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『サマータイムレンダ』について書きました

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 リアルサウンドブックに、Netflixでの配信が始まり、アニメの話題が再燃した『サマータイムレンダ』について書きました。

 『サマータイムレンダ』人気再熱の理由 「ループとドッペルゲンガー」で描き出す、人間の二面性|Real Sound|リアルサウンド ブック

 本作、配信ではディズニープラス独占だったのですが、この度ほかのプラットフォームでも解禁になったようです。独占配信だと良い作品でも話題になりにくいというのは、結構大きな課題ですね。

 テレビで放送中にもその質の高さはそれなりに話題になっていたとは思いますが、爆発的な人気とはいかず、今あらためてたくさんの人が観ているという状況です。独占配信の是非を議論できる題材だなと思っていますが、この原稿ではストレートに作品の魅力について語るものにしました。

 ミステリー作品としてよくできていますよね。考察要素もたくさんあり、現代的な作品だなと思っています。
 
 
 以下、原稿作成時のメモと構成案。
 
 
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主人公=読者=ゲームのプレーヤーという漫画、心強い「ふたりループ」…今月完結「サマータイムレンダ」作者に聞く : 読売新聞

“ループもの”最旬漫画『サマータイムレンダ』が熱い 文芸評論家も唸る“頭脳戦”とは?|Real Sound|リアルサウンド ブック
 
 
作者は、ループとドッペルゲンガーの組み合わせから着想を開始した。

主人公の視点は、ゲームプレイヤーの視点であり読者の視点である。読者は主人公が知っていることしか知らずに物語は進んでいくのが基本となっている。一人称的な物語といえばいいか。

情報の出し方、整理の仕方が上手いからこそ、引き込まれる。

孤島が舞台、、、出口のない舞台

 
 
舞台設定・・・孤島

1. 孤立感:孤島は、陸地とは切り離された場所にあるため、孤立感が強くなります。物語の登場人物たちは、外界との接触が難しく、自分たちだけで生き残る方法を模索しなければなりません。このような孤立感は、物語に緊張感や不安感を与え、読者を引き込みます。

1. 謎や秘密:孤島は、誰もが知らない秘密を抱えることがあります。孤島に何か秘密がある場合、登場人物たちはそれを探し出すために動くことになります。このような秘密は、物語にドラマティックな要素を加えます。
1. 自然の厳しさ:孤島は、自然環境が厳しい場所であることが多いです。海や山、森林など、自然の力が物語に影響を与えます。天候の変化や、地形の制限なども、物語において重要な要素となるでしょう。
 
キャラクター・・・

主人公のしんぺいは、特別な能力はループしかない。しかし、ループすることに何の自覚もない状態から始まる。彼の特徴は俯瞰すること。この俯瞰するという行為に、時間軸を横断して物事を対極的に観るという視座がある。それが読者に近い感覚となる。あるいはゲームのプレイヤーの感覚。主人公と同じ情報しか、読者も持たない

ヒロインの潮が死んでいるという取り消せない事実から始まる。しかし、死んでいるけど明るいのでしめっぽくなりすぎないのが本作の美点。時空を超えた絆も演出するのに一役買っている。
 
ループとドッペルゲンガー

ループものは、数多く作られている。どうリミットを設定するのかに物語の緊張感が宿る。ここでは、時間の戻れる地点が徐々に短くなる、それ以降の出来事は確定するというのが上手い発明、時間ループもので時間のカセをうまくはめて、セーブポイントからやり直しができる、俯瞰しながら。

ドッペルゲンガーの設定は、ミステリーの叙述トリックとして定番である双子のトリックもお思わせるものへの応用も効かせている。さらには、本物とコピーに違いはあるのかという実存的な問いも投げかけることを可能にしている。自分が自分であるための条件とは何か?
 
