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ほとりの朔子レビュー、有意義なモラトリアムな一夏の想い出

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二階堂ふみはやはりいい。。。

「歓待」の深田晃司監督の新作「ほとりの朔子(さくこ)」は、大学受験に失敗し、将来の展望を持てない18歳の女の子が一夏に出会う人間模様を描いた作品。主人公には明確なゴールもつよい悩みもなく、周囲の登場人物はそれぞれに自分の人生で抱えるものがある。そんな人たちとの数日間のふれあいの中で変わっていく朔子を二階堂ふみが好演しています。
映画を見終わってポッと頭に浮かんだフレーズは椎名林檎の「無罪モラトリアム」。誰にでもモラトリアム期間はあるのだから、それはとりあえず無罪だと言い切ってしまえ、という意味のタイトルですが、この映画もまたある種の有意義なモラトリアム期間を描いた作品と言えるでしょうか。

あらすじ

大学受験に失敗してフラフラしている朔子は、叔母(鶴田真由)の誘いで旅行でしばらく家を空けるもう1人の叔母の家で過ごすことに。叔母の古い友人である兎吉(古舘寛治)、その娘の辰子(杉野希妃)、甥の孝史(太賀)とも仲良くなり、楽しい時間を過ごすが、後から孝史の同級生の女生徒や叔母を慕う既婚者の西田らが物語に絡んできて複雑な人間関係が展開していく。。。

原発被害者を演じさせられる苦悩

すこし衣装が古めかしいので、時代設定はいつなのだろうと思っていたら、原発反対運動などのエピソードはあることで2012年だとわかります。朔子といい仲になる孝史は福島からこちらにやってきた少年で、そのことで反原発集会でスピーチをするよう駆り出されるのですが、哀れな避難者「役」を演じさせられそうになる彼自身は、福島を離れたくてしょうがなかった、だから自分はこんなとこで話す資格はないのだと訴えます。
この原発被災者を巡る認識の問題が本論ではありませんが、印象的なエピソードです。この映画の中では原発反対を声高に主張する方々が、福島からの避難者である孝史の気持ちにほとんど寄り添えていない、という構図は興味深いですね。

その集会騒ぎの後、孝史は朔子を誘って家出します。目的地もなく飛び出し、結局すぐにかえってきてしまう2人ですが、これもある種のモラトリアムですね。学校にも行かず叔父のホテル(偽装ラブホテル)でバイトしかしていない孝史もまた将来への目的意識がない。

朔子の距離感が面白い

朔子の叔母目当てで大学の講義の仕事を受けた西田を交えたエピソードも興味深いものでした。既婚者であるが叔母のことをずっと気になっており、さらには大学生である辰子を口説いてホテルに連れ込むインテリエロ親父。しかし、辰子とその父、朔子と叔母と夕食をともにすることになってしまって修羅場を迎えることに。西田と叔母の微妙な関係性や兎吉との好対照ぶりなど多くの見所のあるシーンですが、この時の朔子の立ち位置が面白い。ほとんど会話に参加していませんが、すこし距離のあるところに座っていて、他の4人のやり取りを観察していますが、その距離感がなんだか映画を見る観客と映画との距離感を象徴しているよう。
このシーン、朔子と同じでニヤニヤしながら観客もこの4人のやり取りを眺めることでしょう。

役者陣のパフォーマンスが本当に素晴らしいですね。舞台の演出も手がける深田監督だからか、役者の良さを存分に引き出せています。古舘寛治がホントいい味だしてますし、「桐島、部活やめるってよ」にも出演していた太賀もリアリティの良い芝居してます。そして二階堂ふみはやはり絵になりますねえ。彼女の水着姿を拝める機会は今度なかなか無いかもしれないので、そういう意味でもこの映画貴重です。

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