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2022年のアニメ年間ベストを出しました

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 リアルサウンド映画部で毎年出させてもらっている年間アニメベスト10です。

 杉本穂高の「2022年 年間ベストアニメTOP10」 新海誠のさらなる飛躍への期待も込めて|Real Sound|リアルサウンド 映画部

 新規性、斬新さなどを考慮すると一位は『THE FIRSR SLAM DUNK』なのですが、敢えて新海誠監督の『すずめの戸締まり』を一位にしました。選考理由は五位までが記事に書きましたので、ここでは六位以下の選考理由について書いておきます。
 

10位:『ONE PIECE FILM RED』
今年のジャンプの強さを象徴する一本としてランク入りさせることにした。25年続くこのタイトルで、これだけラディカルに作品のイメージを壊すものを作れるのは、すごい。谷口悟朗監督の戦略がズバリとハマっているし、映画館で体験することを考え抜いて作っている。『呪術廻戦』や『チェンソーマン』など新規タイトルにも負けない存在感を発揮し、ジャンプの王者の面目躍如を果たした。
 

9位:『シチリアを征服したクマ王国の物語』
子供に「世界とはこういうもの」とわかりやすく教える童話。どこを切り取っても美しい絵として成立するアニメーションも素晴らしいが、権力の腐敗構造を高いレベルで風刺しているのが素晴らしい。旅芸人の語りとして劇中劇の構成にしたのも良かった。
 

8位:『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』
ストップモーションも一つ入れたいと思い、今年はこれを選んだ。これがなければ堤大介監督の『ONI:神々山のおなり』を入れるつもりだった。
『ピノッキオ』という題材はストップモーション向きだ。木の人形と人間を絵で描き分けようとした時、その材質の違いまで描きこむことは難しい。関節を人形風のジョイントにするなどして区別させるわけだが、ストップモーションなら材質のレベルで違いを出せる。その違いが前編に渡って大きな効果を上げている。

材質レベルで異なることが映像から実感できるからこそ、ピノッキオの異質さが際立つ。それ故に、彼が迫害されたり物珍しがられる理由も、人間になりたいという夢も切実に伝わる。ブラックファンタジー的なテイストで政治的風刺を含んでいる点も、ディズニー版よりも原作に近い。
 
7位:『アポロ10号 宇宙時代のアドベンチャー』
リチャード・リンクレイターによるロトスコープ・アニメーション。アポロ11号の月面着陸に湧いた時代に少年時代を過ごしたリンクレイター自身の思い出を元にしているらしい。一種の伝記映画だが、主人公の少年がアポロ11号の前、アポロ10号 1/2のパイロットに選ばれて月に先に降りていたという空想が交じる。空想と現実が入り交じるリンクレイターのアニメーションの系譜に連なる作品で、ロトスコープが効果的に用いられている。

記憶とは正確な記録ではない。しかし、正確な記録よりも記憶の方が、人間にとって実在感が強いものだ。空想と現実が入り乱れるのが人の記憶の「リアル」である。いかにも少年時代に体験しそうなエピソードが数多く描かれるが、本当に全て監督自身が体験したかどうかわからない。しかし、実感はあるのだと思う。そういう「リアル」がロトスコープによるアニメーションには絶妙にマッチしている。
 
6位:『チェンソーマン』
テレビと配信作品のドラマシリーズは、劇場用長編と遜色ないクオリティと豪華さを実現しているが、日本のアニメにおいても同じ事態が進行している。もはや、劇場アニメだからクオリティが高いとかテレビアニメだからこの程度の作画、という言い方ができなくなってきているが、本作はその象徴だ。一昔前なら映画でしか実現不可能なレベルの作画で丁寧な日常動作とアクションを丹念に描いている。

このド派手な原作を題材に、そういう日常芝居で勝負してくるのかという意外性があるが、原作が実写映画の影響をふんだんに受けているので、実写的な間のとり方や芝居を追求が必要だったということだろう。音響も良い。環境音の入れ方が特に好きだ。
 
 
 ここ数年、アニメーションは年中良質な作品が供給される状況が続いており、とても豊かな状態と言えます。来年以降もこの状態が続くと良いなと思っています。とりわけ、海外のアニメーション作品の配給が充実してきているのは喜ばしいことです。
 
 その他、選考外になったけど、注目すべき作品も以下にあげておきます。
 
『私ときどきレッサーパンダ』は近年のディズニー/ピクサー作品で最も良い。男子同級生のふくらはぎがセクシーという話題で盛り上がる小学生女子たちを描写しているのがいい。欲望を否定しない作品だった。いしづかあつこ監督の『グッバイ、ドン・グリーズ!』のドローンの使い方は素晴らしかった。小さな町しかしらない少年が世界へ視野を広げる話を、上空から世界を広く見下ろすドローンという機材がサポートする話だ。ノラ・トゥーミー監督の新作『エルマーのぼうけん』も相変わらず素晴らしい作品だった。

日本の漫画をフランスでアニメーション化した『神々の山嶺』は、日本市場では成立困難な漫画の映像化の新しい道を開いてくれるかもしれない。

『夏へのトンネル、さよならの出口』、『雨を告げる漂流団地』の2本は、作家の力が本物であることを証明した。

シリーズものでは『地球外少年少女』『よふかしのうた』『明日ちゃんのセーラー服』『サイバーパンク:エッジランナーズ』『ONI:神々山のおなり』『時光代理人 -LINK CLICK-』『SPY×FAMILY』あたりが良かった。

その他、山田尚子監督が唯一のアニメ作家として参加した『モダンラブ』の一篇「彼が奏でるふたりの調べ 」も山田監督らしさにあふれていて見ごたえがあった。吉田玲子以外の脚本であるのも貴重だ。
  
 
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