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ラトビアのアニメーション映画『Away』の即興性について書きました

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 リアルサウンド映画部の連載3本目で、ラトビアのギンツ・ジルバロディス監督のアニメーション映画『Away』を取り上げました。

 『Away』はなぜアニメーションとして画期的なのか VTuberにも通じる“即興性”を読み解く|Real Sound|リアルサウンド 映画部

 連載1本目はメロドラマ、2本目は映画と列車、3本目のテーマは「即興」です。本作は即興演出をアニメーションで可能にした作品です。

 アニメーションは画面の全てを計算して組み立てなければならないはずですが、本作はその常識を覆すように脚本も絵コンテもなく、全てその場で監督が直感的につくりあげています。

 即興演出は実写で生身の人間なしにはできないと思われていたはずです。アニメーションでそれが可能になったのは画期的なことだろうと思います。そのことを、ジョン・カサヴェテスなどを引用して語っています。

 監督本人にも取材させていただき記事を作成しました。そして、即興というキーワードで日本で盛り上がっているVTuberとも共通するものがあると思い、そのことも盛り込みました。

 遠いラトビアで発想された手法が、この日本のYouTube界隈で似たようなことを発想している人々がいる同時性に驚きますが、カサヴェテスがニューヨークで即興で映画を作っているころ、フランスでヌーヴェルヴァーグが起こっていたことを考えれば、時代を変える波というのは、同時多発的に起こるものなのかもしれません。

 本作、大変画期的な作品なので、ぜひ観てほしいです。これからのアニメーションのあり方を変える1本の可能性もあると思います。

 以下、記事作成時のメモです。

(C)2019 DREAM WELL STUDIO. All Rights Reserved.

 
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自分の関心事
即興でアニメーションを作ること。そこには思いも寄らない偶然性が宿るのか。。。。アニメーションにおける偶然の奇跡とは。

 
カサベテスを調べたい・・・カサヴェテスが映画界にもたらしたものは何だったか。。。。それが『Away』とどうつながるのか。

映画のドキュメント性の本質を掘り下げる必要がある。
 

Thesis
即興演出がアニメーションにもたらすものとは

 
Intro
実写映像にあって、アニメーションにないものは何か
そのうちのひとつが即興だ。

しかし、それはもうそうとは言えない時代になってきた。それは『Away』やVTuberの登場によって覆されつつあると宣言。
 
 
Body1 映画と即興演出
映像という記録媒体は、再現可能な媒体だ。一回限りの事件を何度も反復できるし、コピーできる。

予定調和から外れた「事件」を導入するということでもある。それは何をもたらすのか。
内発的な真実の感情の発露か。

是枝監督の証言・・・・「映画を撮りながら考えたこと」から引用する
 
ロベール・ブレッソンは役者と呼ばずにモデルと呼び、脚本を何度も反復させるようなやり方で感情で機械的な動作や声出しを徹底させる。一方、即興を重視した。

ブレッソンの言葉を引用。内発的な真実をキャメラの前に創造すること。・・・・「シネマトグラフ覚書」から引用
 
ジョン・カサヴェテスの『アメリカの影』の即興について・・・・『アメリカの影』は最初から最後まで創造的アクシデントの連続だった。

即興は、映画に創造的アクシデントをもたらす。

(C)2019 DREAM WELL STUDIO. All Rights Reserved.

 
Body2 『Away』監督の証言
アニメーションに創造的アクシデントをもたらすことは困難だったはず。では、『Away』はどうやってそれを実現したのかを、監督の言葉から探る。

ここからインタビューパート
・直感的に作品を作ってみたかった。
・ドキュメンタリーのようにアニメーションを作れないかと思った。
・物語自体も途中から思いがけない方向に変わっていった。
・CGは完璧なシミュレーションができるが、監督は作品に「不完全性」を持たせたかった。

 

土居さんの論考を紹介

アニメーションが手にした新たな「跳躍」 2019年のアヌシーから見えてきたもの(前編)注目されつつあるゲームとアニメーションの間
あらかじめ用意された(プログラムされた)動きを操作し撮影することによって映像を作っていく方法論である。2019年のアヌシーは、この新たな運動創造の原理が生まれてきた年としても記憶されるべきものとなるのだ。


新たな運動創造とは、創造的なアクシデントから生まれると言えるか。
 
 
Body3 VTuberも即興する存在ではないか
モーションキャプチャ―という技術は、いうまでもなく人間の動きをなぞることが可能であり、人間の身体のアドリブ的な動きをアニメーションとして記録することが可能だ。
近年の神山健司作品には、人間の無駄ともいえる動きがまじりあった作品を生んでいる。
VTuberの仕組みを実演!?「コンテンツ東京2019」新設のVTuberゾーンをレポート【VR企業編】 – PANORA

そのvTuberのロジックをそのまま映画制作に活かした作品が白爪草だ。
刺激的なVTuber映画『白爪草』は、新たな映像ジャンルを開拓したーーヒッチコック的ともいえる良作について考える|Real Sound|リアルサウンド テック

モーションキャプチャによるアニメ作りでは、基本動きのデータを取捨選択し、「きれいにアニメっぽく」整えていくが、近年の神山健司作品は、人体の微妙な揺れまでそのまま利用したアニメ作品を作っているのも興味深い。
ULTRAMAN
攻殻機動隊2045

さらにロトスコープもアニメーションに偶然の奇跡を与えられるのでは。
久野遥子さんの証言・・・ロトスコープはアニメーションでアクシデントを起こすために有効だと思います。
その例として『Spread』が良い・・・赤ん坊を撮影していること。段取り通りに動かない赤ん坊を、具象レベルの異なる絵で描いている。

 
結論
即興を得たこれらのアニメーションは、映画の歴史におけるヌーヴェルヴァーグのような「新しい波」なのではないか。

 

(C)2019 DREAM WELL STUDIO. All Rights Reserved.

