2016年冬アニメ、時間が取れずになかなかチェックできていなかったのだが、昨日からようやく消化し始めた。始めの1本は「昭和元禄落語心中」。
これはいい。のめり込まされる。声優陣の本気の落語芝居が堂に入っている。本格的でぐいぐい引き込まれる。画作りもいい。アニメーションの醍醐味である動きは少ないが、わずかな所作で見る人の想像力を掻き立てる噺家に仕草を見事にアニメで再現していると思う。カットごとの構図も見事。
メインキャストはみな落語に精通しているそうだ。与太郎役の関智一さんは以前から落語家に弟子入りしているらしいし、石田彰さんは落語ファンで小林ゆうさんは「モエオチ」なる落語CDを出してもいて、山寺宏一さんは落語研究会に所属してことがあるとのこと。
物語は、刑務所を出所したチンピラの与太郎が、名人八代目有楽亭八雲に押しかけ弟子入りしするところから始まる。与太郎は、刑務所への慰問で八雲の「死神」に感動して出所したら足を洗い落語家になることを決めたのだ。弟子入りを許された与太郎は、八雲の家で養女の小夏と出会う。彼女の実の父は八雲の生涯の友と呼ぶべき二代目有楽亭助六だが、若くして亡くなった。この3人を中心に物語はすすむようだが、ここに八雲と助六、小夏の母であるみよ吉との関係を描く過去話も絡んでくる。
「声だけで全ての演技をする声優は素晴らしい俳優だ」とかつて押井守が言ったことがあるが、声と扇子だけで全てを表現する落語という題材は、表現者としての声優の素晴らしさをおおいに発揮できるものだろう。
放送記念イベントで、
「こういう声優生命をかけられるような作品に出会えてうれしい」「僕らが浮かされている“熱”を感じてほしい」
(石田彰、山寺宏一ら声優生命をかける情熱! アニメ「昭和元禄落語心中」放送開始記念イベント – エンタメステーション | entertainment station<)より
とキャストが語っていたそうだが、それも納得のパフォーマンス。第一話では関智一さんは「出来心」をまるまる一本披露するという贅沢(かつ過酷な?)なシーンをもらっていたが、関さんの乗りに乗った芝居は画の演出の上手さも相まって噺に夢中になってしまった。
このシーンにかぎらず、スタジオディーンの仕掛けた演出もとてもいい。「出来心」では二人の人物を演じ分ける与太郎を本当に二人いるかのように見せるべくカットバックして見せるたりもしていた。石田彰さんの「鰍沢」では噺の盛り上がりに合わせてイメージショットを挿入したり、照明演出を入れたりとアニメならではの技法で落語の魅力をわかりやすく補強している。初めて落語を見る人にとっても、魅力が伝わりやすい。テレビの放送でもこういうやり方は取り入れられてもいいんじゃないかな。松竹の「シネマ落語」や何年か前にワーナー・マイカルでやった「映画館落語」などは舞台裏を見せてくれたり、いろいろ多角的に寄席の面白さを見せてくれるようだけど、もっとこのアニメのように映画的な演出を組み合わせてみるのも面白いかも。
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