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映画レビュー「アーティスト」

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最初に一言。

uggieoscar1
via goo ニュース

真の男優賞は犬だった。

人間の主役二人も十分素晴らしいんですが、犬の芝居が名演すぎます。CGじゃないんですか、あれ。

この映画は今の時代にモノクロ&サイレントという映画の最初期の形態を敢えて甦らせての表現に挑戦して話題になってるわけですが、むしろ動物の演技の限界にチャレンジしてる感があります。

それくら犬の演技は素晴らしかったです。犬クラスタ必見の作品です。

映画内容そのものは、王道を行くシンプルな物語です。
サイレント映画の大スターが、駆け出しの女優を見初めるが、トーキー映画の時代がやって来て立場は逆転。女優はチャンスをくれた男優を思い慕い、いろいろと助け舟を出すも、プライドが邪魔してしまうかつての大スター、しかし、最後ははれて二人の栄光の銀幕に返り咲く、という感じ。

サイレント映画なので、当然台詞は一切なし。表情と動作で全てを表現する。台詞のない映画に慣れていない方も多いかと思いますが、シンプルでわかりやすいストーリーなので、誰でも苦もなく見れます。

サイレントからトーキーへの移り変わりを題材にした作品には他に往年のミュージカルの名作「雨に唄えば」などがありますが、あちらの映画では、声のもたらす変化を大きく取り上げた作品でした。サイレント時代には発音が下手でも、変な金切り声でも大スターになれたんですが、トーキーではそうはいかなくなりました。でヒロインがサイレント時代の女優の吹き替えをやらされるんですね。そして声を出せるということは唄えるということなので、ミュージカル映画を製作することを思いつきます。トーキーという技術の発展によって作品制作に求められる資質や、製作可能な作品が増えたことを描いていました。

この作品はサイレントなので、その辺はあまり描かれてないですね。映画ファンなら知っとるやろ、それぐらいのこと、という前提に立ってるんでしょうか。まあ、実際僕なんかはそういう歴史を踏まえているので、普通に見れますけど、そういうでない方の場合、どんな風に見えるんでしょうか。

そういう細部のいろいろ甘い部分はあるんですが、飽きずに見れる作品です。主役2人と1匹のパフォーマンスは素晴らしいですし、鏡を多様した演出がダグラス・サークを思わせたり(そう感じたのは僕だけかもしれないが)、タップダンスの得意なサイレント映画の伊達男ってまんま「雨に唄えば」みたいだな、とか思えたりして楽しめました。

ノスタルジーに包まれた良作ですので、オスカー受賞を巡る戦略とか書くのも無粋かなあ、なんて思ってしまったりもするので、見て楽しんでそれでいいかな、という気分です。上質な娯楽映画ですね。老若男女楽しめる仕上がりになってます。

オスカーを巡る広報戦略やら裏の駆け引きめいた話はこちらのブログが触れています。
無粋とは思いつつも一応貼っておきます。
仏映画『アーティスト』アカデミー賞の秘密

 

ただ一点思うことは、トーキーという新技術は大衆の支持を受けて定着したんだ、というところが読みとれる点。翻って今の3D映画はどうなんだろ、ってことは考えちゃいますね。大衆の支持を受けているんだがいないんだか何とも微妙な立ち位置です。
一つ前のエントリーで3Dの「Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」を絶賛して3Dの可能性について前向きに書きましたけど、トーキーやカラーほどわかりやすい訴求力じゃないんですよね、3Dって。

2Dも3Dもそれぞれ味があるってことがわかってきたので上手い事共存していってくれればいいな、と思いますね。というかサイレントにもサイレントにしかない味わいがあるというのがやはりわかったので、古いと切り捨てずに、これも改めて定着してもらいたいですね。演劇や音楽は古い様式も現代の新しいジャンルも共存してるんだし。

画面サイズもヴィスタとシネマスコープだけじゃなくてもっと多様になれば面白いと思うんですよね。

そういえば、上映前の予告編でアレクサンドル・ソクーロフのファウストがあったけど、画面サイズがスタンダードサイズだったな。ソクーロフはチャレンジャーだなあ。

予告編

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