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アルジェリア映画『パピチャ 未来へのランウェイ』の監督インタビューしてきました

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 ハフポストに、現在公開中のアルジェリア映画『パピチャ 未来へのランウェイ』のムニア・メドゥール監督のインタビュー記事を掲載しました。

 私にとってファッションは自由や抵抗の象徴。映画『パピチャ 未来へのランウェイ』監督は語る | ハフポスト

本作は、アルジェリアの「暗黒の10年」と言われた90年代の内戦時代の物語です。イスラム原理主義の台頭で女性たちの自由が奪われていく中で抵抗する若い女性たちを描いた作品です。

 黒いヒジャブを強要する原理主義者たちに抗するため、アルジェリア伝統布のハイクを使ったドレスを作ってファッションショーを計画するという筋立てです。伝統を否定せず、新たな形へと変えていくことで自由と抵抗の象徴としていくというアイディアが秀逸だと思います。

 インタビューで重視したのは、以下の3つのポイントでした。
・ファッションという題材を選んだこととハイクの歴史的意味
・伝統を否定しない、国にひどい点があってもなお愛するということはいかにして可能なのか
・原理主義者たちに感化された自警団的女性たち

 ハイクはフランス植民地時代には、その下に女性たちは武器を隠して戦ったということで、独立運動の象徴のようなものだそうです。それが90年代には原理主義者がその下に銃を隠してテロを行うようになってしまった。

 だからハイクは駄目だではなく、武器を隠せないような形に、つまりドレスに、改良をして新しい自由の象徴にしようというのが本作が描いたことです。ここに民族の伝統と自由の見事な調和の可能性があるように思います。

 昨年、ベトナム映画の『第三夫人と髪飾り』という作品がありましたが、あの映画は祖国の伝統をしっかりと受け継ぎ、より良いものにしていくという意思を持った女性監督の作品でした。本作もそういう映画だと思います。

 アルジェリアやベトナムのような国から、欧米的な価値観を超えて先進的な考えが出てくるところに頼もしさを覚えます。『第三夫人と髪飾り』のアッシュ・メイフェア監督も、本作のムニア・メドゥール監督も、祖国を離れ欧米で暮らしていますが、祖国をアイデンティティを失わず、良いものは認めて悪い点を改善していくという姿勢が徹底していた素晴らしいなと思います。

 以下、取材と原稿作成時のメモです。

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『パピチャ未来へのランウェイ』、何を質問するか


アルジェリアで上映禁止となった経緯
正しい服装を啓蒙するポスターは誰がはっているのか。
授業に乱入してくるヒジャブを着た女性たちはどういう団体なのか。国の団体か、それとも自警団のような存在か

アルジェリア伝統の生地ハイク
 姉を銃殺したのは、そのイスラムの長い服の布に銃を隠し持っていた女性
 ハイクは、フランスからの独立の抵抗運動の女性たちの象徴でもあった
 母は独立戦争の時に同じように長い布に銃を隠し戦った。

独立運動の象徴が「暗黒の10年」の時には別のものに変質していた。

それを主人公はドレスにすることによって、さらに別の象徴にしようと戦う

 
「無知な人が信仰を振りかざして暴走してる」というセリフ
アルジェリアが好きという主人公。「私は満足している、戦う必要があるだけ」と力強く言う主人公が印象的。

寮の食事に何が入っている臭化カリウム 性衝動を抑える薬・・・これは事実に基づくのか?
 

Point3つ
・ハイクという伝統。。。これを美しいドレスに変えていくこと
  母はその下に武器を隠し持った
  姉はその下に武器を持ったテロリストに殺された
  主人公はハイクを肌を隠すのではなく、肌を見せる美しいドレスに変えていく
・女性も女性を抑圧する
  授業に乱入してくるくらいヒジャブの女性たちは何者か
  姉を殺すテロリストも女性だった。敵は男性だけではない
・アルジェリアの故郷を愛しているからこそ、こういう映画と作るということ

 
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記事の構成

Intro
黒いヒジャブを強制する社会で大学に通う女性たちがファッションショーを開くことで対抗する物語。内戦時代を舞台にしている
監督はアルジェリア出身の女性監督、内戦時代に亡命せざるを得なかった監督が祖国への想いを込めた情熱的な作品。

 
Body1 ファッションという題材を選んだこととハイクの歴史的意味
どうしてファッションショーというアイディアを物語の中心に据えたのか。

監督「ファッションが自由の象徴だから」

ハイクの歴史的背景をここで記述する。
そのハイクが、作品の中でどのように使用されているかも記述。

 
Body2 原理主義者たちに感化された自警団的女性たち
大学に乱入してくる、黒いヒジャブの女性の団体は何者なのか。

 
性衝動を抑制する成分が食事に混ぜられていたという恐ろしい事実
 

Body3 伝統を否定しない、アルジェリアへの愛を表明している作品であるということ
「暗黒の10年」での女性の苦難を描く作品だが、アルジェリアをとぼしめる作品ではない。むしろ、愛を表明した作品であるということ。

若い頃にアルジェリアを離れなくてはならなかった監督自身の感情の反映

「無知な人々が信仰を振りかざして暴走している」というセリフ・・・監督の考え

経済格差という今日的問題で現代と結びつける。

 
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 メモ、終了。

 作品がわかりやすい構造をしているので、質問はあまり悩むことなくすんなり思いつきました。多くの方に伝わりやすい作品だと思います。

 まずは物語を貫く題材であるファッション。イスラム圏の国の物語なので、女性の服装というのはやはり大きな意味を持ちます。単に大きな布が不自由だ、という話になっておらず、伝統的に様々な意味で表象されてきたものだということを、作中でもしっかり描いているので、そこはきちんと伝える必要があると思いました。

 その上で、90年代に女性たちがどのような目に遭っていたのかを、監督の言葉を借りながら記述して、その上で監督はなおアルジェリアへの愛があるという点が重要だと思ったので、このような構成にしました。

 そのほか、記事には盛り込めなかったですが、主人公のお姉さんがジャーナリストであること、作中にテロが映像資料館が爆破されるシーンがあることなども入れてもいいかなと思いましたが、取材時間切れでそこまで聞けなかったです。当時のアルジェリアは、内戦のせいで国外のジャーナリストもほとんど入れなかったらしいので、情報が寸断されていたというのも、この作品を語る上で大切なことかもしれません。

 とにかく、素晴らしい作品です。わかりやすい物語なので、ぜひ観てほしいと思います。

 

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