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『トリとロキタ』ダルデンヌ兄弟に欧州の難民問題について聞きました

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 ハフポストに、最新作『トリとロキタ』で来日中のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟にインタビューしてきました。

 「難民の物語は私たちの社会の物語」再び映画で現実を変えられるか? ダルデンヌ兄弟に聞く | ハフポスト アートとカルチャー

 ダルデンヌ兄弟にインタビューするのはこれで二回目です。『午後8時の訪問者』の時でした。あの時も移民を題材にしていましたね。

 ダルデンヌ兄弟は移民・難民を描き続けてきた映画作家です。出世作『イゴールの約束』の時から一貫して描いています。もう一つの軸は、少年少女を主人公に据えることが多いことですが、本作はその両方を持った作品です。

 今の欧州は難民問題でことさらに揺れています。ウクライナ紛争からの流入で危機的な状況が多く発生しており、難民が増え続けいます。それと比例するように排外主義的な機運も高くなっているという状況です。長年、欧州の移民・難民を題材に映画を作り続けてきたダルデンヌ兄弟は、「欧州の難民問題は悪化している」という認識のようです。

 『トリとロキタ』はそんな現実を捉えた作品です。相変わらず素晴らしい作品でしたので、是非ご覧ください。
 
 
 以下、原稿作成時のメモと構成案。
 
 
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Point
長年移民・難民を描き続けているダルデンヌ監督
子どもの難民が増えていることが背景にある。
映画は社会を変えられる
実際に過去の監督作は法律を変えたことがある。

 
 

Intro
欧州難民の増加が止まらない。
中には小さな子どもの姿もあり、海を渡す最中に不幸に見舞われるニュースも後を絶たない。

そんな難民に揺れる欧州の現実をシビアに見つめ続ける映画監督がいる。カンヌ国際映画祭パルムドールに2度輝くダルデンヌ兄弟だ。

彼らの最新作『トリとロキタ』はそんな難民にならざるを得ない子どもたちの現実を、ドキュメンタリーのような理圧なタッチでまざまざと描いている。

6年振りに来日した監督の2人に、本作と揺れる欧州の今について話を聞いた。

 
 

Body1 移民・難民を描き続けてきたダルデンヌ
イゴールの約束の話

その手にふれるまで

トリとロキタで描かれるものをここに

なぜ長年、移民や難民を描くのか
――僕はあなたがたの映画イゴールの約束から見ていますが、あの映画でも不法移民を描いていました。今回も難民の物語を描いていますが、長年移民や難民の物語を描き続ける動機は何ですか。

リュック:なぜなら私たちは世界と繋がっているからです。溝口監督も女性に関する映画を撮っています。ですから、私たちの周りでは様々な民族が様々な理由、それはたいてい戦争が原因ですが、イラクやアフガニスタン、アフリカなど様々なところからこうして難民たちが民主主義を求めて、自由を求めて、母国よりも良い生活を求めて、私たちのいる欧州にくるわけです。こうした問題は私たちの周囲で普通に起こっていることなんです。

欧州の難民をめぐる状況は悪くなっている
――その27年前、それ以前から移民の話を撮っていますけど、ここ何十年かで監督のめから見て、ヨーロッパの移民をめぐる状況は良くなっていますか、それとも悪くなっていますか。

ジャン=ピエール:むしろ悪くなっていると思います。大半が悪くなっています。なぜなら子どもたち、多くの未成年者が移民としてやってくることはなかったのですが、こうした傾向が増えているからです。もはやEUのレベルでこの問題を解決することも難しくなっています。本気でこうした問題に取り組んでいる国は少ないと思います。EUでは移民を受け入れることについてまだ恐怖心があります。なにか全体で録り決めをすることにいたっておらず、一つの国が何か小さな取り決めをしたりすることはありますが、そういう散発的な動きにとどまっています。EUレベルでしっかりした法律を変えるような動きは前年ながら今のところありません。これは、特に残念なことだと思います。
 
 

Body2子どもの難民が吠えていることが背景に

今回、少年少女の難民の物語である理由
――子どもの移民が増えていることが今回の作品で少年少女を主人公にした理由のひとつですか。

リュック:そうです。未成年者がとてもふえているんです。彼らもビザがもらえないために、消息がわからなくなったり、女の子は売春し、男の子は麻薬、これは男の子に限りませんが、密売をしたりしているわけです。この子どもたちもビザさえ撮れれば普通の生活ができるんです。何か法律を変えなければならないという思いがあります。今、EUは未成年者の移民がどんどん増えています。消息もわからなくなっているという現実に私たちは強い憤りを感じています。ですから、この現状に応えるためにこの映画を作り、現状に対して問題提起をしているのです。

EUの難民の子どもが増えている現状
欧州難民危機:イタリアに到着する難民の子どもが増加【プレスリリース】|公益財団法人日本ユニセフ協会のプレスリリース
ヨーロッパ難民危機 保護を求める子ども、前年の2倍に ユニセフ、心のケアや母子支援を提供
ヨーロッパ難民危機 海を渡る子どもたちが増加 様々な事情、支援の不足

世界の難民の41%が18歳未満
数字で見る難民情勢(2021年) – UNHCR Japan
18歳未満の子ども  — 41%
* 2018年~2021年で難民として生まれた子どもは150万人以上(年間平均約38万人)
ヨーロッパの難民問題と海外の反応についてわかりやすく解説|国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン
難民の半分は18歳未満の子どもです。難民の子どもたちの多くは、教育の機会や安全に過ごせる場所が与えられていません。基礎学力に乏しくなり、暴力や虐待、児童労働や早婚などのリスクにさらされているのです。紛争などの影響で子どもらしい生活を奪われるばかりか、兵士として過ごさなければならなかったケースも沢山あるのです。明るい未来を描くことができない子どもたちが、とても多いのです。

 
 

Body3映画は社会を変えられる

実際に過去の監督作は法律を変えたことがある。
ロゼッタ法について
[ロゼッタ法とは、1999年にベルギーで制定された若者の雇用促進を目的とした法律です]この法律は、以下のような内容を含んでいます。
すべての民間企業や公共機関は、25人の従業員に対して1人以上の25歳未満の若者を雇用することが義務付けられる。
若者に対する最低賃金が引き上げられる。
若者に対する社会保障や税制上の優遇措置が導入される。
本国ベルギーでは「ロゼッタ・プラン」(ロゼッタ法)
本国ベルギーでは「ロゼッタ・プラン」(ロゼッタ法)という青少年雇用のための負担を軽減する法律が成立した。「映画が現実を変えた」好例。
Rosetta plan launched to boost youth employment | Eurofound

映画で社会が変わることがある
――監督は以前ロゼッタという映画を作って、それをきっかけにロゼッタ法ができたことがあります。映画が社会を動かした実例と言えますが、監督は今も映画は社会を変える力を持っていると信じていますか。

ジャン=ピエール:そうですね。全てが可能だと思いたいです。今回のような場合は法律を変えればいいのです。同伴者のいない18歳未満の子どもたちを自動的にビザがないと強制送還されますが、この法律を変更して、職業訓練をつめるようにする、職を得られるようにする、学校に行けるようにする、そのように法律を変えるべきだと思っています。世の中には偽善があり、EU諸国の中には実際にびざなしに働いている労働者はたくさんいるんです。彼らも正規の労働者になりたいと考えているのです。
 
 
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 メモ終わり。

 ロゼッタ法制定のきっかけとなったのは、パルム・ドールを受賞した『ロゼッタ』ですね。映画が現実の政治に影響を与えた事例として、監督に話が聞けたのは僥倖でした。
 
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