 
参考リンク
アニメーションが手にした新たな「跳躍」 2019年のアヌシーから見えてきたもの(前編)注目されつつあるゲームとアニメーションの間
 演じられた映像を撮影し再現するという意味において、CG以前における実写と同じような位置づけに置かれるともいえる。
『Away』の監督に学ぶ孤高の制作術。みんなよりひとり。|ネジムラ89|note
 No need to understanding before starting.
 “始める前に全てを知る必要はない”
“没入型の体験”目指した長編アニメ「Away」コンセプトアート解禁(動画あり) – 映画ナタリー
影響を受けた作品たち

ギンツ・ジルバロディス(Gints Zilbalodis)
Rush (2010ショートアニメ) 
Aqua (2012ショートアニメ)
■Clarity (2012ショート実写ファンタジー)
Priorities (2014ショートアニメ)
Followers (2014 ショートアニメ)
Inaudible (2015 ショートアニメ)
■Oasis (2017ショートアニメ)
■Away (2019 長編アニメ)

 
ロベール・ブレッソンと即興について
即興芝居とアニメーション。『リズと青い鳥』 – Film Goes with Net
コピアポア・フィルム on Twitter: “〈読むブレッソン③〉 ロベール・ブレッソン著「彼自身によるロベール・ブレッソン インタビュー 1943–1983」(角井誠訳/法政大学出版局) https://t.co/bhCjTGQFEd 「私にとって即興は、映画における創造の基礎をなすものです。」 ーゴダールによる『バルタザールどこへ行く』インタビューより https://t.co/KX6w91dSDC” / Twitter
『風の電話』 諏訪敦彦監督×鈴木卓爾さん対談|出町座|note
「東アジア文化都市 2019豊島」プロモーション映像・久野遥子監督インタヴュー | tampen.jp
バーチャルモーションキャプチャーを使ってVtuberになる方法 | STYLY
リアルタイム レンダリング | 建築設計者向けソフトウェア | オートデスク
ポリゴンとは|3DCGデザイナー専攻|デジタルハリウッドの専門スクール(学校)
『メカスの映画日記 ―ニュー・アメリカン・シネマの起源 1959‐1971』 | かみのたね
キャラモデリングを”知ろう” | 東京工業大学デジタル創作同好会traP
オーパーツ・コレクション:『エクリヲ vol.12』「“異物”としての3DCG」 – ecrit-o
 
参考書籍

 

 

 

 
 
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 メモ終わり。

 初期の段階では、ジョナス・メカスなども入れる予定でした。でも、ガチにドキュメンタリーの人を例に出すのは適切ではないかも、と思い劇作家で即興を得意にした人に絞ることにしました。最終的に残ったのは、是枝裕和監督とジョン・k差ヴェテスですが、是枝監督は今最も日本で名前が知られている監督ですし、多くの人にわかりやすいはずだと思って採用、カサヴェテスは「創造的アクシデント」というキーワードがドンピシャだったので採用してます。

 カサヴェテスについてはその最初の作品『アメリカの影』が評価されたポイントがユニークだったのでもアクシデントっぽくていいなと思っています。本人は直そうとしていたところがむしろすごく高く評価されたポイントなんですよね。そこが即興の面白さだなと思います。

 本来は、ロベール・ブレッソンも引用する予定でしたが、2つ例があれば十分かなというのと、ブレッソンの演出スタイルは即興を大事にすると言っても、是枝さんやカサヴェテスとはまた随分異なる役者の扱い方なので、除外しました。役者の意思によって動いてもらうのではないですからね、ブレッソンの場合。そこにも即興があるのですが、じゃあ違いは何?と余計な説明が増えてしまうので、ここで取り上げる例としては適切じゃないと思いました。

 結構最後の方までブレッソンは残していたのですが、外してみたらスッキリしたのでこれで良かったと思います。

 土居伸彰さんの論考を引用する予定でしたが、変わりに自分の論考をそこに入れています。これはカサヴェテスの『アメリカの影」と『Away』の置かれた立ち位置が相似形だなと気がついたからです。

『アメリカの影』は撮影技術的には荒っぽくて、あきらかにハリウッドのスタジオ作品の技術と比べれば劣ります。でもそこが新鮮で評価されたわけです。昨今のピクサーやディズニーのCGアニメーションと『Away』のCGを比べれば、『Away』もまた技術的には劣ります。でもそれが新鮮な即興をもたらす条件です。ローポリゴンだから、リアルタイムレンダリングが可能になり、即興でキャラクターを動かせるわけで。

 ということは、カサヴェテスの『アメリカの影』で映画界に与えたインパクトと同じものを『Away』はアニメーションにもたらしたのでは、という自分の考えをダイレクトに入れることにしました。これは個人的に良い発見だなと思ってます。

 僕は、ケン・ローチとかアッバス・キアロスタミとか即興の芝居を積極的に取り入れるタイプの監督が好きなんですよね。だから、アニメーションに即興をもたらしたこの映画は僕にとって長年待ち望んだ作品です。これから、このスタイルでユニークな作品がどんどん生まれていってほしいなと思っています。
 

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