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高広さんの記事とKickstarterのトラブルからクラウドファンドはどうあるべきか考えてみる

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クラウドファンドについてちょっと書きたいと思います。きっかけはこの2つの記事。
(追記あり)日本の未熟なクラウドファンディングは、そのプラットフォームの事業者こそが大人になってほしい。 at mediologic

How One Stupid Mistake And $35,000 From Kickstarter Made An Average Guy Bankrupt

英文のビジネスインサイダーの記事を要約します。
セス・クエスト(Seth Quest)という優秀なデザイナーがユニークなiPad用のスタンドのアイデアを思いつきました。
こんな感じ。(アメリカの家ならこういうのを置くだけの広さがあるよなあ)

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via Hanfree iPad Accessory: Use the iPad Hands Free by _ — Kickstarter

彼はパートナーとともにKIckstarterでページを作成し、このiPadスタンド制作のための資金を募ることに。結果、セスのこのスタンドのアイデアは多くの人が支持し、最終的には440人の人に出資してもらい、集まった額は目標額の3倍の3万5千ドルにも達しました。

さて、資金も集まったので、実際にあとは製作・生産に着手するだけと思いきや、そこからプロジェクトがなかなか進みません。彼は優れたデザイナーでしたが、ただの1デザイナーでしかなく、事業を運営したこともなければ、実際に製造に関わったこともありませんでした。
結果、目標額達成から5か月たっても支援者には音沙汰なしの状態が続き、次第にKickstarterの彼のプロジェクトのページには批判的なコメントが多数寄せられるように。

そしてついに1人の支援者がセスを訴えることになりました。訴訟を起こしたこの支援者はクラウドファンドの仕組みについてはあまり理解していなかったこともあるようです。彼は普通のeコマースのようなものかと思っていたらしく、お金を払えば商品が購入できるものだと思っていたようです。

結局セスは生産の工程で様々なトラブルを抱えることになり、このiPadスタンドの製造の中止を支援者に通達し、お金も全額返金することにしましたが、訴訟を起こした男性は弁護士であったらしくセスに対して訴訟を起こし、結果セスは敗訴が確定しました。

セスは破産することとなり、仕事を探しているようですが、このプロジェクトの失敗の評判がたたり職探しが難航してるようで、記事によるとなぜか彼は現在コスタリカにいるそうです。
セスはたった1つのクラウドファンドでの失敗によって人生を大きく狂わされました。しかし、事業者側のKickstarterはこの訴訟の当事者となったおらず、特になんの金銭的損害は受けていません。

そして、もう1つの高広さんの記事ですが、この記事の言わんとしていることは、礼儀の押し付けや個別の作法の問題ではなく、クラウドファンドによる出資(支援というべきか)は金銭的な享受のみでいいのかよ、ってことだと思います。

何十万かの出資をして、プロジェクトの定める物品かサービスは受け取っておられるようですが、なら文句言うな、ということはクラウドファンドは単なるプリセールスのような場とうことにもなります。
文字通り、Kickstarterはeコマースであって、勘違いして訴訟を起こした方の思う通りのサービスになります。

でも違うでしょう。

クラウドファンドは、まだ未完成のプロジェクトや製品の完成を応援するサービスであるはず。高広さんのおっしゃるようにそこには出した金額とともに気持ちで支援しているんだとおもうんですよ。以下の部分、僕はすごく同意するとこであって、僕はけっこうクラウドファンドサイトで映画を中心に支援してたんですが、ここをなくしてしまったらクラウドファンドって意味ないんですよ。

僕は、「パトロン」ってのは、単にそこで拠出されたお金に対して対価を得るという意味での「消費者」や「ユーザー」ではなく、そのプロジェクトや人の「支援者」であると思う。つまり、クラウドファンディング上のプロジェクトに対して資金を出すということは、そのプロジェクトに対する応援の表明であり、単なる金銭の授受の関係にすぎないのだとすると、そんなプラットフォーム、無くなってしまえとすら思うのだ。

僕の体験したエピソードを1つ。
Motion Galleryという映画を中心にしたクラウドファンドがあるんですが、いくつかの企画を支援したことがあります。その中の1つ、完山京洪監督のSEESAWという作品があります。
少ない金額でしたが、出資して特典の直筆の手紙を受け取ったのですが、ホントに手書きの手紙なんですね。別に手書きの方が気持ちが伝わるとかそういう話じゃないんですが、その手紙には僕の他の作品への出資やブログのことなんかも書かれていまして、きちんと僕という個人を見てくれているのが伝わってきました。

ただ、お金を少しばかり出しただけですが、感動しましたよ。映画も無事公開され、劇場で監督とお会いできて光栄でございました。イケメンで悔しかったけどな。気づかいもできて、イケメンとか太刀打ちできねえよ。

高広さんの何十万に比べれば大した額じゃないけど、僕という個人をきちんと認識して上で手紙を書いてくれたこといた完山監督は支援者に対してできる限りそうやって振る舞ったんだと思うんです。

普通に劇場で一回鑑賞するだけななら1800円ですみます。クラウドファンドでの支援額はそれ以上の金額でしたけど、SEESAWへの支援はお金や物品以上の価値がありました。

高広さんのおっしゃっていることは、クラウドファンドでの「支援」はそういう物品以上の何かが大事だよって話であって、リターンもらったからそれで満足しろとかそういう話では決してないですよ。

実際問題、クラウドファンドが金銭とモノ・サービスとの享受だけで満足せよ、というなら、それはただのプリセールス。完成が保証されないプリセールスでしかないので、Kickstarterでのセスさんのようなトラブルが無用に増えることになるんじゃないでしょうか。

そして、そうなると確実にサービスを提供できる事業体だけがクラウドファンドで活躍できることになります。つまり大手企業だけってことになるんじゃないですか。

クラウドファンドがアイデアや才能を持った個人が、広く出資を募ってモノやサービス、作品を実現できるから夢があるのであって、だからこそ注目されていたはず。大手企業のプリセールスだけになってしまった場合、もうクラウドファンドの意義自体が消滅します。

そうならないためにこそ、高広さんのような意識でもって現状を批判することは、とても大事なことだと思うのです。

それと、SEESAW以外でも出資して良かったなあ、と思う企画はありましたよ。
これとかね。
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