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カンヌ映画祭へ初めて挑んだ若き映画監督、細井洋介氏へインタビュー。世界の市場に触れた実感とカンヌから見えたもの日本映画の今、米国で働くということ。

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先月カンヌ国際映画祭が開催されておりましたが、それに僕のアメリカ時代の友人である細井洋介(@Yosuke_Hosoi)君が自身の作品を持って参加していました。

細井洋介監督@カンヌ映画祭

彼はLAとNYの大学で映画制作を学び、現在卒業一年目ですが、自主制作として制作した短編映画、『Man of the House』がカンヌ映画祭のマーケット部門のショートフィルムに出品されるという、若いクセになかなかの快挙を成し遂げ、僕は嫉妬心で一杯なのですが(笑)、そんな気持ちを抑えカンヌ、そしてニューヨークで映画の仕事に従事する細井君にインタビューを行いました。

僕のカンヌに滞在した二週間で学んだこと、感じたこと、ニューヨークで映画の仕事をすることの大変さ、カンヌからチラリと見えた日本映画の現状などなど、いろいろと語ってもらいました。

グローバル感覚を磨くことの重要性はどこの業界でも盛んに云われるますが、日本と世界の実際の距離感のようなものをこのインタビューから感じ取っていただければ幸いです。


初めてのカンヌで体験したことは。。。
Hotaka(以下H):カンヌ国際映画祭は世界最大の映画祭と云われます。そのカンヌに実際に参加してみてどうでしたか?

細井洋介(以下Y):カンヌには二週間滞在したんですが、ずっと映画に囲まれているという感じで、今まで映画に関わって来た約八年間の中でも最高の気分といってもいいですね。世界中から一流の映画人と映画が集まってるわけですから。本当に楽しかったです。

H:実際にその一流の映画人たちに会うこともできたんですか?

Y:たくさんの方に会えましたが、中でもダルデンヌ兄弟アピチャッポン・ウィーラセタクン監督などとは実際にお話することもできました。今初長編映画の脚本を書いてるんですけど、ダルデンヌ監督からは、脚本に関するアドバイスなどを頂くことができました。僕はアメリカの映画学校で学んだこともあり、ハリウッド流の三幕構成の割と骨組みを作って組み立てるような書き方をしてしまうんですが、ダルデンヌ監督は、それに捕われずに書いたらいいんじゃないか、とアドバイスをくれました。具体的には、彼らは脚本を書く際にその現地に行って書く作業をしたり、実際に物語に出て来る小道具を触れながら書くそうです。例えば、少年と自転車の時は自転車にのって考えてみたりとか。
なるほど、リアリズムを重視する監督らしいな、と思いましたね。
ジャン・ピエール・ダルデンヌ(兄)監督と2ショット

H:実際に自分の映画を上映してみてどうでしたか?反応などは?

Y:まず僕の参加した部門はコンペなどがあるものではなくて、マーケットの中の短編を紹介するコーナーだったんです。なので注目作というわけでもないし、他の短編と併映なわけですから、とにかく映画祭期間中はたくさんの人に見に来てくれるようにいろんな人に声を変えていきました。まずはお客さんを集めないと話にならないと思ったので。カンヌにはバイヤーの人や、他の映画祭のプラグラマーなどもたくさん来ていますから、僕はとにかく映画祭のプログラマーの人を見つけては自分の作品を紹介して、作品を見に来てもらうようにしました。

結果、小さい箱でしたけど上映は満員になりましたし、反応も上々でした。実は早速、この映画祭で僕の作品を見てくれたウルグアイの国際映画祭のディレクターから上映したいとの連絡を最近もらいました。


カンヌ映画祭で上映された「Man of the House」のポスター

H:マーケットの小さな箱での上映とは言え、カンヌでの上映は狭き門だと思いますが、どうやってそこまでたどりついたんですか?

Y:いえ、実はそんなに難しくないですよ。もちろん、メインのコンペや監督週間、ある視点部門になると大変ですが、他にもホントにたくさんのカテゴリがありますから。僕は学生を対象にした部門にもエントリーしましたが、そっちはダメだったんです。でもマーケットのショートフィルムコーナーの方にひっかかりました。エントリーは全てウェブからできますし、英語版とフランス語版があるからどちらかの言語がわかればエントリー自体はそんなに難しくありません。僕の選ばれた部門は倍率10倍くらいって話ですけど。たくさんの部門があるからとにかく挑戦してみることだと思います。

カンヌで見えた世界の中で日本の置かれた立場
H:映画学校卒業1年目でカンヌに参加できるというのは、かなり貴重な経験だと思います。映画のトップの世界の一端にでも触れることができたのは大きな財産ですね。

Y:そうですね。いろいろ知見が広がるし、普段会えない人とも会えます。ダルデンヌ兄弟やアピチャッポン監督のような有名人だけじじゃなく、世界のバイヤーなどとも話したり、映画祭のディレクターなどと知り合えたり。いろんな映画祭があるから一概には云えないかもしれませんが、映画祭って現地に行って初めて参加したと云えるんだな、と思いました。ただ上映しました、というのでは実績にはなるけどそれだけじゃ次に繋がらない。

