前回のエントリーで、イギリスのリアリティ番組におけるソーシャルメディアの活用例を紹介しましたが、今回はアメリカの例を見てみたいと思います。
プロダクトプレイスメントを用いた番組は日本でも増えていますが、アメリカでもそれは同様。特に最近のテレビのリアリティ番組にはプロダクトプレイスメントが多すぎると感じている人も多いかもしれません。視聴率をベースにしたCM料はやはりアメリカでも日本と同様、現象傾向にあり、新たな収入源探しに放送局もやっきになっているわけでそんなことになっているわけですが。
しかし、そうしたプロダクトプレイスメントを生かして新しい試みをしている番組もあります。ネットと番組を上手く連動させて、ネットで人気ある人物をショーに抜擢して番組作りに工夫を持ち込んでいる番組もあります。
メインスポンサーがFordで、iJusticeというモバイルオンライン系の会社に協賛されているEscape Route http://www.escaperoutes.com/ という番組は、6つのペアが様々なチャレンジの中で競い合うというリアリティ番組ですが、この番組ではオーディエンスは単に出場者と交流できるだけでなく、公式サイトを通じてバーチャルチームのメンバーとなって競技に参加することができます。時に視聴者を巻き込んだゲームも用意されていて、オーディエンスは応援するペアをネットを通じて助けることもあります。
番組の最初のエピソードでは、6つのペアを紹介し、ビジュアルで識別しやすいようにそれぞれを色分けされる。この6つの中で白のチームは、ネット上では「#チームYouTube」として知られるようになりました。というのも、白チームの2人、Brett LemickとRoss Everettは、YouTubeでは BrettTheInternとTheRossEverettというYouTubeアカウントで知られていて、有名なYouTuberなんですね。彼らはMaker Studios‘s network of channelsというYouTubeのタレント会社に所属しています。
最初からネット上ではちょっとした有名人だった彼らは、オンラインでのバーチャルチーム作りで他の出場者たちに差をつけます。2人は自身のYouTubeチャンネルなどを駆使してフォロワーの人たちにこのショーでも自分たちをフォローするよう、呼びかけました。あらかじめネット上で大きなプレゼンスを持っていた彼らはバーチャルチームを築き上げるのが他のチームに比べてかなり速かったということです。
ShayCarlのような他のYouTuberたちも彼らをサポートし、LemickとEverettの2人はこのレースを有利に進めました。最終エピソード夜、結果として彼らは2位だったそうですが、その前の週まではトップでした。しかし、公式サイトでの彼らをフォローした数は8400人を超えていて、ファンの数ではダントツのトップ。2番目に多いDrewとDerekの兄弟ミュージシャンは4200人ですから、2位に2倍のファン数を獲得しています。
ビジュアル的にはどう見ても不利に見えるYouTubeペアですが(笑)、ネット上でのエンゲージメント作りが上手いんでしょうね。
これは非常に視聴率以外の重要な指標にもなっていて、このYouTubeペアはそれだけ多くの人を公式サイトに誘導したことになります。公式サイトにもこの番組のプロダクトプレイスメントの商品である、Ford Escapeの広告とリンクが貼られているのですが、テレビのCM以外の導線として公式サイトも非常に重要なものになっています。
公式サイトへのトラフィック誘導、という点ではイケメンミュージシャン兄弟よりもヤセと太っちょのYouTubeコンビの方が貢献してたわけです(笑)
上がミュージシャン兄弟、下がYouTubeコンピ。下の方が上の2人に比べて2倍ファンが多いんです。
ちなみに6チームのビジュアルを並べた写真がこちら。どうみても一番いけてないのは右下のYouTubeコンピ(笑)
こうした試みの背景としては企業がスポンサードする際に広告としての効果の指標として重要視するものが視聴率から公式サイトへのトラフィックとそこから示自社製品サイトへどれだけ誘導できたかを重視するようになってきた、ということがあります。
さらに番組とサイトでのファンとの交流と通じて作られたエンゲージメントがスポンサー製品へのエンゲージメントとして発展していくことができればさらに成功。たんにマスをターゲットにCMを見せるだけではマーケティングとして不十分な時代になってきたんでしょうね。マスの代表であるテレビですらそうであると。
プロダクトプレイスメントという手法の是非は、いろいろとあるとは思いますが、こうした番組とインターネットの連携、さらにはソーシャルメディアをつかって出演者と視聴者を繋げる試みは面白いですね。
リアリティ番組は今後こういう形が増えてくるでしょう。
そうなると出演者のキャスティングの傾向が変わるでしょう。有名なタレントさんを出演させればいいというわけであく、インターネット上でプレゼンスが高く、ソーシャルメディアを駆使して広くコミュニケーションできる人材がこうしてテレビ番組で活躍する機会が増えるかもしれません。
ソース:
YouTubers bring audience to Ford-sponsored NBC reality series
Escape Route