展開

ちょっとずつ真相に近づくとともに仲間が増えていくという展開は少年漫画のセオリー
 

大きな謎はホワイダニットとして用意されるが、小さな謎にハウダニットとフーダニットを細かく切れ目なく配置されていて、背後の動機にも矛盾がない、このキャラクターならそう考えるだろうという説得力がある。

第一話で提示されるのは、潮は殺された?(吉川線)、澪のドッペルゲンガー、しおりちゃんはどうなった、巨乳の女性はなぜ血だらけになっていたか。フーダニット、ハウダニット、が鮮やかに提示されている

真犯人は冒頭に提示せよという約束事もきっちりと守られている。
 
 
構成4月1日
Point3つ

– ループとドッペルゲンガーの組み合わせの思いつきについて

俯瞰とゲーム、リセットと記憶の引継ぎ、ゲーム的感覚を与えることに成功

しかし、死の重みを捨てることはドラマを作ることを難しくするが、ループの時間感覚が短くなることで、解決している

– ミステリー、ホラーとしての作劇の上手い点

孤島という舞台設定・・・逃げ場のない場所

ドッペルゲンガーというホラー要素

怪談、古い伝承ホラーとしての要素

– キャラクターの魅力と2重性

ひづると龍之介、しんぺいと俯瞰するしんぺい、影で増える澪と潮、ハイネとヒルコ、かりきりと巌も

本物と影、違いはあるのかという実存的な問いも発生させている
 
 
– Intro

サマータイムレンダが、今になってSNSで話題となったのは、独占配信のかせが外れたからのようだ。

独占配信の是非については、そのお金がないとよに生まれなかった企画もあるわけで、一概には言えないが、時間差で解放されるのはバランスとしては悪くないのではないか。

そうやって時間差で話題となれるだけの力が本作にはあるということの証明だろう。

この作品は、卓越している。抜群の構成力、古典的ミステリーホラーを現代的なゲーム的完成をミックスさせ、極めて完成度が高い、一貫した作劇を実現している。
 
 
– Body1 ホラーとミステリーの作劇としての上手さ

本作は、どんな謎に主人公が挑むのか、簡単に概要を説明

主人公の網代慎平は、幼馴染の小舟潮の訃報を聞いて、2年ぶりに故郷の日都ヶ島に戻ってくる。そこで潮が海の事故で亡くなったと聞いていたにもかかわらず、他殺の可能性があると聞かされる。さらに、潮の妹、澪と瓜二つな存在が現れる。

本作はドッペルゲンガーのような存在「影」が島で暗躍しており巨大な陰謀が人知れず進行中、その陰謀に巻き込まれていく主人公の慎平が、タイムループの力を駆使して島の謎に迫っていく。

その謎をループして少しずつ解き明かす

ミステリーとしての基本的な部分が秀逸

作品全体を通して謎がある

次のページをめくりたくなる細かい謎がある

全ての謎が解決する

作品全体の謎。。。不思議な影の存在と潮の死

細かい謎がちりばめられている。

そしてきちんとそれらが解決していく。

フーダニット、ハウダニット、ホワイダニットもしっかりとしている。

誰が潮を殺したのかという謎は一話で提示される、吉川線で。同時にどうやって海で絞殺したのかという謎も提示している。

そして、澪が二人いるのはどういうことなのか、いきなり死んでしまう主人公がなぜか、ループをするのはなぜかという謎が次々と提示され、大きな一つの謎へと収斂していく。

ノックスの十戒ではないが、真犯人はすでに第一話で登場しているのも基本に忠実だ。

舞台設定が巧みだ。孤島という舞台は逃げ場のない場所としてのスリルを作り出す、

ドッペルゲンガーはホラー要素の代表で、その影が自分を殺しにくるというのも定番だが、やはり恐怖演出として一役買っている。同時に、ミステリーの双子の叙述トリックのように、一部機能してもいるのが巧みだ。後述するが、同時に人間の裏と表の顔、二重性への言及もしやすくなり、実存的な問いも産んでいる。

