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映画レビュー『世界にひとつのプレイブック』

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人生で大切なものを失うことは誰にもあると思います。理不尽に奪われる場合もあれば、自分の馬鹿で失ってしまう場合もあり。人生いろいろであります。

しかし、精神疾患によって何かを失うのは、周囲も本人もどう捉えるべきか難しい。病気は外的要因、しかし、心の持ちようは本人の問題にも見える。病気でコントロールが効かないのだ、と訴えても周囲はなかなか理解してくれなかったり。そういうギャップがますます苦しみを生んでしまう。

ジェニファー・ローレンスがアカデミー主演女優賞を受賞した『世界にひとつのプレイブック』は心を病んだ人たちの物語です。プレイブックとはアメフトにおける作戦図のこと。
主人公は病院から退院したばかり、ヒロインも夫と死別して、ヤリマンになり、会社をクビになる。主人公の父親も脅迫観念とも取れるほどにジンクスを信じまくっている。

しかし、全然重い映画ではなく、むしろ爽やかが鑑賞体験ができるのは本作の特徴。ちょっとおかしな連中だが、それは特別なものでもなんでもない、という製作姿勢が非常によく伝わってくる。重く描いていればかえって特別なもののような印象を与えてしまうでしょう。
世界にひとつのプレイブック (集英社文庫)

主人公のパットは、妻の浮気が原因で浮気相手を殴りまくり、精神を病んでしまう。病院に8ヶ月の入院した後、退院し両親と一緒に暮らし、リハビリに励んでいる。夜中にわけのわからない理由でキレだす時もあるし、黒いゴミ袋を来て、ジョギングに励んだりする。一応本人的には合理性があるのだが、当然周囲からは奇異に見える。

ヒロインのティファニーは、若くして結婚したが、夫を事故で失いいわゆる「ビッチ」に。会社の人間全員と寝てクビになったらしい。(女性とも寝たらしい。彼女曰くホットな体験だったよう)

友人の食事会で出会った2人は、お互いをおかしな奴と認識しているが、その妙な認識のズレが可笑しい。見ているこちらとしては、両方ともヘンなのだが。

ティファニーが唯一打ち込んでいるものがダンスなのだが、彼女はある画策をして、パットをダンスのパートナーに誘う。2人はダンスコンテストに出場することになるのだが、なぜかそのコンテストの結果にパットの家族の命運がかかることになる。この辺のロバート・デ・ニーロ扮するパットの父親の破綻した性格がよく出ている。

主人公の2人もおかしいのだが、実は作中一番おかしいのはこの父親なのではないかと思う。だってジンクスのために息子の行動を制限しようとするわけで。パットと一緒にみるとフィラデルフィア・イーグルスが勝つとか、リモコンの位置や角度までいちいち気を配っている。暴力沙汰でアメフトのスタジアムに出入り禁止だし。ぶっちゃけ一番のトラブルメーカーだったんじゃないか。

ジェニファ・ローレンスのバフォーマンスは素晴らしいし、ブラッドリー・クーパーのキレ具合もいい。デ・ニーロとジャッキー・ウィーバーもさすが。クリス・タッカーもいい味を出していた。

巧みな脚本と彼ら俳優陣の好演で、おかしなキャラ達がとても愛らしい。いつもでも見ていたい気分にさせてくれますね。彼らの変な言動も、どこか自分にも当てはまるとこがあるような気がするんです。

どうしようもなく、絶望したい時もあるけど、そんなに落ち込まなくてもいいのかもしれないね。人生にはときどく晴れくらいな感じの希望があるもんなんだな。

そういえば、監督のデビッド・O・ラッセルは自身もパットのような癇癪持ちだったりして、ジョージ・クルーニーからは絶縁されている状態らしいが、今はどうなのだろう。

予告編はこちら。

公式サイト

世界にひとつのプレイブック (集英社文庫)
マシュー・クイック
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