新年1作目の劇場観賞は「甲鉄城のカバネリ」だった。前後編で構成された、テレビアニメの総集編であるがこれがスクリーンで見たい作品だった。進撃の巨人で知られる荒木哲郎監督のセンスは大きなスクリーンの方が映えるだろうと思っていた。「DEATH NOTE」のアニメ版で荒木監督を知ったのだが、普通にコンテを切ったらなんでもないようなシーンをダイナミックに描いていて、この人のアクションは非常に面白いなと思っていた。
「甲鉄城のカバネリ」は荒木監督によりオリジナルアニメ作品だが、この企画は荒木監督がやりたかったことを詰め込んだ作品だそうだ。アニメスタイルのインタビューによると、はじめにアクションアニメーターが活きる企画を、とオーダーされて、当時売れていた「キック・アス」のヒットガールからヒロインの無名の着想が生まれたそうだが、出資者が納得する企画をと考えていくうちに、荒木監督の今までの作品の要素を様々詰め込んだ形になったのだそうだ。
確かに壁に中で暮らす人類は、「進撃の巨人」を思わせるし、ゾンビもののというと「学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD」、カバネがウイルスで感染するのは「ギルティ・クラウン」ぽいと言えるかもしれない。さらに荒木監督が大きな影響を受けたガンダムの要素としては、甲鉄城の民間時も乗せた呉越同舟感は、ホワイトベースから来ているそうだ。
個人的には、テレビ放送で見たときには、ポン・ジュノ監督の「スノーピアサー」っぽいと思った。世紀末的な雰囲気の蔓延するなか、延々と列車で走る設定は同じだし、上記のアニメスタイルの特集によれば、意識はしていたようだ。ただ「スノーピアサー」ほどわかりづらくはなく、もっと娯楽アクションに徹した内容になっている。
さて、「甲鉄城のカバネリ」が劇場向きだろうと思ったのは、そのアクションの素晴らしさなのだが、やはり大きなスクリーンで見ると違った。総集編を映画化することの是非もあるかもしれないが、こういう作品ならどんどんやってほしいと思う。
特に前編は娯楽アクション映画として、パーフェクトに近い作品だった。テレビシリーズだと1〜6話(最初の黒けぶりが出てくる)にあたるエピソードまでがまとめられているのだが、過不足ない内容に加えて、アクションに次ぐアクションの連続で、カバネリになった生駒の成長も納得感を持って描けているし、呉越同舟の甲鉄城の面々が、最初はいがみ合いながらも協力しあい、最後の黒けぶりの戦闘での総力戦に繋がり、それが一気呵成に見れるのでテレビ版より数段興奮する。
反面、アニメスタイルの小黒編集長も脚本・シリーズ構成担当の大河内一楼氏に対して、前半はこれからどうなるんだろう、というドキドキがあったが、後半はなくなったとハッキリ本人に言っているのだが[すごい突っ込んだインタビューだなと感心した)、たしかに甲鉄城の皆が一つにまとめる過程のドラマと、連続アクションが見事に調和している前半に比べて、黒幕の美馬ふが出て来る後半は、作品内容としても失速する。
ヒロイン、無名の兄である美馬が、復讐のため謀反を企てていて、それに利用するために無名をたぶらかしている、それを主人公が助け出すというのはパターンはよくあるものだし、展開上も背景の説明を多く要するので、展開のスピード感も落ちる。実際ノイタミナの1クールに収めないといけないために後半はいろいろ苦労したことがアニメスタイルの特集からも伺えた。
もし、前編のあのテンションのまま突っ切ることができていれば、日本のアクションアニメ史上でも屈指の名作になっていたんじゃないかと思う。
いや、後編も充分面白いのだけど。前編が良すぎるので、比較すると見劣りするだけで。まあ最初がすごく面白いと勿体無いみたいな気分にはなるよね。
そういえば、新作の制作も決定したようだ。新作はテレビシリーズだろうか。是非ともスクリーンで荒木監督がやりたいことを詰め込んだものを見たい。
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