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インディーズ映画の国際戦略に関する想田和弘監督と土屋豊監督のトークショー

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水曜日に「【鍋講座vol.10】国際コミュニケーション編② 実践! 独立映画の海外展開!」というトークイベントに行ってきました。

その時のお話と感想を軽くメモがてら書いてみます。

聞き役は土屋豊監督、ゲストは想田和弘監督。奇しくもお二人とも明日(7/6)から新作映画が劇場公開となります。
それぞれの映画の詳細は以下のリンクにて。

トークの主な内容は、インデペンデント映画を自力で海外に売っていくために必要な戦略は?というもの。さらに継続的に映画作品を発表して映画で食っていくために必要なことは何か、というものでした。
想田和弘監督はドキュメンタリーを自己資本で製作し、そのプロモーションやマーケティングをも自力でやっており、しかもコンスタントに作品を発表し続けている数少ないインディーズ映画作家です。

2007年のデビュー作「選挙」以来、映画で飯を食い続けておられる想田監督、かたや土屋監督は今回が8年ぶりの新作。コンスタントに映画を作って売り続ける秘訣とはなんなんでしょう。

初の劇場映画「選挙」のベルリン映画祭でのプロモーション

作品を完成させた後、多くの映画祭にスクリーナー(サンプルDVD)とプレスキットを送るも全く引っかからず。映画祭もコネクションの世界なので、単純に応募してもなかなかヒットしないんですよね。
選挙はベルリン国際映画祭に出品され、そこから多くの映画祭やメディアに掲載されるようになりました。
まずはベルリンへ参加できたことが突破口になったとのこと。

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しかし、ベルリン国際映画祭は世界三大映画祭の一つで、当然狭き門。そこにどのように入ることができたのか。

一つはニューヨークのIndependent Filmmaker Project (IFP)の存在。IFPとはインディーズ映画作家を支える組織で多くの有益な情報やネットワーク、リソースを提供しています。
IFPについては、詳しくは以下の記事を参照してください。
ニューヨークのインディーズ映画を支える団体、IFPに関するレポートを書きました

想田監督の選挙はここに参加していたバイヤーの推薦があったそう。

そしてもう一つは山形ドキュメンタリー映画祭の理事の方の推薦も同時期にあり、2つのネットワークからの推薦があってベルリン映画祭側が興味を示してくれたそうです。
コネクション、ホント重要。

そしてベルリン国際映画祭にも単に参加するだけじゃなく、ここでお金をかけてプロモーションに精を出します。
想田監督曰く、映画祭は参加する前の準備が全てだ、とのこと。参加メディア、配給会社、バイヤーなどをリストアップを可能な限りし、プレスキットを送り、アポイントを取り付け交渉の予定を抑える。リストアップやコンタクトの作業はひたすら地道なローラー作戦。その手法を想田監督は映画の内容にかけて「ドブ板」と仰っていました。(選挙は日本のドブ板選挙活動を追いかけた作品なので)

さらに初めての大きな国際映画祭参加なので、勝手がわからない部分もあるし、メディアにどうアプローチすればいいかのノウハウを多く持たない時期でもあったので、現地のPublicist(広報担当)を雇ったそうです。
お金かけるとこにはきっちりかけてるんですね。

どのPublicistが良いかの情報もIFPで仕入れたそうです。そういう有益な情報を提供する組織があるのはニューヨークのインディーズ映画界の強みですね。

で、Publicistを雇った効果はやはりかなりあったそうで、メディアからの取材依頼はかなり多かったそうで、パブリシティの面では大きな成功を収めたそうです。

また映画の主人公「山さん」こと山内和彦氏も現地に来ていたので、日本スタイルの選挙演説をベルリンの街頭で敢行。メディアが多く通りかかるタイミングを狙って路上使用許可を取ってやったそう。そういうメディアの動き、スケジュール押えることもやってくれるPublicistさん優秀ですね。

このベルリンでの街頭演説の模様は映画のDVDの特典映像として収録されています。ベルリンの町中で黒スーツにタスキをかけて演説してる光景はマジでシュール。日本のメディアにも取り上げられたりしてこれもかなり効果的だった模様。

そうした努力が実って日本での劇場公開の話がベルリンでまとまる。2007年の参院選の直前に公開をぶつけて大きな話題となりました。ちなみに明日から公開の「選挙2」も参院選直前。

日本国内だけでなく、海外への展開はどうだったかというと、テレビの放映権が売れたそう。各国の民主義をテーマにした作品を世界33か国で放送するプログラムに日本の代表作品とし選ばれたのが大きかったようです。ワールドワイドのテレビ放映権ですからそれなりの値段ですね。おそらくこれは「選挙」の一番大きな収集源になってるでしょう。

ちなみに海外ではドキュメンタリーといえば圧倒的にテレビで放送するものだそうで、劇場公開はかなり厳しいと仰っていました。

二作目「精神」

精神はドキュメンタリー映画としては異例のヒットとなった作品。日本国内観客動員3万人だそうです。インディーズ映画でこの数字はかなりすごい。
国内のプロモーションとしては、医師会や家族会などにアプローチし、そのネットワークで話題になるよう仕掛けていったそう。コアターゲティングをしっかり絞ってそこにリソース投下という当たり前のことを当たり前に地道に行った結果の大入りということですね。

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こちらは海外ではどうだったのでしょうか。精神の場合、ワールドセールスにあたってドイツの会社にセールスの窓口を委託されたそうです。そうした会社と契約することも是々非々だよね、という話で、結論セールスの会社も売りやすい、プロモーションしやすい作品から優先して販売しようとする傾向があります。向こうも商売ですから致し方ない部分もあります。
なので映画「精神」のような売りにくい作品は、あまり力を入れてもらえないとのこと。販売にかかるコスト(映画祭でブース出したりとか、スクリーナー作って送ったりとかいろいろな)を引くと、ほとんど想田監督の手元には入ってきてないそうで。だったら自分で売ったほうがいいかもね、という話でした。

もちろんワールドセールスの会社が絶対ダメってことではないですが、「ご利用は計画的に」ってことですね。どんなタイプの作品かにもよるということですね。

感想

作品作る努力もそうですが、想田監督はきちんと最大限売る努力を「ドブ板選挙」ばりにやっているんですね。
ちなみに想田監督は、チラシやウェブサイトに掲載するキャッチコピーやイントロダクションなどもご自分で書かれるそうです。作品を誰よりもわかっているのは自分だから、セールスポイントも誰よりも知っている、ということで。配給会社とも当然契約しているんですが、丸投げに絶対にしないらしい。
(『選挙』で世界を沸かせた想田和弘監督、とか自分をほめたたえるキャッチコピーを自分で考えてるんですか 笑 といじられてましたw)
それと配給会社を選ぶ際も対等の関係で一緒に戦ってくれる、と思える会社と契約するとのこと。

確かに想田監督は何と言いますか、「顔の見える」映画監督ですよね。昔からブログも更新してるし、ツイッターでもよく発言するし、トークショーもよくこなします。宣伝の時も製作の時も自分が一番先頭で動いてるって感じがします。

販売も釣りみたいなものでどんな餌や竿を使うか、最大限に考えていろいろ仕込みをするけど、最後に食いつくかどうかは相手があってのこと。しかし、釣るために最大限の努力を惜しんではいけないと仰っていたのが印象的でした。

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