いかにもな邦題タイトルに、いかにもなピンクをイメージカラーにあしらわれている本作だが、映画は中身を見るまでわからない。結論を言うと、人間ドラマとして大変よく出来ていて、老若男女問わず見ることの出来る秀作だった。
Toggetterにもまとめられているが、女性ターゲットの洋画が、日本公開時に妙に古臭い女性観にとらわれた宣伝になってしまうことがある。
見逃した名作も見つかるかも…? #女性映画が日本に来るとこうなる が「どうしてこうなった」続出 – Togetterまとめ
本作もそうだが、上のまとめに挙げられている作品の多くは、ステレオタイプな生き方を奨励するような作品ではなく、女性がそれぞれの個性を求めて生きる物語が大半だし、女性、男性という性別役割的な視点を超えて「個」を描くということが、しっかりできている作品ばかりだ。そして本作もそれがきちんと出来ている。
本作は不妊や乳がんといった、女性ならではの問題を取扱っている。だからといって女性だけが共感できる作品には決してなっていない。人間だれもが女性や男性である前に、一人の「個」としての人間だし、作り手もそれをきちんとよくわかっているから普遍的な感動を持った作品に仕上がっている。
監督のキャサリン・ハードウィックは、「人生のすべてが詰まっている幸せで楽しい人生を送っていたのに、突然大きな運命と向き合わなければならなくなる。それをユーモアと勇気で乗り切れるか、それともただ打ちひしがれるか」という点に惹かれたのだという。「まさに全ての人が人生に向き合うことになる」とも。
本作の企画は、脚本のモーウェナ・バンクスの乳がんを患った実体験からきている。友情のテーマは後から生み出されたものらしい。この乳がんによって自分と周囲の人生に大きな影響を与えたことを映画にするための筋立てとして、別の女性特有の悩みを抱える親友を設定した。
トニ・コレット演じる優秀なビジネスパーソンであるミリーは、夫と子どもの囲まれ裕福な生活を送っている。ドリュー・バリモア演じる親友のジェスは、ボートハウスで整備士の夫と暮らしている。ジェスの悩みは子どもができないこと。何年も不妊治療をしているが、なかなか子宝に恵まれない。
そんな折に、ミリーは乳がんを患い、ジェスは遂に妊娠に成功する。一方は人生のどん底に落とされるような宣告をされ、もう一方はようやく長年の悩みから開放される。そして親友だからこそ、相手のことを思うと自分の幸せを打ち明けることが難しく葛藤する。仕事人として、女として輝かしいキャリアを積んできたミリーは、乳がんによって女として失格だとさえ思い悩む。そんな時に女としての喜びである妊娠を打ち明けることにためらいを憶えるジェスという構図で、二人の葛藤を中心に物語は進む。
彼女たち2人を囲む、周囲の人間もきちんと描かれていて、女の問題に物語を収束させないのも上手い。2人を支える旦那たちの葛藤もきちんと描きこまれている。信頼しあっている男女でも、どこかで踏み込めない、あるいは理解しきることのできない領域がある、そうして男には踏み込めない領域外できちんと支えようとし、自分のできない部分を親友に託すという際の嫉妬とも無力感ともつかぬ微妙な感情もよく表現されていた。
本作は、絶望と希望の側、2つの転機をそれぞれ迎える人間と友情の物語であって、性差を超えて感動できる作品に仕上がっている。キャサリン・ハードウィック監督は大変いい仕事をした。「#女性映画が日本に来るとこうなる」のハッシュタグのような扱いにならずに多くの人に届いてほしいと思う。
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