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映画レビュー「選挙2」、観察を踏み越えた観察映画

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映画「選挙2」は、2011年の4月に行われた統一地方選挙に山内和彦氏が無所属で出馬した選挙戦を追ったドキュメンタリー映画。前作「選挙」の時は、自民党公認の候補として出馬し、慣れないドブ板選挙の結果当選した山さんでしたが、今回は完全無所属での出馬。それも公示の数日前に立候補を決めた緊急出馬。今回は自民の看板も後援もなく、金もない中、前作あれだけやったドブ板選挙を封印。原発事故直後の選挙戦にも関わらずだれもそのことに触れないことに憤慨して脱原発を全面に主張する唯一の候補者としての戦いを追いかけています。

映画『選挙2」予告編

前作「選挙」は観察映画の1作目で、今回の続編で5本目になります。その間想田監督のスタイルも少しずつ変遷しているのですが、今回はさらに今までとは違う側面を見せています。
観察映画は事前にシナリオも用意せず、ありのままを撮るスタイルですが、今回は対象よりもカメラを構えた想田監督の存在を今までで一番強く感じさせます。

この映画の冒頭は山さんにつけられた撮影用のピンマイクのずれを直すというシークエンスから始まります。ピンマイクは監督が付けたもので、撮影対象のクリアな音声を拾うために当然必要なものですが、こういうシーンは事実をありのままに撮っている前提のドキュメンタリーのお約束を破壊するものです。撮影者と対象の協業を見せているわけですから。あれは作為があることの正直な表明なのかもしれない。
なので冒頭から「これは今までの観察映画とは違うな」と思わせます。実際、今回の作品ではあまり動かない山さんの変わりに想田監督は山さん以外の候補者にもカメラを向けて、時には候補者と闘ってもいます。今までの想田監督の作品でもカメラを回している監督と対象の「自然な」会話はありましたが、今回はけっこう挑発的な部分もあり、過剰な反応を示す候補者たち(主に撮影していることに腹を立てる自民党の候補者)のその反応を撮るということをやっています。
その他、ある候補者へのインタビューでは意図的に編集ポイントをずらして使っている。現在の選挙制度と選挙運動の矛盾について質問し、候補者もこれをおかしいとする自説を長々としゃべるインタビューを撮影しているのですが、インタビュー時の丁寧なしゃべりが始まる雑談の部分から使用している。撮影されたものの裏には常に作為がある、といわんばかりの編集。
今回の作品では自然の状態をできるだけありのまま撮る、というよりもそうした表出された事象とその裏側の作為があぶり出でてくるように想田監督は仕向けているように見えます。

ここにはおそらく想田監督の問題意識が強く反映していると思われます。この選挙は2011年の4月、311の大地震と原発事故の直後に行われた選挙戦ですが、山さん以外の候補者はだれもそのことに言及していません。あれだけ日本中を揺るがした大きな事故ですから、賛成であれ反対であれ、そのことに言及しないのはおかしい。主張しないその裏側には何があるのだ、ということでしょうか。
この選挙戦において、表現として提示される表の事象には果たして何の意味があるのか、と。

こうした作為に敏感だったのは想田監督だけではありません。最後の山さんの防護服を着ての演説は作中でも山さん自身が「コスプレ」と表現しているようにある種のパフォーマンス。あまりにも絵として面白い。撮影されるのが2回目である山さんはどんなパフォーマンスが絵になるのかある程度自覚的だったのかもしれない。元々サービス精神旺盛の方のようですし、元々パフォーマティブな性格のようでもあります。

そうした種々の事象に対して、冒頭のピンマイクのシーンを思い起こす。全てはあのような作為があるので気をつけろ、と。

観察、という言葉にはある程度傍観というニュアンスも含まれていると思いますが、311以後傍観してる場合じゃないだろう、という意識が強く現れているのかもしれません。誰もが当事者であるはずなのに立候補している候補者ですら、原発問題の当事者として振る舞っていないことへの怒りが今までの観察映画とは違うスタイルを取らせたのかもしれません。

しかし、この映画笑いが絶えない。山さんというキャラクターは本当に映画向きの人だな。

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