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『ロン 僕のポンコツ・ボット』と『アイの歌声を聴かせて』とAIと人間の関係について書きました

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 リアルサウンドテックに、『ロン 僕のポンコツ・ボット』と『アイの歌声を聴かせて』を題材に、人とAIやロボットとの付き合い方についてのコラムを書きました。

 ポンコツAIを描く『ロン』と『アイの歌声を聴かせて』が教えてくれる、寛容な社会のつくり方|Real Sound|リアルサウンド テック

 どちらも非常に面白い作品で、単純に観て楽しんでほしい作品ですが、ロボットやAI、そういう便利なものと人間がどういう関係を築くといいのか、とても示唆に富んだ2本でしたので、作品レビューとは異なる切り口で書きました。

 便利なテクノロジーは生活を楽にしてくれるものですが、もしかしたら、それが人を不寛容にしているかもしれない、という命題を考えてみるという体裁です。

 弱いロボット、という概念を提示している研究者の方のご意見を参考に、不完全さを認めることができる寛容な人間を育てるために、テクノロジー環境はどうあるべきかということを書いてみました。

 どちらの作品もポンコツAIを題材にしていますが、物語では故障しているロボットと人の絆ものはよくありますが、それがどうして大切なことなのか、「他力本願の弱いロボット」論を紹介して、2本の作品にその要素がどう見られるかを書いてます。

 私達はたしかに便利さになれすぎていて、それが人間関係にも影響しているかもしれませんね。弱いロボット論は非常に新鮮です。
 
 
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ポンコツ・・・・ロボットと人の絆もの・・・故障していることが多い?
鉄腕アトム・・・『少年』編集長の金井武志は「弱さや人間らしい感情のあるロボットを主人公にすれば読者に受け入れられる」と手塚に提案し 鉄腕アトム – Wikipedia
AIセレクション: 鉄腕アトム (ai-gakkai.or.jp)

意識の宿ったAIが、人間の「不完全さ」をも完全に備え、人間を超越した後の世界は来るか? (biz-journal.jp)

a href=”https://hai-conference.net/proceedings/HAI2017/pdf/D-2.pdf” rel=”noopener” target=”_blank”>和文タイトル (hai-conference.net)
その結果,Mirnig ら[2]の 研究では,誤動作を起こさない完全なロボットより も,意図的に不完全さと誤りを演出したロボットに 対して,人はより好感を持つ傾向にあることが示さ れた。さらに,谷郷ら[3]の研究では,ロボットの失 敗行動がロボットに対する親しみやすさを向上させ ることがわかっている。このように,ロボットの不完全さによって,「人の 利他行動が引き出されること」,「ロボットに対する 印象が変化すること」が明らかになっており,人と ロボットの円滑なコミュニケーションにつながる可 能性が示唆されている。しかし,ロボットに不完全 さをもたせることに着目した研究はまだ少ない。

助けがないと何もできない〈弱いロボット〉が教えてくれた、いま私たちに足りないこと | 株式会社リクルート
しかし、この道具がロボットになると、ロボットが自律的に思考し、効果的で合理的に判断してくれるのが当然だと考えてしまう。目的達成のための機能を完璧にアウトソーシングしてしまうんです。
結果的に、人とロボットの弱さと強さを組み合わせるような協力体制は生まれず、お互いの距離は離れてしまう。距離が離れると相手への共感性は薄れ「もっと早く」「もっと正確に」と相手への要求水準を高めてしまいます。
さらに、自分の意にそぐわない動きや、機能不全を起こすと「何をしているんだ、ちゃんとやれ!」と、ロボットに対して不寛容になっていく。

ロン 僕のポンコツ・ボット
 完璧すぎて、自分では何もしない子供たちが育っていたような気もする。友達作りではなく、ネットでのアテンション作りばかりをする子供たちになっていった。。。不完全さを持たせたら、他者に対する寛容性が変わった。
アイの歌声を聴かせて
 詩音の突飛で危なっかしい部分に振り回されるうちに友達としての感覚が芽生えていく。
〈新作紹介〉『ロン 僕のポンコツ・ボット』『アイの歌声を聴かせて』:ユニークな共通点ありのSFアニメ映画! | cinemas PLUS

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「アイの歌声を聴かせて」吉浦康裕×大河内一楼インタビュー – アキバ総研

映画『アイの歌声を聴かせて』吉浦康裕監督&共同脚本・大河内一楼インタビュー | アニバース

【前編】『アイの歌声を聴かせて』吉浦康裕監督インタビュー! ジュブナイル+AI+ミュージカルの普遍的なエンターテインメント | RanRanEntertainment ランランエンタメ! (ranran-entame.com)

【後編】『アイの歌声を聴かせて』吉浦康裕監督インタビュー! ジュブナイル+AI+ミュージカルの普遍的なエンターテインメント | RanRanEntertainment ランランエンタメ! (ranran-entame.com)

