photo credit: Chris Devers via photo pin cc
すでに周知の事実かと思いますが、違法ダウンロードに刑事罰をつける著作権法の改正案が今国会で成立いたしました。
違法と知りつつ、コンテンツをダウンロードした場合、懲役2年以下または200万円以下の罰金が科されることとなります。「違法」と知りつつをどう立証するのか、またなにが違法であるのかをどう知るのか、ダウンロードを対象として改正が成されたわけですが、YouTubeなどの一部のストリーミング配信はプログレッシブダウンロードを採用しており、これは対象なのか否か、などなど細かい問題を挙げるとキリがないという、非常に問題ある法改正が成立してしまいました。
合わせてリッピングの違法化も決定してしましました。こちらは罰則こそありませんが、ごく私的に利用する場合でもアクセスコントロール機能を破る行為をすれば違法となってしまいます。DVDをリッピングしてスマートフォンやiPadで見るのはもうできないわけですね。MAD動画なども作れなくなるってことでしょうね。
現在の文化活動、新しい表現がどのように生まれるか、そして著作権法の理念に照らし合わせて考えればこれがいかにトンデモ改正なのかは、懸命な方にはすぐわかるのですが、このような法改正がまかり通ってしまうのはなぜかと云うと、まともでない議員がいる、ということであり、わかっていながら公共の利益に反してでも自分らの権益を守ろうとする輩がいる、ということであり、そうした連中にあっさりやられてしまう反対派の未熟さでもあるのかもしれません。みなさん本当に懸命に頑張ってくれたの思いますが、きっともう正攻法のやり方ではダメなんでしょうね。
一般ユーザーがこれからすべきこと
さて僕ら一般ユーザーはこれからどんなことに気をつければいいでしょうか。
どれだけ気をつけてもネット上には悪意がありますから、例えばbitlyなどの短縮URLリンクを踏んだ途端、違法にアップされたコンテンツがダウンロード始まってしまったりしても、それに対して「故意」でないことを証明するのはかなり大変でしょう。
当然訴訟側に「違法としりつつ故意」であることの立証責任があるんでしょうが、だれもが納得できる正当な理屈なんてあり得るんでしょうか。
そして個人の特定方法はIPアドレスをたよりにアクセス元を割り出して、家宅捜索するんでしょうけど、でもだれかが勝手に僕のPCで知らないうちにダウンロードすることもあるかもしれないからなあ。
ノマドワーカーの人は気をつけてくださいね。トイレに行く時、席にPC放置しておくとその間にだれかが違法ダウンロードするかもしれませんので、トイレにノートパソコンを持っていくように心がけましょう。多少PCが臭くなったり下痢が飛び散って茶色いものが付着するかもしれませんけど、知らない間に犯罪者になるよりはマシでしょう。
そうした方々と隣り合って、宿題に集中したいのに悪臭がするな、と思っても我慢してあげてください。知らない間に犯罪者になるわけにはいかないので。
ノマドの話は半分冗談ですが、そういう可能性がある、ということです。PCの所有者がイコール操作者ではないわけですから。
普段のネットライフから防衛を考えるのも大事ですが、僕ら一般ユーザーが一番考えないといけないのは、著作権団体らが、不当にこの法律を行使しないかどうか、きちんとウォッチしていくことだと思います。
今のところ、著作権は「親告罪」であり、権利者の申し立てがなければ犯罪となることはありません。
今回の法改正はクレイジーであるわけですが、権利者がまっとうに振る舞ってくれれば直接の脅威にはなりません。(もちろん、刑事罰がついただけで抑止効果てきめんなので間接的にはいろいろな問題がでますが)
権利者の方々に今の感覚にあった「真っ当な感覚」で振る舞ってもらうためにはどうしたらいいか。
具体的に決定的に効果的な行動があるともあまり思えないのですが、消費者としては消費行動でこれを示すしかないかな、と思います。
なるべくCD購入しないというのも明確な消費としての意思表示になると思います。最近はiTunesのラインナップも充実してきました。
僕個人はもうCDもDVDもブルーレイも買わないでしょう。オンデマンドと映画館があれば大丈夫です。
そして、自分たちの音楽を巡るライフスタイルがどうなっているのか、地味でもそれを表現し続けること。数ヶ月前に一枚だけCDを買いましたが、すげえ面倒だな、と思いましたね。そのCDのケースを開けたのってMacに取り込む際の一回だけなんですよね。あとはiPhoneとiPadで聞いちゃってるし。最初の一回の行動にどれだけ意味があるのかっていうね。
