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笑っていいとも8000回記念はテレビ本来の同時性の魅力に溢れてましたね

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タモリ

昨日(2014/1/14)に笑っていいともが8000回目の放送を迎えました。記念の放送回ということで、OPにはゴスペラーズがいいとものテーマソングを披露し(ゴスペラーズは大学生時代にいいともに出演していたんですね)、テレフォン・ショッキングは29年ぶりにとんねるずの2人がゲスト。タモリさんととんねるずは、とんねるずがお笑いスター誕生に出場して以来の古いつきあいのこと。懐かしい昔話に花を咲かせつつ、昔のネタを披露したら、それに呼応してタモリさんも、生まれたての仔馬やイグアナの物まねを披露しました。

さらにその後次々にハプニングが。テレフォン・ショッキングの話が止まらず、ほかのコーナーの時間になっても一向に終了せず、そのまま番組は進行。さらにはとんねるずがいいとものレギュラーにしてくれと突然直談判を始め、軽いノリでタモリさんがこれを認めて、レギュラー陣がなだれ込んできて、反対するという乱痴気騒ぎに。8000回記念というだけでなく、ハプニング的を含めた演出を生放送に取り込んだ異色の放送になりました。

しかし、かつていいともは、こういう無茶をけっこうやる番組で、テレフォンのゲストに電話をかけたと思ったら間違い電話で、次の日その間違い電話に出た一般の女性が本当に出演したりといったハプニングが売りの番組でもありました。放送終了で終わりが見えてきたからなのか、かつての無茶っぷりがよみがえってきたかのようで非常に面白かったです。

こうしたハプニング性を取り込んだ作品作りは映画にはできません。生放送ならではのやり方ですね。今でこそテレビはきっちりと編集した録画作品を番組として放送することも多いわけですが、やはりテレビの最大の魅力はこの現在進行形でコンテンツが進行するリアルタイムの同時性にあるのかなあ、と思わされました。

テレビ黎明期はドラマすら生放送だった

テレビの本放送が日本で始まったのは1953年。テレビ黎明期は今以上に先行する映画との差別化を強く意識して、テレビならではのコンテンツ作りが模索されていました。
NHK放送文化研究所の「初期ドラマ論」などを読むと非常に興味深い記述がいくつもでてきます。
シリーズ 初期“テレビ論”を再読する 【第4回】 ドラマ論 | 調査・研究結果 – 放送史 | NHK放送文化研究所

初期のテレビ・ドラマはつねに映画やラジオ、演劇といった先行芸術との比較に晒された。そしてとくに映画の後裔となることを異常なまでに警戒された。

しかし、こうした映画からの差別と偏見がかえってテレビ・ドラマ表現の新しい可能性を切りひらく原動力となり、文学界、演劇界、ラジオ界、評論家などの助けを借りながら、独自の発展を遂げていくこととなった。

当時の放送技術ではVTRが確立しておらず、生放送するしかないという、技術的制約もありましたが、それがかえって映画には不可能な「生放送」の価値の発見につながります。

開局早々に制作されるこれらのテレビ・ドラマは、すべて「生放送」で行われるという特徴があった。そのため、本番の放送では予定よりも早く終わってしまったり、場面転換のために役者たちが着替えをする姿が映りこんでしまうといった失敗が少なくなかった。
 これは創成期のテレビ演出技術の未熟さが最大の要因だが、しかし一方で、こうした「生放送」という制約があったからこそ、テレビ・ドラマ独自の演出方法が開拓されていくことにもつながった。つまりテレビの「同時性」や「即時性」を活かした演出が次第になされるようになり、先行芸術である映画や演劇には真似できないテレビ独自の演出技術を確立していくことになったのである。

そうして制作されたドラマの例として、キーファー・サザーランドの「24」をほうふつとさせる放送時間と作品内の時間経過を一致させる試みがすでにテレビ初期になされていました。

「生と死の15分間」というドラマは、デパートの屋上から飛び降り自殺しようとしている男の15分間の葛藤を、放送時間15分間で見せるたそうです。なんかすごい内容のドラマですが、当時は深夜放送もありません。この番組は午後8時から8時15分の(今で言う)ゴールデンタイムに放送されたそうです。

さらにNHKの「追跡」という刑事ドラマではスタジオとロケ、4か所をつないで生放送で放送するということもやっています。生放送のリアルタイムで、別々の場所で起こる複数のことを同時に描くという、テレビ独自の強みをふんだんにいかした番組です。

当時は技術的な制約上、生放送にするしかなかったテレビ番組もVTR技術の発達によって編集され録画されたものを放送することも可能になりました。これによって映画のようにきっちりと作りこむ作品も放送が可能になっていきます。テレビが映画に代わり映像メディアの王様になって以降は、映画との差別化は次第に意識されなくなっていきます。今では作りこんだ編集済みの番組は当たり前に存在していますね。生放送に関しても間違いのないように入念なリハーサルのもとで放送されます。

技術の進歩で多様な番組作りができるようになった半面、テレビの影響力の拡大によって厳しい視線にさらされるようになったからか、テレビ番組は次第に映画との差別化で獲得した同時性の強みを意識しなくなってきていたかもしれません。笑っていいともの8000回記念は、そのハプニング的な展開でもって、テレビの最大の強みが何か思いださせてくれました。

今ではテレビ局が映画作りも主導しているような面もあり、映画への対抗意識も薄れているのでしょうが、一方でインターネットという別の対抗馬も現れました。改めてテレビの強みを再確認する必要があるのかもしれません。黎明期と同じ同時性だけが強みなのかどうか(USTもニコ生も同時性の演出は可能だし)、それとも60年の歴史で別の強みを獲得したのかどうか。

ライブビューイングで同時性を獲得する映画館

映画は誕生以来、ほぼずっと作りこんだ完成品を見せることにこだわってきました。映画はおそらくこれからもずっとそうなのだろうな、と思いますが、映画館は技術の発展によって、テレビだけがかつて持っていた同時性のコンテンツを提供することも可能になりました。

ミュージシャンのコンサートやスポーツイベントを映画館のスクリーンで大勢で鑑賞するライブビューイングですね。テレビが映画の創りこんでいく手法を取り入れた一方で、デジタル時代になって映画館がテレビのリアルタイム性を取り込んだと言えます。映画じゃなくて、映画館が、という点がポイントかもしれません。コンテンツはいまや複数のプラットフォームで利用可能な状態が当たり前になりましたが、映画提供だけどずっとやってきた映画館もまた多用なコンテンツを提供するようになっています。ライブビューイングは、放送時間を共有だけでなく、空間を大人数で共有するので、自宅のテレビ鑑賞以上に身体的な同時性を感じ取れる空間になっています。ニコ生やUSTとは別の方向性からテレビの独自性への挑戦と言えそうですね。
あるいはテレビの映画館へのさらなる進出と言うべきかも。紅白歌合戦のライブビューイングも実施されてるわけですし。
関連イベントについて|第64回NHK紅白歌合戦

ところで、1/16(木)は安藤美姫さんがいいともに出演されるそうです。これも楽しみです。
安藤美姫があす「いいとも」に出演 – 芸能ニュース : nikkansports.com

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