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ディズニーのパブリックドメイン作品をネットで無料上映で考える保護期間のあり方

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新年あけましておめでとうございます。

さて、去年のまとめもまだしっかり書けていない段階ではございますが、映画と著作権の問題を考える上で面白いニュースがありましたので、そっちから取り上げたいと思います。ACTAが昨年で事実上ほぼ死んだので、今年は知財に関してはTPPが争点となると思いますが、それを考える上でも参考の1つになるかもしれません。

ディズニーの名作映画 ニコニコ生放送に登場 パブリックドメインの活用企画

東京・原宿でシアター運営などを手がけるKINEATTICが、1月8日よりニコニコ生放送でウォルト・ディズニーの長編名作映画のライブ配信企画 ディズニー映画祭「WALT DISNEY NETROSPECTIVE」(ウォルト・ディズニー・ネトロスペクティヴ)を開催する。 第1作目は1951年に公開された『ふしぎの国のアリス』で、1月8日21時からKINEATTICのニコニコチャンネルでの配信となる。以降、毎週同時刻で配信、月ごとに作品が変わる。今後は、『ピーターパン』、『白雪姫』、『ピノキオ』なども登場する予定だ。

KINEATTICは、最近ではパブリックドメインとなった実写映画の名作をUSTで無料配信する「午前0時の映画祭」を開催しており、これまでも市民ケーンや裁かるゝジャンヌなどの名作映画を無料で上映しています。
原宿に小さなシアターも持っていて、既存の映画館の上映にプラスαでインターネットを利用した上映形態のあり方を先駆的に実践しています。

今年からKINEATTICさんは、ディズニーのアニメ作品のネット上映も手がけるというのが今回のニュース。あの著作権に五月蝿いディズニー作品に手をつけるというのですから、割とこれはチャレンジングですよね。

映画の著作権の保護期間について


まず映画の著作権の保護期間はどのように算出されるのか、なるべくわかりやすく説明してみます。

著作権の保護期間は基本その作者の死後〜年という形で表されるのが基本ですが、映画の場合制作に関わった人間が多数います。全員の死後ベースで計算するというのも大変な話です。昔の作品の関わったスタッフ善人の死亡日を調べるのは困難です。

2004年に著作権法の改正があり、保護期間に関しての改訂がありましたが、旧著作権法の場合は、
映画の場合は基本的に団体による著作物ですので、この場合は公開後〜年後で計算されるのが基本となっています。
大抵の場合、アメリカの作品ならスタジオが著作権を保持していたケースが多いですので。

そして旧著作権法が定める団体作品に対する保護期間は公開後50年。KINEATTICさんは、ディズニー作品のネット上映第一弾として、1951年の「不思議の国のアリス」を上映予定ですが、この作品は2001年にパブリックドメイン入りしていると考えられます。

ここできちんと著作権者が誰なのかははっきりさせておかないといけなく、スタジオが著作権を保持しているのなら、上記のように不思議の国のアリスは2001年にパブリックドメインとなっているはずです。

もし、ここでこの作品は監督による個人の創作物と認められるほどに監督の個性が全体の質を決定づけているという話になってくると、監督の死後ベースでの計算もあり得ます。

おそらくこのケースではないと思います。監督が2名、脚本にいたっては異様な数の人間がクレジットされており、この映画の質が個人の個性に集約されるとはちょっと考えにくい。
まあ、名作パックとしてパブリックドメイン入りしている作品はまとめてDVDとして発売されているわけですから、このラインナップから選択する分には安全でしょうね。

ちなみに映画で個人の著作物と認められ、作者の死後ベースでの算出がされたケースはチャップリンなどがあります。骨董通り法律事務所さんのブログでこの辺は詳しく説明されています。まあ、チャップリンクラスじゃないと難しいということでしょう。

さて、不思議の国のアリスは日本で著作権の保護期間延長が決定された2004年より以前に保護期間切れを迎えていたから今回、ネットでの上映に踏み切ることができました。
なぜかと云うと、古い作品であっても2004年の時点でまだ保護期間の切れていない作品は新しく改正された保護期間が適用されるからです。2004年に団体作品は保護期間が50年から70年に延長されました。

なので、1954年に公開された作品は基本的には70年の延長期間となります。1年違うだけで大違いですね。

そんなわけでめでたく、僕らは無料でネットでディズニーの昔の名作を見る事ができるわけですね。

TPPの保護期間延長項目


さて、TPPの知財項目には著作権の保護期間の大幅な延長の条項が含まれているという話です。
福井健策さんのブログに訳が掲載されているKEIのTPP知財項目のリーク情報によれば、個人の死後ベースでの保護期間は死後70年とし、個人の死後ベースではない計算の場合、

(i) 作品・実演及びレコードの権限ある最初の発行の年の終了時から95年以上とし、

(ii) 作品・実演及びレコードの創造から25年以内に権限ある発行がおこなわれなかった場合には、かかる創造の年の終了時から120年以上とする。

となっています。

アメリカではしばしば、著作権の保護期間の延長はミッキーマウス保護法と揶揄されることがありますが、ディズニーの強力なロビー活動によって、ミッキーの保護期間が切れそうになると延長されるという「偶然」の事情があるわけですが、TPPで突きつけられる保護期間の延長は、べらぼうに長くなりそうですね。
TPPの話題が昨年以上に沸騰しそうな2013年にそのディズニーのパブドメ作品をニコ生で上映しようというのは、なかなか挑戦的です。そしてパブドメのありがたさを身を以て実感できる機会を作ってくれたことが、この問題を議論する上で大変重要です。

理屈の上で保護期間の延長問題を語るよりも見て、体験して実感することもまた大事。

2013年は文学の方でも多くの名作がパブリックドメインすると云われています。
【ビッグイヤー】2013年元日にパブリックドメイン入りした作者たち – Togetter

優れた作品にアクセスしやすくなるのは文化の豊かさを保つためにも必要なことであると思いますので、文学でも映画でも多くの名作に触れてみてはいかがでしょう。

放送のページはこちら。
ディズニー映画祭『ふしぎの国のアリス』 – ニコニコ生放送

KINEATTIC公式サイトはこちら。
KINEATTIC − 3RD THEATER OF VIDEOARTS −

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