしまっていたタイプの番組にもスポットライトが当たる可能性もあります。

この変化によってテレビ業界全体が豊かな森となってくれればいいなと思いますね。まあソーシャルメディア上には腐った罵詈雑言を好む人たちもたくさんおられますので逆に振れてしまわないよう、どうアルゴリズムを設計し、運営していくのかが重要になるでしょうが。

さて、このニールセンがこのような動きが実現できたのは、SocialGuideというスタートアップを買収したからです。この会社は、テレビ番組関連のツイートを追いかけ集計する事業を行っていますが、socialguide以外にもBluefin LabsTrendrr.TVなど、テレビの分野にもいくつものスタートアップがひしめいています。

今回の大きな動きもそうしたスタートアップの躍進があっての動きです。日本のスタートアップ市場ではテレビ業界をターゲットにして事業展開している会社はあまりないように思います。もったいないことです。テレビ局はなんだかんだお金持ってますので、どんどん仕掛けて売り込んだらいいと思います。
サムライベンチャーサミットでもテレビ特集が組まれたりはしましたが、盛り上がりはいまひとつ。しかし、登壇者の方もおっしゃっていましたが、今テレビ局も新しいアイデアを求めていて、売り込み歓迎の風潮もあるようですので、ベンチャーの方はテレビにも注目してはどうかな、と思います。

テレビのIT革命(上) ソーシャルTVとスマートTVが切り拓く新市場 (Next Publishing)
清水 計宏
インプレスR&D
売り上げランキング: 264792
[PR]