お会いした方にも後からキャッチアップの意味も含めてメールなどしてやり取りしています。そういう中からウルグアイの映画祭以外にも決まるといいんですけど。

そういえばフランスのテレビのバイヤーさんとお話する機会があったんですけど、フランスのテレビ局はけっこう短編映画の権利を購入するらしいです。テレビで短編映画って日本でもアメリカでもあまり見た事無いけど、短編映画の市場が他の国ならあったりもするんですね。フランスのテレビはわりと高く短編映画を購入するらしいです。大体相場は1分で500ユーロくらいと行っていました。10分の短編なら5000ユーロですから、短編映画ならそれでも制作費を十分回収可能だなと思いました。
僕もその話を聞くのが遅かったし、元々短編映画の権利を売る、という考えがなかったのでバイヤーさんよりも、映画祭の関係者に主に声をかけていたので、その話をしっていたらもっとカンヌでの2週間のネットワーク作りも変わってたかな、と思います。

H:なるほど、世界には探せば短編映画の市場もあるんですね。
ところで、日本の映画祭で上映する予定などはないんですか?普段NYに住んでるから、こういう場で日本の映画関係者ともコネクションを作ったりなどは?

Y:日本の色々な制作会社や配給会社の方たちとお話する機会もあり、今後に繋がりそうな良い出会いもありました。ただ、全体的に映画祭の中での日本映画界の存在感は希薄に感じてしまいました。海外のマーケットで売ろうとしているのにも関わらずそれを意識した映画が作られていないように思いました。マーケットには各企業や映画スタジオのブースの他、いろんな国が自国の映画を売り込むためにブースを出してるんですが、聞いたら日本は今年は予算削減とかでブース出してないらしくて。

今のところ、日本の映画祭での上映の予定はないです。エントリーしたいんですが、日本の映画祭はエントリーは手間がかかります。世界の映画祭はWithout a boxShort Film Depotという映画祭へエントリーするためのサイトがありますから、そのアカウントを取ればそのサイトから世界中の映画祭にエントリー可能です。スクリーナーもオンラインで提出できますし。でも日本の映画祭って中には未だに紙でしか受付していない映画祭が大半で、ウェブだけじゃエントリーできなかったりするんですよ。日本でも映画祭エントリーのための総合プラットフォームのようなサービスを作ってくれたら、海外の映画製作者も出品しやすくなり、自主映画などの競争もより活発になるんじゃないかな、と思います。

アメリカで映画の仕事をするということ
H:話は変わってこの映画の制作費はどうやって集めたんですか?

Y:個人で出してくれそうな人にプレゼンしてまず1000ドル頂くことができました。後はプロデューサーがパーティを開いてそこで寄付を募ったりもしました。それからIndie Go Goというクラウドファンディングを利用してオンラインでも一部資金を集めました。みんなの応援がありがたく感じました。結果、予算は約3000ドル集まりました。

H:アメリカで映画の仕事に就くのにあたって何が一番重要ですか?

Y:映画製作の知識・スキルは勿論必要ですが、やはりコミュニケーション能力ですね。せっかく現場に呼んでくれても、話ができない人間はまた一緒に仕事したいと思ってくれないですし。アメリカは世界で一番映画の盛んな国ですから、それだけスタッフの数も多い。はっきり言ってどれだけ努力したとしても、自分と同程度のスキルの人間は腐るほどいると思っていたほうがいい。そういう中で仕事を取れる人ってやはりコミュニケーション能力の高い人だと思います。

後は演出や脚本の仕事よりは技術職の方が仕事は得やすいですね。言葉の問題を超えやすいですから。

H:でも映画といえばハリウッドだと思いますけど、NY在住ですよね?なぜニューヨークなんですか?

Y:LAでも三年間活動してきたのですが、NYのが自分に合っていると感じます。好みの問題ですが、LAのハリウッド至上主義のような感じが個人的には合わなかったですね。LAと比べて国際色豊かなので異文化に対する寛容性もNYのが高いですし。そういう意味では仕事もしやすいです。小さな話をすると、例えばLAの撮影現場では僕の名前「Yosuke」を中々憶えてもらえなかったことが多いですが、NYならみんなちゃんと憶えてくれます。NYの人の方が普段から色んな国の人に接する機会が多いからだと思います。あと映画だけでなくファッションも好きなので、その映像を撮る仕事を得られる環境というのも実は僕にとっては大きいです。
案外映像関係の仕事はNYにもありますよ。数で云ったらLAの方が多いでしょうけど。

H:今アメリカでビザを取るのもかなり大変だと思いますが。

Y:大変ですね。年々厳しくなっているような気がしますけど。かくいう僕も今ビザ取得に向けていろいろ活動してます。弁護士には十中八九大丈夫だろう、と云われてますがとれるまでは気が抜けませんね。

H:カンヌでの実績はビザ取得にあたって役に立ちそうですか?

Y:そうですね。わかりやすい実績があるとないでは大きな違いがあるようです。多くの現場の仕事を経験するのも大事なことだと思いますが、はやり一つだれにでも通用するわかりやすい実績があるといいみたいですね。今所属しているプロダクションがビザ取得の際にスポンサーになってもらえますし、何とかなりそうです。卒業してからの一年、それを目標にしゃかりきにやってきましたから。