 
 
Thesis
完全なロボットは世の中を便利にする、だが、不完全なロボットやAIは社会を寛容にする
 
 

Intro
2つのロボットAIアニメーションが公開されている。

共通点がある、どちらもポンコツであるということと、人との友情を育む物語であるということ。
どうして、人はポンコツロボやAIに愛着を持ってしまうのか。そこには確固たる理由がある。

 
 
Body1 ある実験
ゴミを拾えない、情けないお掃除ロボット

これが子どもの利他的な行動を引き起こす。

研究者はこう語る。

ヨタヨタと動きまわるゴミ箱なんですが、自分でゴミは拾えません。落ちているものを見つけると、それを周りの人に教えるような仕草をします。人はそのロボットの意思と、ゴミが拾えないことを判断し、愛おしく思ってゴミを拾ってあげてしまう。
子どもたちの前に〈ゴミ箱ロボット〉を持っていくと、「拾って欲しいのかな?じゃあ拾ってあげるね」と喜んでゴミを拾い集めます。大人だって「しょうがないなぁ」と思いながら拾ってあげる。ロボットは拾ってくれた人を見上げてちょっと会釈をする。〈弱いロボット〉は、そんな人との距離感を作るのです。助けがないと何もできない〈弱いロボット〉が教えてくれた、いま私たちに足りないこと | 株式会社リクルート (recruit.co.jp)

これを弱いロボットという概念で呼んでいる。ポンコツの方が親近感がわいて、寛容になるということが言える

実験で証明しようとした例。
不完全なロボットと、きちんとしたロボットと協業してゲームを行った場合、その後の寄付額などの利他的行動に変化が見られた。
不完全なロボットと協力的に行 動を行うことで,第三者への利他行動を誘発する可 能性が示された。

また別の実験では、このような結果も生まれた。

本来完全な振る舞いをするはずのロボットが 不完全なプレゼンテーションをすることが,ロボットに対 する印象評価とプレゼンテーション内容に対する評価に影 響を及ぼすか,またロボットに対する協力行動の喚起に影 響するかを検証した.その結果,プレゼンテーション中に 失敗する演出を施したロボットは,そうでないロボットと 比べて,有意に,より人間的だと感じられ,より親しみを もたれ,より有能でないと感じられることが分かった.
失敗する演出を施したロボットは人と円滑な関係を築くか

 
 
Body2 両作品に観られるもの

ロンでは、完全なBボットを持っている子どもたちは、ネット上でバズることやいいねを集めることばかり、つまり、自分のことばかりを考え、殺伐とした学校空間だった。しかし、主人公は、目の前のBボットに愛着を湧き、さらには周囲の友人も気遣えるようになっていき、最終的に友達ができていく。

アイの歌声を聴かせてでは、詩音のハチャメチャな行動に振り回されている。いきなり歌いだしたり。
ある意味、世話のやけるAIである。だが世話を焼いているうちに周囲の人物は愛着を持っていき、最後には友達感覚をいだくようになっていく。クラスで嫌われていた主人公にも友達ができていくし、人と人をつなげていく。

完全なロボットは製品(アイうたの敵が言うような、あるいはロンのCEOが言うような)だが、不完全なロボットは友人となれる。

岡田氏は、こう語る

ロボットが自律的に思考し、効果的で合理的に判断してくれるのが当然だと考えてしまう。目的達成のための機能を完璧にアウトソーシングしてしまうんです。
結果的に、人とロボットの弱さと強さを組み合わせるような協力体制は生まれず、お互いの距離は離れてしまう。距離が離れると相手への共感性は薄れ「もっと早く」「もっと正確に」と相手への要求水準を高めてしまいます。
さらに、自分の意にそぐわない動きや、機能不全を起こすと「何をしているんだ、ちゃんとやれ!」と、ロボットに対して不寛容になっていく。助けがないと何もできない〈弱いロボット〉が教えてくれた、いま私たちに足りないこと | 株式会社リクルート (recruit.co.jp)

それは人間同士にも言えるのではないか。
ポンコツロボットは社会の不寛容さを解消できるかもしれない。

完全なロボットやAIは生活を便利にする。だが、不完全なそれは社会を寛容にする。

2本の映画はそのことを教えてくれる上質な作品だ。

 
 
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 メモ終わり。

 弱いロボットの動画は他にもこんなのがあります。

 子供たちが積極的にロボットを助けている様子がよくわかります。なんでもロボットやAIにおんぶにだっこの生活をしていると確かにそれが当たり前になり、人間に対しても「どうしてそんなことができないのか」といらだちやすくなるでしょうね。『ロン』は特に、その結論に近い展開になります。『アイうた』の方は一見ポンコツに見えるその行動は人にはわからないレベルの高度な計算である、という展開になります。

 不完全さをもプログラム可能かどうか、という議論もここからできるようになります。その点はまた何か別の作品で書けるといいなと思います。
 
 
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