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映画レビュー「SEESAW」

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映画を中心としたクラウドファンドサイト、Motion galleryで配給資金を募っていた映画、「SEESAW」を見てきました。
僕もわずかですが、プロジェクトのコレクターとして出資させていただいたので、前売り券をいただいておりましたので。

それに出資への対価として手書きの手紙をもらえる、というのがあったんですが、機械的な挨拶だけではなく、きちんと僕のことを認識した上でのお手紙であったことに結構感動しました。

Motion galleryのキアロスタミのプロジェクトに僕が出資していたことを知っててくれたんですね。ちょっとしたことですけど、こういう気遣いは大変嬉しいですね。

この作品は、制作資金ではなく、公開のための配給資金を募っていたのですが、日本には制作したものの、お蔵入りになってしまい公開されない映画もけっこう存在します。そういう作品を救い上げる手段として、クラウドファンドがより活用されたらいいなあ、と思います。

映画「SEESAW」予告編

SEESAW公式サイト

映画はリアリズムを追求したタイプで、あるカップルの結婚を巡るすれ違う思いを描く作品。Seesawというタイトルにある通り、その二人の関係は微妙なバランスをの上に成立しており、ほんのささいなことでそのバランスが一方から他方へ移ってしまう様をリアリティのある演技で描いています。

友人のカップルが結婚を決断した一方で、ズルズルと同棲状態を続ける主人公カップル。言い出してほしいけど、言い出すと微妙なバランスで成り立っていたシーソーのような関係を壊してしまうかもしれない恐怖が2人ともにある。
饒舌にしゃべる2人は、なにかを伝えるためにしゃべるのではなく、本心をごまかすためにこそしゃべっている。

生活感のある空間に木偶の坊ではない、生身の人間を描けているので、ありふれた物語もただの「よくある話」に終わらず、普遍的な葛藤として見る人の心を捉えることができている。

惜しいなあ、と感じるのはシーソーになぞらえられた2人の関係の壊れる瞬間があまりにも唐突なものすぎるところかな。あまりにも外部的要因すぎるというか。

あくまでシーソーを破壊するのは2人のバランスの取り方やそれに関係する何かであるべきじゃないかな。

しかしながら、主役の村上真希さんの迫真の演技で最後まで飽きさせないのは見事。彼を失った後の、彼の「生きた証」を(自分の中で)必死に繋ぎ止めようとする様。あれを一人芝居でやるのは芝居経験のない人には大変だったろう。

小品であるが良品。こうした作品を救い上げることができるだけでもクラウドファンドは存在意義があると思います。

かつて撮影所が元気だったころは新人を育てる余裕がありましたが。撮影所システムが崩壊してからは新人の育成はVシネやピンク映画がその一部を担ってきました。Vシネが三池崇史を、ピンク映画が滝田洋二郎を育てたわけです。

今はそれも崩壊しつつある今、クラウドファンドが新しい才能を発掘する場として機能しうるということをこの映画は証明してくれました。

出資してよかったと思える作品でした。