伝承ホラー要素も、強烈に効いている。これも昔の風習が残る孤島が舞台であることが説得力を与えている。

さらに、少年マンガらしい展開がまざる、知恵を振り絞る主人公に強いヒロイン、お色気要素も加味しつつ、イベントをこなすごとに仲間が増えていく。ひづると竜之介、ときこにそう、凸村のようなコメディリリーフも加えて、渋いおっさんもいる。

少年マンガらしいバトル描写も実はふんだんに織り込まれており、活劇と作劇のバランスが極めて良いのだ。
 
 

– Body2 ループとドッペルゲンガーの組み合わせについて

インタビューでこう答えている。

主人公=読者=ゲームのプレーヤーという漫画、心強い「ふたりループ」…今月完結「サマータイムレンダ」作者に聞く : 読売新聞
その後、正月に和歌山市の実家に帰った時、スマートフォンで何げなく目にしたゲーム情報サイトが、タイムループを題材にした新作ゲームの記事を載せていました。それ自体はありふれたネタですが、ドッペルゲンガーとループをくっつけたら面白いのではと、閃ひらめきました。そこからは早かったです。スマホのメモ帳に人物設定や大まかなプロットを一心不乱に打ち込み続け、1週間ほどで大枠は完成しました。

この組み合わせが生んだものは何か。

ループものは数多い。主人公が別の平行世界に移動する、あるいは、時間を巻き戻して記憶を引き継ぎながら事件を解決に導く、あるいは欲しい結末を求めるために戦い続けるという物語は、近年の物語の大きな潮流。

ここから、主人公が俯瞰するという特徴も類似の点として見出せるようになる。俯瞰してものごとを捉えるというのは、読者視点で物語を観察するというメタファーとして機能する。主人公と同じ情報を、読者も有するという物語構成で、主人公が真相に近づくのと同時に読者も真相に近づく。そして、主人公が考えながら行動するのと一緒に読者も考察を巡らせることに面白さがある。

ドッペルゲンガーというモチーフは、ホラーの定番だが、夏を舞台にした作品らしい、怪談要素、伝承ホラーの要素をループミステリーに組み合わせることで、独自色の強い作品に仕上げている。

ドッペルゲンガーはホラー要素の代表で、その影が自分を殺しにくるというのも定番だが、やはり恐怖演出として一役買っている。同時に、ミステリーの双子の叙述トリックのように、一部機能してもいるのが巧みだ。後述するが、同時に人間の裏と表の顔、二重性への言及もしやすくなり、実存的な問いも産んでいる。

何かと何かの組み合わせによるケミストリーが非常にうまくいった例
 
 
 
– Body3 キャラクターの2重性を強調する

ドッペルゲンガーはもう1人の自分というもの・・・俯瞰する主人公とも重なる部分がある。

ドッペルゲンガー症状は、遊離現象と捉えられていたこともある。

ゲーテは8年後の自分と見たということも行っている。元々ループ的なものと相性がいいのかもしれない。

もうひとりの自分「ドッペルゲンガー」の謎/世界ミステリー入門|webムー 世界の謎と不思議のニュース&考察コラム https://web-mu.jp/spiritual/572/

とにかく、ドッペルゲンガーは、自己の存在を危うくする。そのために、自分とは何かという実存の問いを突き付けられることになる。

オリジナルとコピーに違いはあるのかという問いは作中でも随所に投げかけられる。主人とともに戦うヒロインの潮は影だが、本物の潮として主人公は感じてそのように振舞う、死んだ大切な人が影になって生きていてくれたら、それは救済ともなるだろう。

人の裏と表、あるいは二重人格、ひづると竜之介、ハイネとヒルコ、かりきりと巌など、二重性を巧みに物語に取り込んでいる。
 
 
– Concl

ラブロマンスと人の絆を時空を超えて繋げていく、見事に回帰する、愛の奇蹟の物語として最後は結実するのも見事。
 
 
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 メモ終わり。物語の組み立て方とかとても勉強になる作品です。マンガもアニメもとても良い出来なので、是非御覧くださいね。
 
 
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