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リアリティTVとソーシャルメディアはイラクの平和を作れるか。

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昨年、中東ではアラブの春と呼ばれる市民革命運動が起こり、ソーシャルメディアがその運動を支えるツールとして大きくクローズアップされました。

ソーシャルメディアが今ほどには浸透していなかった数年前、イラクはアメリカを始めとする多国籍軍の武力介入によって、半ば強引に民主化されました。そのイラクで、現在テレビとソーシャルメディアによって若い世代に平和と共存について考えさせる試みが行われているようです。

アメリカのテック系サイト、Mashableの記事ですが、あるリアリティ番組とソーシャルメディアがイラクに平和をもたらすことができるかどうか、という記事がありました。

How Iraq Is Using Reality TV and Facebook to Inspire a Generation of Peacemakers

ソースは、前述の通り、アメリカのサイトで、この番組のスポンサーとして、アメリカ政府の機関である米国平和研究所が関わっているので、そちらサイドからの情報であるということを念頭に読んでいただくと幸いです。実際に現地の人がこの番組についてどう云っているのか追いかけれたらよかったんですが、アラビア語は読めないので断念。

イラクでは、最近イラクでは初めてのリアリティ番組「Salam Shabab」が放映されていました。この番組は、イラク中から、募った14歳から18歳の若者を6つのチームに分けて様々なチャレンジを通して競わせるもの。番組は、平和とは何か、多様性に対する認識を若い世代に持ってもらうことを目標としていること。

イラク人は、地元に対する愛着や誇りはとても強くもっているのですが、国家レベルの国民意識というのはあまり高くありません。過去の政策によって、旅行など他の地域への移動が制限されてたために、各地域の交流もなく分断されていた状態だったということです。若者のほとんどは地元を離れることはないし。他の地域に住む人との交流もありません。

これがイラク人の多様性に対する感性の欠如の原因になっていると考え、この番組は企画されたとのこと。人種、宗教、出身地の違う若者をリアリティ番組に出演させ、チームを組ませて一緒にチャレンジをさせることによって多様性に対する認識を深めてもらおうということです。

この番組に出演したNareenという女の子は、この番組に出演することができて人生が変わった、と云います。今、彼女は弁護士になって人々の権利を守るために働きたいという夢を持っています。
「若い人たちに自分たちのアイデンティティを持つ事の大切さと、平和をどうやって作っていけばいいのか、どう協調していくべきかを教えたりもしていきたい」と彼女は云います。

こうした企画をテレビでやる、ということには、マスメディアと通じて番組に出演していない全国の同世代にもおなじ問題意識を持ってもらいたいという意味があるのでしょう。テレビというマスメディアはやはり有効なのですね。

一方、この番組は公式サイトとフェイスブックページも開設していて、そこで番組出演者と視聴者が活発に平和についての意見を交わし合ったりもしています。ファーストシーズンの放送が終了した後も出演者たちは、活発な議論をつづけいるそうです。

テレビというメディア、大きな議論の契機を作るのに適したメディアですが、継続的な議論の場を提供するのは難しい。そこでソーシャルメディアが議論の場を提供して相互補完しているわけですね。

http://salamshabab.com/
http://www.facebook.com/SalamShabab

「こうしてソーシャルメディアやテレビを通して、私達のような若い世代はより広い世界と繋がれる。だからもっとオープンで多様性を認めることができるようになると思います。もっと自分の意見を表現し、その意見に耳を傾けてくれる人が増えればきっと政治にも影響を与えることができると思っています」とNareenは云います。

こうしたテレビとソーシャルメディアを活用した若い世代の啓発を後押ししているのは、アメリカの米国平和研究所という機関で、ファーストシーズンには$500,000ドルの出資をしています。

フセイン政権下の影響もあり、イラク人は意見を云いたくても云えない環境にあり、また云ったところで、聞き入れられるはずもない、と感じています。そうした感覚が若い世代にもおおいということが調査によってわかってきたために、Salam Shababのような番組に出資を決めたそうです。

そして、この番組はアメリカにとっては民主主義の宣伝でもあり、イラクの若い世代と良い関係を築くチャンスでもある、と考えてもいるようです。

同研究所のシニアプログラマー、Theo Dolan氏は「イラクでは、人口の50%が19歳以下にもかかわらず、若い世代が過小評価されている」と語ります。「これだけのマジョリティを社会の周辺に追いやってしまうのはどうかと思います。彼らはテレビやネットという新しいメディアにも抵抗なく接することができますから、我々は、彼らの活躍するフォーラムや場を提供したいと考えています。きっと大きな仕事をやってのけるでしょう」

番組の動画は、以下のサイトにあります。(英語字幕あり)
http://www.usip.org/newsroom/multimedia/video-gallery/salam-shabab

テレビというマスへの強い影響力を持つオールドメディアとインタラクティブな意見交換のできるソーシャルメディアの2つを上手くつかって、イラク社会を平和な社会にしようという試みが大変興味深いです。多様な価値観がある、ということをテレビで広く伝え、その議論をソーシャルメディアで深めていく。

一方、アメリカにとって望ましい国を作り上げるためにもこの2つの組み合わせを大きな効果があるんでしょう。

どちらの視点から見ても「興味深い。」

この番組に出演したNareenが云うように、自分たちのアイデンティティの大切さと、多様性への寛容さを両立させるために、テレビとソーシャルメディアが活用されればいいなあ、と思います。