宮崎駿監督が引退するそうだ。ジブリの星野社長がベネチア国際映画祭の公式会見で明らかにしたそうだから、今回は本当だろう。朝のテレビのニュースでは、6日にご本人が記者会見を開くとも言っていた。今までのように、鈴木敏夫プロデューサーがポロッとほのめかしたりするのとはわけが違う。
お疲れ様でした、と言いたいところではあるけど、率直に言ってやはり寂しい。まあ、長編から退くだけなので、美術館向けの短編でこれからも活躍されるのかもしれないけど。あの情感豊かなアニメーションは、数秒で人を感動させる力を持っている。『On Your Mark』のような傑作も飛び出すかもしれない。
宮崎駿監督の名前は僕の世代的にはやっぱり特別な名前だ。小学校低学年ころにはスタジオジブリ作品はすでに人気で御多分に洩れずトトロやラピュタを繰り返し見て育った。80年生まれは宮崎アニメを見て育った世代だろう。もっともそれに続く宮崎アニメを見て育っているかもしれない。何せずっと日本映画の看板であり続けたわけだし。
現存する人の中では、唯一の国民的映画監督と言っていい人だと思う。単なるヒットメイカーとは違う。発表する作品ひとつひとつが社会現象だった。
宮崎監督は、アーティストや思想家というより、やはり生粋のアニメ職人ではないかと思う。生きていればいろんな事を考えるだろうし、作品にもメッセージを込めたりもするが、監督の魂はその描く「動く絵」そのものにあったんじゃないかな。絵が動く、躍動することそのものへの拘り。映像表現の本質は動くことに対する驚き。物語も思想も文章で表現できるが、動く絵の驚きと美しさは映像にしか表現できないのだ。
さて、スタジオジブリの今後はどうなるんだろう。元々宮崎監督映画をしっかり作る体制を作ろうとして出来たスタジオ。本来宮崎監督ありきのスタジオなのだけど、ここまで大きな存在になってしまったので簡単に潰せない。でも順調に後進が育ったとは言い難い。ジブリには強烈にイメージが定着しているので、それを守り通すのも壊すのも、どちらも大変な作業になるだろう。
アニメ映画全体ではどうだろうか。ジブリの外には細田守もいるし、海の外にはジョン・ラセターもいる。この2人はきっと今後も宮崎アニメのクオリティに肉薄するすごいものを作るはず。
改めてお疲れ様でした。映画って、アニメって素晴らしいってことを何度も教えてもらいました。
ありがとうございました。
