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かつてのスピルバーグらしさに溢れた「BFG」

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90年代に企画されたBFG

「BFG」は、スティーブン・スピルバーグがディズニーで監督した作品となるが、スピルバーグとディズニーの組み合わせは「戦火の馬」以来となる。前作はそれほどディズニー色の強い作品とはいえない作品だろうが、本作は夢のあふれるファンタジーとしてディズニーの作風にも沿ったものだし、スピルバーグの子ども心を久々に堪能させてくれる作品だ。スピルバーグは最近は、「ブリッジ・オブ・スパイ」や「リンカーン」など政治色の強い大人向けの作品が多かったが、ここにきて純娯楽作品を監督してきた。プロデューサーにもキャスリーン・ケネディとフランク・マーシャルの二人が揃った。それだけではなくて、本作の脚本を手掛けたのは、「E.T.」のメリッサ・マシスン。この4人が揃うのは、公開当時、歴代最高の興行成績を記録した「E.T.」以来だ。この4人が揃うこと自体なんとも感慨深い。編集も相変わらずマイケル・カーンだし、音楽もジョン・ウイリアムスだし。
なお、メリッサ・マシスンは本作が遺作となった。65歳の早すぎる死。もっと活躍してほしかった。

スピルバーグは幼少期から多くの映画を観て、様々な作品からの影響を受けているが、中でもディズニーからの影響は、本人も「自分の生みの親」とまで発言しているほどに深い。そんな彼が原点との仕事に選んだ題材がロナルド・ダールの童話だった。ブラックユーモア混じりのファンタジーをスピルバーグが手がけるのは手堅い組み合わせといえるだろう。それにしてもどうしてこのタイミングでスピルバーグが再び、このようなファンタジーを手掛けたのだろう。

この作品の企画の発端は、90年代に遡るようだ。当初は巨人『ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』役にはフックでスピルバーグ作品に出演したロビン・ウィリアムスを想定していたらしい。人に夢を見せる心やさしき巨人役は、なるほどロビン・ウィリアムスはかなりハマるだろう。しかし、本作のマーク・ライランスのパフォーマンスは素晴らしく特段の文句はない。
この作品、80〜90年代のスピルバーグ作品の香りをがするのだが、それは当時に企画され、また脚本、プロデューサーも当時のスピルバーグを支えたスタッフが集まったこと起因するのだろうか。

はみ出しものたちのやさしさと繋がり

本作がかつてのスピルバーグ映画の匂いがするのは、スタッフィングのせいだけではない。やはり内容自体にスピルバーグらしさが漂っている。幼いころに両親が離婚し、ディスレクシアのせいでいじめにもあったスピルバーグは描く少年少女は孤独であることが多い。マリッサ・メシスンが脚本を手掛けた「E.T.」などは典型的な例だ。孤独な少年と孤独なエイリアンの友情を描いたのが「E.T.」なら、「BFG」は孤独な少女とはみ出し者の巨人の友情を描いた作品だ。
主人公のソフィーは、児童養護施設で暮らしていて両親がいない。施設でも窮屈な思いをしている。対して巨人の方は、巨人の国においてはチビの部類に入り、唯一人間を食べなず、もっと大きな巨人たちにいじめられている存在だ。暖かな家庭で暮らすことのできなかったスピルバーグは、こうしたはみ出し者たちのやさしい繋がりを描くのが上手い。ディズニーはむしろ家族の絆を描くことに長けているだろう。彼らのメインターゲットは家族連れであるし。スピルバーグはその「当たり前」の家族の受容の輪から外れた者たちにもやさしい重要の輪が築けることを描く。

いじめられる巨人は、もしかしたらスピルバーグは自身の幼少期と重ねているのかもしれない。上手く言葉が喋れず、気持ちを伝えることを苦手としている心優しい巨人は、人に夢を見せることを生きがいにしている。(実際に飛んでいる火の玉のような夢を捕まえて、寝ている人にそれを吹き込む)巨人の有り様は、ディスレクシアのせいでいじめを受け、映画で世界中に夢を見せ続けたスピルバーグにも重なる。

本作、一番笑ったのは屁。70歳になる巨匠が童心にかえって屁で笑わせにきた。すごいよね。

The BFG
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