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次代を生き抜くためのサンライズのコンテンツ活用戦略

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3/1に東京都知的財産総合センターが主催するシンンポジウム、「コンテンツ産業向け知的財産フォーラム~サンライズのコンテンツ活用戦略~」に参加してきました。
アニメは日本のコンテンツ産業の中核を成す存在で、その中でもサンライズはガンダムシリーズを擁する上、オリジナルコンテンツを多く世に排出するプロダクションとして僕は尊敬していまして、そのエグゼクティブプロデューサーの宮河泰夫氏のお話を聞けるということで参加してきたわけですが、期待通りに貴重なお話がたくさん聞けました。

宮河氏の講演の内容は、ガンダムユニコーンのとTIGER&BUNNYのウィンドウとメディア戦略。両作品ともユニークな配信展開と販売戦略で今後のTV・コンテンツビジネスのあり方に一石を投じた作品です。
これからのコンテンツ戦略を考える上で最も大きなファクターは、当然ネットの使い方、つきあい方なわけですが、その点に関しても、宮川氏は先見的な考えの持ち主で、参考になりました。知財に関することだけでなく、非常に幅広いお話を聞くことができました。

ガンダムユニコーンのウィンドウ戦略
まず、ウィンドウについて説明しておきます。通常、作品が劇場公開されたら、その後DVD/ブルーレイにて販売されるのは数ヶ月の間隔を置いてからになります。その後、さらに間隔を置いてテレビで放映されたりします。ウィンドウとはこの時間的間隔のことです。劇場販売、パッケージ販売を阻害しないためにそれぞれ間を置いてリリースするのが業界上の慣習となっています。別にこれは技術上の問題でも法的拘束力があるわけでもなく、単なる慣習です。特に数字的根拠があるわけでもなく、その方が売り上げが上がるだろうという目算からできた慣習です。

宮河氏は、ガンダムユニコーンを映像化が決まった際にこのウィンドウを無くしたいと考えました。劇場公開と同時にパッケージ販売もネット配信も同時にスタートさせたいと考えたのです。
なぜなら、その作品をパッケージとして所有したいという願望はその作品を観た直後が一番強いと考えたからです。ウィンドウによって間を置いてしまうともう人の興味が他に写ってしまい所有欲が減退してしまう、ネット配信も数ヶ月後にスタートしてもそれ自体が話題を生むことはない。何より作品が公開している劇場でDVD/ブルーレイを置きたかったと宮河氏はおっしゃっていました。確かにたった今体験した感動をそのまま、家に持ち帰れるというのは、ファンならとても嬉しいことですね。

ガンダムユニコーンではこれを実践し、映画館で2週間全国約10館で公開と同時に、劇場内で限定版DVD/ブルーレイを販売、通常版も同日に販売開始、ネット配信も同日スタート。現在までシリーズ4話までが公開されています。
この業界を常識を破るウィンドウ展開は結果的には成功し、初回出荷枚数が限定版ブルーレイ1万2千枚、限定版DVD6万8千枚、通常版と会わせて21万5千枚という数字を記録。劇場の動員も回を重ねるごとに増加し、累計7万人以上の動員を達成。小規模の限定公開としてはかなりの数字ですね。DVDやネットでエピソード1を観て、次回以降は劇場に足を運んだお客さんがたくさんいたということでしょうね。
ネット配信も同時に行い、口コミを加速させ、お客さんの足を劇場に運ばせ、そこでの感動体験をパッケージ所有欲へと向けさせるという好循環を、業界の慣習だったウィンドウを無くすことで実現しています。ちなみみネット配信は4作累計で約7万ダウンロードだそうです。

これは非常に優れた戦略だと思います。導線の一つとしてネット配信も同時に走らせておく。これによって違法アップロードもたくさん生まれるかもしれないけど、それすら導線になり得る。そして「特別な視聴体験」とである劇場へと向かわせ、そこで得たネットでは共有不能な感動体験がパッケージの購買意欲を掻き立てる。インターネットの登場で(違法配信も含めて)視聴するだけなら多様な方法がある今は、単純に見るためだけにパッケージを買う人は少ない。むしろ所有欲を満たすために購入するパターンが多くなってきているということを宮河氏はちゃんとわかっているのですね。そして共有不能な体験にこそコンテンツを消費させる鍵があるというここともきちんと心得ていますね。音楽業界をみてもライブやフェスがこれほど盛りあがっているのはカンタンに共有できない体験に価値を感じる人が多いということですから。
これを映像に当てはめるとやはり一番近いの劇場公開ということになるんでしょう。日本でもロカルノ映画祭クラスの大規模な野外上映なんかができるようになったらもっと面白いだろうなあ、なんて思ったりするんですが。
インターネット次代のコンテンツ配信のあり方について一つのメジャーな形になってもおかしくないな、と思いますね。

