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ザ・ノンフィクション『ハナエゆれる ある家族のゆくえ』を見て。

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via Hi cross

フジテレビのドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」の6/16放送分の『ハナエゆれる ある家族のゆくえ』を見ました。韓国人の父と日本人の母を持つ二重国籍であった女優、韓英恵さんの22歳になるときに日本か韓国か国籍を選択するまでの葛藤と家族との対話を追ったドキュメンタリーです。
韓英恵という女優は、是枝裕和監督の「誰もしらない」で知っていました。デビューは10歳の時、巨匠鈴木清順監督の「ピストルオペラ」でデビューしたのち、メジャー、インディーズ映画問わず様々な作品で印象に残る芝居を見せています。2011年には「アジアの純真」という作品で、双子の姉妹を殺され、テロを企てる在日の少女という役どころを演じてもいます。

韓国で出会い結婚した父と日本人の母の間に生まれた彼女は二重国籍者です。日本では二重国籍を22歳を超えて保有することは許されておらず、彼女はどちらかを選択しないといけません。

日本人でも韓国人でもない

静岡県で生まれ育ったハナエさんは、小泉政権時代、北朝鮮の拉致問題で社会が沸騰している時期に韓国籍を持っていることでいじめにあい、自然と自分が韓国籍を持たない「普通」の日本人として振る舞うようになったそうです。

しかし映画にデビューする際に鈴木清順監督に父方の姓でデビューすることを勧められ女優としては韓英恵として活動することになったどう。なぜ清順監督がそのように勧めたかはわかりません。ググってもその理由が見つけられない。しかし、その決定は彼女のアイデンティティの形成に大きく寄与しているのかもしれません。国籍も2つ保有している彼女は、「日本人にも韓国人にもなれない」感覚を吐露します。女優という虚構の中に伊吹を吹き込む職業で分裂した感覚を持つことは、彼女の女優としてのキャリアに恐らく多大な影響を与えていることでしょう。清順監督の勧めは彼女の葛藤を良くも悪くも深くしたような気がします。

番組はハナエさんの22歳目前で、国籍を選択せねばならない葛藤を追います。日本で生まれ育ったのだから、日本国籍を選ぶ方が「利便性」が高いだろうし、実際にそうするのではないかと予測している両親、一家の「トラブルメイカー」であるが、この葛藤を唯一共有できる弟の英明、そして韓国で一人暮らしをする父方の祖母との対話を通じて悩みを深める彼女。
「本来なら父親の家系に入るべきだ」と言いながらも、「先の短い私が、これが正しい、あれは間違いと論じても何の意味もない。自分らしく人生を歩んでくれれば」ともやさしく言う祖母の言葉。

彼女にとっての自分らしくとは、日本人になりきることでも韓国人になりきることでありませんでした。彼女は無駄と知りつつ、役所に行って、なぜ選ばなければならないのかと窓口の人に詰問します。当然ですが結果は、通り一辺倒の事務対応をされるだけ。わかっていたことなので、なぜわざわざ無駄な抗議をしたのか。きっと自分のアイデンティティが日本人でも韓国人でもない、という所にあるだということを最後に自分に確認するつもりだったのかもしれない。

両親の予測に反して彼女は、韓国籍を選ぶ。日本に生まれ、これからも日本で生きるであろう彼女にとっては敢えて進む茨の選択。日本で生活しながら韓国籍を選ぶというのは、彼女によっての「日本人でもない、韓国人でもない」アイデンティティに一番近い選択だったのだろう。

そのこと彼女が家族に告げた時に、韓国人である父親は「Welcome to my country」と英語で伝えました。日本語でも韓国語でもなく英語。このお父さんは娘の気持ちがよくわかっている。

日本人でもなく韓国人でもない宙ぶらりんなアイデンティティを抱えて生きるのは大変なことだろうと思います。しかし、そこに自分らしさがあるのなら、それが困難な道でも選択する。そこに至る葛藤がしっかりと捉えられていた良いドキュメンタリー番組でした。

ハナエゆれる ある家族のゆくえ

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