ポップテントとは、アメリカの映像クリエイター専門のソーシャルネットワークサイトで、映画監督やライター、カメラマンや俳優など、約5万人が登録している、オンラインコミュニティです。
LAタイムスでは、このポップテントをクラウドソーシングの映像プロダクションと紹介していて、このサイトが登録者に提供するサービスは、単なるソーシャルネットワークによるユーザー同士の交流だけではありません。
このサイトでは企業が自社製品のCMの製作を応募することができます。そしてこのサイトの登録者は自分で応募のあった企業CM募集の中から好きな企画をピックアップしてCMを製作します。
企業は多数の応募の中から最も良いものを選び、その制作者に報酬を支払う、というマッチングシステムを提供しています。
クラウドソーシングのような機能も備えているわけですね。
簡単にまとめるとこんなことができるサイトです。
・5万人の映像クリエイター、コミュニティでネットワーク作りができる
・企業はそのコミュニティ上で自社製品のCMの応募ができる。
・ユーザーは、自由にその応募に対して作品を作ってエントリーできる
・自分の作品をアップロードしたり、レジュメを公開したりしてネット上のポートフォリオを作成できる。
さて、クリエイターと企業にとってどんなメリットがあるサービスでしょうか。
具体例を参照しつつ見てみましょう。
上記のLAタイムスの紹介から引用します。
Build-a-Bear Workshopというぬいぐるみのブランドがあります。
このブランドのSmall Frysという動物のぬいぐるみのシリーズがあるんですが、そのCMがこちら。
http://www.poptent.net/media/40549
このCMは、既存の広告代理店を通じて製作されたのではなく、ポップテントへのCM製作依頼の応募によって選出されたCM。
ファストフードのドライブスルーでフルーツカップを勧めるお母さんを遮り、子供がこのぬいぐるみを勝手にオーダーして、あまりのかわいさにお母さんもメロメロ、みたいな内容です。
このCMを製作したjaredciconさんは、この一本のビデオで、7500ドルの報酬を手にしました。
他にも同じSmall Frysのエントリーでこんなのもありますね。こちらも7500ドルにて企業に購入されました。
http://www.poptent.net/share/vep/3
他にもこちらで主な優秀エントリーが見れます。
http://www.poptent.net/assignment/275#tab=results
このポップテントで製作依頼するのは、従来の広告代理店方式と何が違うかというと、企業は出来上がりの作品を見て判断できるわけです。しかも1つや2つのパターンではなく、20、30の別のクリエイターが作ったものを比較できる。
しかもコストが安い。ポップテントはマネージメント料として4万ドルを請求しており、LAタイムスの記事では、従来のCM製作方式の10分の1程度とのことです。
時間的なコストも削減されます。今までは、一本のCMが出来るまでは、コンセプトを詰め、本・絵コンテを作り、というプロセスを綿密に行ってきましが、このポップテントの場合、企業側の行うことは、クリエイティブブリーフと呼ばれるブランドのコンセプトと概要を示し、ブランドロゴなどの素材を用意するだけ。素材はエントリー希望者のみ以下のようにダウンロードできます。
後はSubmitされてくる作品を見ていいものを選ぶだけです。
どんな企業はこのサービスを利用しているのか、見てみましたがけっこう有名企業も利用していますね。
不動産のセンチュリー21、American Express、ライターのZippoとか、P&Gやピザ・ハット、航空会社もありますね。LAドジャーズまでありました。
どの企業も主にネット用のCM作成を依頼しているようですね。テレビ用スポットと違い大きな予算をかけられない企画をここで募集している感じでしょうか。
ちなみにドジャーズのはこんなCMがエントリーされていました。
http://www.poptent.net/share/vew/3
クリエイター側にとってこのサービスは、クリエイター仲間を募るだけでなく、直接報酬を受け取れる仕事に自らエントリーできる、というところにあります。キャリアも年齢も一切関係ありません。
このチャンスを上手くモノにしたのが、LAにある私立大学、チャップマン大学を卒業したMike Bernstein氏。
彼はこのポップテントで24時間営業のドラッグストア、WalgreensのCMを製作しました。
彼が25歳の時に製作したビデオは多数の応募の中から選ばれ、めでたく報酬を手にしたのですが、このCMの出来を気に入ったWalgreensは彼にテレビ用のCMも作ってほしいというオファーをだしたそうです。
そのCMがこちら。
ネットで注文し、店頭で受け取れるサービスのCMですが、いかつい男が奥さんのタンポンを買わないといけなくなってしまい、このオンライン注文をして受け取るまでを、ユーモラスに描いています。
しかもこのCM、シカゴのローカルTVのテリー賞にノミネートされています。賞を受賞すればこの制作者にはさらなる仕事の依頼が入って来るでしょうね。
長編映画を撮るのが夢だ、と語るBernstein氏ですが、こうした新しい才能がきちんと報酬をもらえる形で才能を発揮できる環境を、ポップテントは新たに創出したわけですね。
単にソーシャルネットワークとして使ってもいいし、自分の作品をアップロードしてアピールに使ってもオーケー。積極的にCM製作にエントリーして見るのもオーケー。エントリーする際に仲間をここで募って共同作業するも良し。いろんな使い方が出来るサービスですね。
CM製作のプランニングの新しい形になり得るかな、と思い紹介してみました。
ポップテントそのもののCMはこちら。
これもユーザーによって作成されたものです。
参照:
・Poptent’s amateurs sell cheap commercials to big brands – LA Times
・Poptent Official Site