TIGER&BUNNYのメディア戦略
TIGER&BUNNY(通称タイバニ)もまたユニークな試みで話題になった作品です。
1つはキャラクタープレイスメント。番組単体だけではなく、登場するキャラごとにスポンサーを公募し、主要キャラの胸などに実際の企業ロゴ(Softbank、Amazon、DMM、牛角などが参加)が入るという斬新な広告手法を採用。Softbankとか牛角とか書いてあるキャラがアニメ内で戦うというのも絵的にすごい面白いんですが、でもやはり色々と苦労もあったようで。スポンサーの方から「ウチのロゴ背負ったキャラが人殴ったり、ロゴが潰れて歪んだりしないよね?」みたいな心配もされたらしいです。
ですが、これなら違法アップロードでも何でも露出が増えれば増えるほど企業側はありがたいわけですね。実際もう一つのユニークな試みである、テレビ放送と同時にUST配信というのもこのキャラクタープレイスメントとセットで考えると合理的に思えてきます。
このテレビ番組は関西ローカルの番組ですが、同時にUST配信も行うことで全国区の人気を獲得することに成功しています。その他、BS
では一週間遅れのディレイ放送も実施し、見逃した視聴者のためのキャッチアップも可能にしています。ディレイ放送で第1話を見た人は、すぐに2話目をUSTで見ることができたんですね。これもまた上手い循環の作り方です。

こうした一人でも多くの人に見やすい体制作りの結果、初回放送時は視聴率2%、UST視聴者数約2千900だったものが、最終話には視聴率3.8%、UST視聴者数約9万3千を獲得。Twitterのハッシュタグのホットワード1位も獲得するという人気ぶり。さらに最終話は映画館でライブビューイングも実施し、共有不能な体験を創り、関連グッズの販売につなげています。
劇場版の製作も決定していますし、ローカル番組がネットの力をフル活用して全国区の人気を獲得した良い例でしょう。

ネット次代の知財戦略
知財戦略は、サンライズのようなコンテンツ会社にとっては肝となる部分です。自社の所有する著作権や商標権をしっかり守らないとコンテンツビジネスを成り立たないわけですが、単に違反者を厳しく罰し、割れ動画をバンバン取り締まれば儲かるというわけでもない。
宮河氏は、以前自作のアニメ作品がテレビで放送された後、どれくらいの早さで違法アップロードが世界中に出回るのかを調査したそうです。そして72時間以内には、世界60カ国に違法配信が出回るということがわかったそうです。
この結果で違法配信を取り締まることを考えるのは無駄だと悟った宮河氏は、コンテンツの原盤を守ることを考えるより、むしろいかに世界中で同時にビジネスを展開するかを考えるべきとの結論に達しました。違法アップロードがある、ということは逆に考えるとそこに潜在顧客が存在するということでもありますから、単につぶすのではなく、どうやったら取り込めるか考えた方が有意義だということですね。

実際、ガンダムユニコーンは、パッケージ販売を北米、フランス、イギリス、台湾、香港で日本と同時に開始、ネット配信は北米と欧州ではやはり日本と同日からスタートさせています。

ちなみに宮河氏は動画サイトへの違法配信は(あくまで個人的見解としてということですが)、客層を広げるうえで有効という見解をお持ちでした。ただ一方、それを使って利益を得ようとする者に対しては厳しく対処する、という姿勢ということです。(このへん、たとえば割れ動画リンクサイトなんかはどっちに該当するんだろう、というのは気になりましたが、質問タイムが無く聞けず)

インターネット次代のコンテンツ流通のあり方を考える上で非常に参考にあるお話をたくさん聞くことができました。講演の中の宮河氏の、本当に良いものしか売れない次代になってきたという言葉が印象的だったのですが、今後のコンテンツは、現在の多くのTV番組のようなこけおどしの中身のないものは決して売れず、しっかりと作り込んだモノが求められていくだろうということですね。
アニメにもOVAがありましたが、実写作品にもVシネというジャンルがあります。Vシネ作品は基本的には買わないと見れない作品が多くて、タイトルとパッケージの印象で購買させるという手法でしたが、そうしたやり方が通用しなくなったのは、何もみんながネットでだけでコンテンツを消費する次代になったというだけはじゃなく、内容を確認した上でお金を払うという習慣になりつつあるからじゃないでしょうか。Vシネは中身が貧弱でもタイトルとパッケージ写真のインパクトである程度売れてたんですけどそういうやり方はもう通用しないということですね。(まあ、その中から隠れた傑作を探し出すというマニア的な楽しみもあったんですが。)

本当に良い物を創り、今までの慣習に縛られず、しかるべき方法で配信してけってことですね。