そして具体的な事例として、違法ダウンロードでの訴訟などが万一起こった場合、きちんとそれに対する非難の声を上げることぐらいでしょうか。
リッピングに対しても同様です。円盤でコンテンツを楽しむ、というのはすごくたくさんの制約があって、今スマートフォンやタブレット、クラウドの普及が何を意味してるかというと、コンテンツを楽しむ際に場所と時間、デバイスの制約を人はもう無条件には受け入れない、ということです。わかってる人はわかってるわけですけど、もっともっとこれを伝えないといかんですね。
制作者たちはどうすべきか
僕が多少関わる、映像産業の話を中心にしますが、映像産業にとってソフトの二次販売からの収入は大きなウェイトを占めており(特に映画やアニメは)、これの売り上げが年々下がっているのは本当に頭が痛いところです。しかしながら、これの売り上げが下がるのは明らかに時代の必然なので、リッピング規制したところで、益々利便性がさがるだけで売り上げ増加するとは思えません。というか逆効果でしょう。
僕からすると、死に体のソフト産業にトドメを刺したいようにしか思えません。
とにかく、もうソフトの二次販売収入をあてにはしないほうがいいでしょう。劇場用映画であれば一時収入の劇場公開のみで制作費回収可能な企画にますます注力するしかないかもしれません。(すなわち有名な「原作」ものか、テレビものとか。。。)
しかし、その劇場の興行市場も日本では縮小傾向にあるという感じもします。人口減るんだから当たり前ですが、シネコンの増加によってスクリーン数は増加傾向にありましたが、これ以上増えるかどうか。シネコンは郊外などのショッピングモールのような大型なショッピング地帯の「集客装置」としてたくさん作られたわけですが、飽和状態な感は否めず、1スクリーンあたり収入は減って来ています。シネコンのテナント契約は15〜20年単位で見直すのが一般的ですが、そろそろ初期シネコンは20年目になります。第一号のワーナーマイカル海老名店は、後からできたTOHOシネマズに完全に押されてる感じがしますが、どういう判断を下すんでしょう。来年がちょうど20年ですが。。。
大量の集客が見込めるメジャー映画もそうですが、インディーズ作品は今後益々厳しいでしょう。都内の単館で上映後、DVDなどのパッケージ販売で配給資金を回収というモデルは完全に破綻します。単純にDVDをオンデマンドにしても同じ収入は見込めません。オンデマンドの利益率はDVDと比べて本当に低いので。とはいえ、オンデマンド配信をやらない、というのは愚かな選択です。ユーザーに便益を計らなければもうお客さんはついてこないですから。
ソフトに代わる利益確保の手段の構築をしないといけません。オンデマンドだけでは不十分で、音楽の場合はライブに活路を見いだそうという動きがありますが、映画はまた別の道を模索しないといけないでしょう。韓国映画のように海外市場を積極的に切り開いていくしかないと思います。
しかし、実際には海外では日本映画のプレゼンスはどんどん弱くなっています。カンヌ映画祭のマーケットは通常、国としてブースを出したりするもので、今年は中国は金にモノ云わせてかなり大きなブースをだしてたようですが、日本は予算削減でブース出すの止めたらしいですよ、今年。
海外展開後押しする気ないんでしょうか。
個々の映像作家やスタッフの方達もソフト産業が立ち行かなくなることで、仕事量が減ることが予想されます。日本の映像産業のスタッフさん達を下支えしていたものの一つにオリジナルビデオ市場があります。Vシネ市場も終わってと云っていいでしょうし、アイドルのイメージビデオなどの仕事はこれからどうなるでしょう。そうした仕事を下請けのようにやっていくだけでは、もう食べていけなくなるでしょう。
映像作家も永川優樹さんのように個人の実力と戦略でブランディングを考えていく必要があるでしょう。
とにかく今回の法改正をパラダイムシフトと捉えてちょっとずつ変えていくという態度でなく、大きな方向転換を考えないといけないでしょう。メジャーもインディーズも個人も。
だって、ソフトの売り上げを落とすような法律ができちゃったんだもの。無理矢理にでも変わっていくしかないですよ。
今回の法改正で、ユーザーの心が音楽や映像コンテンツから離れてしまわないようにコンテンツ提供側は真剣に考えましょう。
そして、ユーザーは、コンテンツ提供側がユーザーを犯罪者ではなく、一緒に文化を作っていく仲間である、という「真っ当な感覚」を持ってもらうために声を挙げ続けましょう。
非親告罪化だけはなんとしても止めたいね。