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ハートウォーミングVSブラックユーモア。マリーゴールド・ホテルで会いましょうにおける原作と映画の相違点

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自分とこの映画館で上映したマリーゴールド・ホテルで会いましょうの原作を読んでみました。劇場で小説の販売もやったのでついでに自分で購入したのですが。いやはや、映画と小説では話もテイストも大分違いますねえ。映像と紙の表現できるの幅の違いによるものではなく、描き方の方針自体を結構いじってますね。

マリーゴールド・ホテルで会いましょう (ハヤカワ文庫NV)

映画「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」はジュディ・デンチ主演のイギリス映画。イギリスの老人7人が素敵な老後を過ごすためにインドのマリーゴールド・ホテルに移り住むが、そこはパンフレットの案内とはちがい、オンボロホテル。戸惑いつつも7人の老英国人たちは人生を再び輝かせる出会いや発見をしていく様を描いてます。

小説の方もイギリスの老人がマリーゴールド・ホテルで老後を過ごすという全体プロットは共通していますが、ハートウォーミングなタッチでコミカルに仕立てた映画に対して、小説は鋭い社会批評とブラック・ユーモアをにじませています。

映画では各々の老人がウェブやパンフレットで素敵なホテル(Photoshopバリバリ使ったイメージ写真に釣られ。。。)を見つけて話が始まりますけど、小説では老人ホームを追い出されたやっかいな親を追い出す為と、新規ビジネスを立ち上げる一石二鳥を実現するためにマリーゴールド・ホテルの計画が立ち上がる、という設定になっています。日本と同様、高齢化社会を迎えるイギリスの家族関係の変化、ゆりかごから墓場まで過去のものとなったイギリスの福祉政策の変節などが見て取れます。
映画ではホテルのビジネスは若いオーナー、ソニーの父から託された純な夢、という位置づけですが、小説ではある意味金を生む姨捨山として描かれてるわけですね。それを大英帝国の旧植民地であるインドで展開されるわけです。当然、現先進国を呑み込まんと急成長するインドの経済発展も背景にありますね。そして小説ではソニーが若くないんですね。老かいなやり手ビジネスマンとして登場します。映画のソニーはかわいかったですけど、小説では全然かわいげないですね。そしてマリーゴールド・ホテルも別にボロくないんですよ。普通にちゃんとしたホテルで7人以上の老人が泊まってます。映画で7人に絞ったのは時間内で上手に描き分けられる人数が7人であったということでしょうね。

最も違うのはノーマンの描かれ方でしょうか。映画ではロナルド・ピックアップが演じていた老プレイボーイ。映画では素敵な女性を見つけますが、小説では宦官と知らずにベッドインしてショックで心臓停止で死亡。すごい展開ですね。ちなみに老人ホームを追われ、マリーゴールド・ホテルのビジネスモデル構築に一役買っているのもノーマン。いい歳してプレイボーイ気取りでいろんなところで迷惑がられ、娘の家にやっかいになるも、義の息子であうラヴィ(医者)の画策によってインドに送られることになります。カーマ・スートラをネタに口車にのせられ、喜び勇んで行くことになるんですが。

原作ありの映画作品は、相違点について常に議論されるわけですが、ここまで違うと普通に同テーマを掲げた別作品として楽しめますね。ハートウォーミングなアプローチとブラックユーモアとどちらが好きかは好みが分かれるところでしょうけど、どちらも非常に良くできた作品なので、一粒で二度おいしいという気分ですね。

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