テレビは生き残れるのかの著者で、メディアストラテジストの境治氏が、今年4月に立ち上げたソーシャルテレビ推進会議の公式サイト、「ソーシャルテレビラボ」が公開されました。
この組織、というか有志の集まりなのですが、を立ち上げて経緯については境さんのこちらのエントリーを読んでいただくといいかと思います。
このソーシャルテレビ推進会議、メンバーの方はテレビ業界の中の人たちで構成された、今後テレビ事業の変化の一端を担うソーシャルメディア時代のテレビの在り方を考え、建設的な提言を行っていくことを目的とした組織で、なぜか僕も参加させていただいております。
まあ、海外事例に詳しい、という一点で参加が認められたような感じですが。
ソーシャルテレビ推進会議の目的を公式サイトから引用すると、
・放送と通信、マスメディアとインターネットの融合の具体としてソーシャルテレビを日本で推進し、活性化させることを大目的とする。
・ソーシャルテレビの推進に興味を持つ者同士で交流し意見交換する。
・具現化にあたり必要な事柄を議論して整理し、共有する。
・社会に対して、もしくは業界や企業に対して提言するなどの形で、具体的な影響力を発揮する。
となっています。
もう少し広げていうと、ポストマスメディア時代のテレビのあり方を模索する団体といった趣きでしょうか。
そして、提言などを通じて、実際に日本のテレビ業界を変えてやろう、という野心も密かに持っておるのです。
ソーシャル、という単語がついている通り、これもある種の草の根の活動ではありますが、草の根も馬鹿にできない時代になりましたからね。
さて、新たに公開したばかりのソーシャルテレビラボの構成についてご説明します。
サイトは以下のURLになります。
http://socialtv-lab.org
現在は主に3つのコンテンツで構成されています。
・ソーシャルテレビ最前線。。。参加者によるブログエントリーです。拙ブログのエントリーもこちらに転載されております。他には、代表の境治氏のブログと、TBSメディア総研の代表取締役社長である氏家夏彦氏が主催するあやとりブログがあります。
僕は、おそらく海外の事例を紹介する役回りになるでしょう。
・ソーシャルテレビデータ。。。テレビ関連のスマートフォンアプリ、TuneTV、みるぞう、ピーチク、テレビジンの各アプリで話題となったテレビ番組のランキングやデータの公開。
今後、このデータコーナーはいろいろと充実していくと思います。
まだサイトが立ち上がったばかりなので、各アプリ内で人気のあった番組のランキングをテキストでお届けするにが中心となっていますが、今後は定量的なグラフなんかも公開できたらいいですね。
こうしてソーシャルメディア上で盛り上がる番組というのは、視聴率とは違う傾向が見て取れることもあり、面白いかなと思います。
・インフォメーション。。。公開イベントを行う際はここでお知らせいたします。
そしてソーシャルテレビ推進会議では、毎月会合を開き、参加者のプレゼンを叩き台に議論をしているのですが、5月は僕もプレゼンさせていただきました。素人の個人ブロガーが、放送局の中の人に向けて、ソーシャルテレビとはなんぞやをプレゼンするというね。。。いやあ、緊張しましたね。しかも当日熱あってユンケル飲みまくってましたが。
僕のプレゼンの主旨は、
・ソーシャルメディアにはweb2.0から派生した強力な定義が存在した。ソーシャルテレビもなんとなく推し進めるのではなく、きちんと定義して方向性を示した方がいいのではないか。
・コンテンツの需要のされ方は、テレビ全盛時代と大きく変わった。具体的にはストック型コンテンツ⇔フロー型コンテンツ、参加性⇔権威性とに分類される。
テレビのビジネスモデルはフロー型を前提にしており、同じフロー型のツイッターやフェイスブックとは相性はよい。
しかし、ソーシャルサービスとの連携を考える際にはコンテンツのストックをどう生かすのかも考えていかなければいけない。日々大量に製作される作品と過去の膨大なアーカイブを生かす術を見つけ、ストックコンテンツにもソーシャルメディアとの連携によって、新たな価値を生み出す仕組みもまた必要ではないか。
そして、テレビは元々権威性のある、視聴者の参加する余地は少ないメディアであったが、ソーシャルメディアとの連携においてどの程度、あるいはどうやって参加性を作り出すべきか。
(ストック⇔フロー、参加性⇔権威性のお話は田端信太郎さんのこちらの記事を参考にお話させていただきました)
まとめると、元々テレビはフロー型でのみコンテンツを提供するメディアであったが、ソーシャルメディアが大きな変革をテレビの世界にももたらすとすれば、今までのフロー型のコンテンツ提供のみでなく、(ソーシャルメディアがそうであるように)ストック型のコンテンツも包括するような仕組みを考えるべき、ということです。
ツイッターやフェイスブック、さらにはUSTなどを利用したテレビ番組がいくつか出てきました。日本テレビはJoiNTVというフェイスブックをデータ放送と連携させ、テレビ画面上に番組とフェイスブックフィードを表示させる技術を開発しています。
これらの試みは従来のテレビ局のやり方であるタイムテーブルに合わせてリアルタイムにコンテンツを視聴してもらうスタイルを補強する上で大変有効な手段であると思います。
が、現在のネットが支配するアーキテクチャの中では、人の行動は必ずしもリアルタイムに束縛されず、ウェブ上でのコンテンツの需要のされ方は、ウェブ上にストックされた情報を検索で発見する形もあれば、ソーシャルメディアで話題になり発見するという形もあったり、様々な形があるので、テレビもそれに合わせていく必要があります。現代の人間の行動や生活習慣を規定しているアーキテクチャはテレビではなく、インターネットになりつつありますから。
もちろん、リアルタイムで見る価値のあるコンテンツはこれからもなくなりはしないでしょう。
しかし、ツイッターやFBのようなフロー型でコンテンツを配信するネットサービスが、未来永劫流行していくかどうかは誰にもわかりません。もしかしたら過剰なリアルタイム性の追求がどこかでバックラッシュを起こす可能性も、個人的にはあると思ってます。
ソーシャルテレビという言葉自体、まだバズワードにもなっておらず、Wikipediaにもページが無いくらい、マイナーなものですが、テレビ業界というメディア産業のこれからを考える上で外せない概念になると思っています。
まだ漠然とした概念で、具体的な手法など(テレビ画面へのオーバーレイが有効なのか、セカンドスクリーンなのかetc)も含め試行錯誤が続く中で、より良い方向性をこのソーシャルテレビラボで示していければいいな、と思っております。
当ブログをお読みの方には、合わせてソーシャルテレビラボもご愛読いただければ、と思います。
よろしくお願いいたします。