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Netflixの収支から見るストリーミングビジネスの難しさ

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今週、Netflixの2011年の第4四半期の収支報告がありました。2011年はNetflixにとって厄年みたいな年で、戦略の失敗でいろいろと迷走してしまった感がありますね。
pcE11より。デジタルの時代の教訓。Netflixの失敗から何を学ぶか

でもフタを開けてみるとアナリストの予想よりも良い業績で相変わらずの好調のよう。全体の業績としてはそうした経営の迷走をあったものの、このNetflixの提供するサービスへの高いニーズが相変わらずといった感じですか。

同社はウォール街予測の1株当たり0.54ドル、売上高8.57億ドルを上回り、1株当たり0.73ドル、売上高8.76億ドル(前年同期比47%増)を達成した。


さらに、DVDレンタル会員数とストリーミング会員の比率なんですが、ストリーミング会員数2千176万人に対し、DVD会員数は1千117万会員とストリーミング会員が約2倍となっています。DVD会員数は減少傾向、対してストリーミング会員数は増加傾向にあります。全体の会員数は昨年末と比較すると約22万会員の増加です。2011年は同社にとっていろいろありましたが順調に成長傾向にあるみたいですね。

Q4 11 Financials Statements

Netflix streaming users now outnumber DVD subscribers 2:1

http://techcrunch.com/より転載

でも、Netflixの展開する2サービスの利益率を見るとこの事業の難しさが見えてきます。
ストリーミングサービスの利益率はDVDレンタルのサービスと比較するとかなり低いんですね。DVDレンタルの利益率は52.4%(貢献利益、$193,765,000/レベニュー、$370,253,000 = 0.523)に対してストリーミングはわずか11%しかない。(貢献利益、$52,110,000/レベニュー、$467,334,000 = 0.109)

DVDのが全然効率よく儲かってるんですね。。。

さらに1会員あたりからの利益を計算すると、1四半期でストリーミングがわずか$2.40(貢献利益、$52,110,000/会員数、21,671,000 = 2.40)に対して、DVDは$17.32(貢献利益、$193,765,000/会員数、11,165,000 = 17.35)

これはなかなか衝撃的な数字ですね。四半期(三ヶ月)で1ユーザーあたりからストリーミングはたったの2ドル40セントしか利益をだせていない。一人あたりどれくらいの映画を見ているかのデータを見つけることができないのですが、Netflixのトラフィックは北米のインターネットのトラフィック最大の占有率ですから、みんな結構な量見てるんだと思うんですよね。

Netflixが単独一社で北米インターネット(下り)トラフィックの1/3近くを占める

これは要するに、DVD会員数は減少傾向にあるので、その利益減をストリーミング会員数を増加させることで埋めなければいけないわけですが、DVD会員が一人減った分を補うのに五人のストリーミング会員が必要になるということです。

この定額見放題サービス、1会員からそれだけの利益しか出せないのなら、コンテンツを製作している側にはどれくらいお金が入ってくるんでしょうね。。。

ここまで利益率を落としてまで、ストリーミングを推進するのは、それが時代の要請だからなんでしょうけど、DVD時代と同じ利益を確保しようと思えば、国内だけでは無理なので必然的に海外展開を力を入れることになります。実際、すでにイギリスとアイルランド、中南米でも展開を開始しています。安価で便利なサービスなので、他国でも当然受け入られる可能性は高いでしょうし、その他の国にもどんどん積極展開していくんでしょう。

この薄利多売な商売はアマゾンとも似ていますが、問題というか、気になるのは、Netflixやアマゾンのような巨大プラットフォーム以外は勝者になれるのか、ってことですね。アマゾンも定額ストリーミングサービスを去年から初めていますし、イギリスで定額ストリーミング事業を展開するLovefilmを買収しています。この2社がドンドン海外展開していったら、他のオンデマンドサービスを軒並み駆逐してしまう可能性があります。勝者の数は減らざるを得ないです。

また配給の独占状態になる懸念もあります。そうすると作品の権利も安く買いたたかれる可能性も出てくるので、ますますクリエイターの利益がどうなるんだ、という心配もあります。

映画館上映後の2次利用先が、こうした安価なサービス以外に無いとなると、ホントに映画製作側の利益は先細る一方になってきますね。機材のデジタル化で製作コストは下がる傾向にあるとは云え、機材以外の部分では映画製作にはまだまだ大金が必要です。ロケ地借りる金額が、デジタル化で安くなるわけないし、スタッフ・キャストを長期拘束する必要もありますし。

それでも、制作側はこの時代の変化に対応していかざるを得ませんけど。

ユーザーの便益をはかりつつ、クリエイターの利益も確保するというのはホントに難しいですね。