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映画レビュー「フリーダ・カーロの遺品 石内都、織るように」

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端的にとても見やすいドキュメンタリー作品だった。柔らかい光と空気に包まれた作品というか。音も綺麗に録れているし、カメラも安定しているし、という技術的な面でもそうだが、メキシコの陽気さと陰鬱さが両方撮られているというか、なんだか不思議なバランス感覚の映像だった。スタビライザーを使ってる画もあると思うが、幽霊の視点のような浮遊感があってすごく良い。
本作は、メキシコの画家フリーダ・カーロの遺品の撮影プロジェクトを任された写真家の石内都氏の撮影過程を追ったものだ。タイトルからは、フリーダ・カーロの半生を丹念に深堀りしていく作品を連想していたが、主人公はどちらかというと石内氏の方で、本作の制作も小谷監督の言によれば、製作動機の元々は石内氏を撮りたいというものだったらしい。カーロについてそれほど詳しくないという石内氏が、メキシコで彼女の遺品と対面し、いかにして彼女の生を浮かび上がらせ、その人生を追体験していく過程を追った作品、と言えると思う。

カーロは作風は派手だが、遺品もやはり派手だった。メキシコのオアハカ州の伝統衣装を普段から愛用していたそうだ。若い頃に事故に遭い、その後遺症に生涯悩まされたカーロはコルセットを欠かせなかった。遺品のなかでもこすセットには何か特別なオーラが漂う。
石内氏は、それらの遺品を自然光だけで撮影していく。シンプルな白い背景で仰々しく写さず、遺品を包む空気も一緒に撮影するというような感じ。
過去を撮るのではなく、遺品に宿るカーロを撮るかのような石内氏のアプローチはとても興味深い。遺品の人物の過ごした時間がカメラに収められることによって見えてくるような感覚。

理屈っぽくなく、静かなトリップ感のある作品だった。メキシコの青い家を訪ねてみたくなる。

ドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品 - 石内都、織るように』公式サイト

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