シネマズPLUSで『新解釈・三國志』が大ヒット中の福田雄一監督のヒットメイカーとしての実力について分析してみました。
福田雄一監督のブランド力は本物か?|100億の男も夢じゃない、コロナ禍で開花したヒットメイカー | cinemas PLUS
2020年、映画興行は大変厳しい状況に追い込まれましたが、そんな状況に抗うように福田雄一監督の映画は売れました。3本の長編映画を公開して、12月20日時点で83.7億円も稼ぎ出したというのは驚くべき成果だと思います。そのうちの一本はオリジナル企画ですし。
福田雄一監督の興行力はもう無視してはいけないレベルになっていると思うので、いかに福田監督がブランドを築いていったかを振り返ってみました。
いくつかターニングポイントはあるんだろと思いますが、深夜ドラマに進出、漫画原作を独自のセンスで映像化、そして『今日から俺は!!』でチビっ子とその親世代にまで浸透した結果が、オリジナル映画『親解釈・三國志』の大ヒットでは、という分析です。
この記事はブランドがいかに浸透していったか、どんなマーケティング戦略が福田監督の映画で取られたのかに注目します。内容評価ではないのであしからず。
以下、メモです
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Thesis
福田雄一のヒットメイカーとしての実力とその理由をさぐる
Intro
コロナで映画館が苦境に陥った
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まず一番の救世主は鬼滅の刃だった。これは誰も異論をはさむ余地がないはず。
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では2番目の救世主は誰だったか。3本の長編映画を送り出し、いずれもヒットさせた福田雄一だったのではないか。
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3本合わせて、83.6億の興行収入を叩き出しています。年末までにまだまだ伸びるでしょう。
ヲタクに恋は難しい 13.4億
今日から俺は!!劇場版 53.7億
新解釈・三國志 16.5億(12月20日時点)
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そもそも、コロナによる映画館の休館明け、一番最初の話題作の封切が「今日俺」でした。これがこけていたら、今年新作公開しても駄目なのかも・・・と業界全体がなってしまったかもしれないです。もっとたくさんの作品が延期を決めたかもしれない。コロナでもいけるという空気を作ってくれた。
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福田雄一監督の作品は、今年なぜここまで集客しているのかを考えてみたいと思います。果たしてヒットメイカーとして本物になったと言えるのでしょうか。
Body1今日から俺はのヒットはどう用意された?
まずは、今年興行収入2位の「今日から俺は」のヒットがどう用意されたのかを見てみます。
コロナ休業明け、最初の話題の新作だった。そういう意味で、映画館からは相当に期待がかけられていたと思われます。これが無事に50億円を超えるヒットになったことで、後に続く作品もある程度、今年配給することに自信が持てたのではと思います。もしこれが当たっていなかったら、もっと多くの作品が公開延期を決めていたかもしれません。
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本作は、漫画原作のドラマ化の人気がまずありました。2018年のドラマ人気について
親世代と子供のコミュニケーションの媒介になるような作品を狙って作って、その目論見があたった。
【受賞プロデューサーインタビュー】『今日俺』が示したドラマの可能性 福田脚本・演出と期待に応えた役者たち | ORICON NEWS
最初から掲げていたコンセプトは「当時を知っている世代には懐かしく、知らない世代には斬新に映る」。懐かしいだけのドラマだと子どもたちが置いていかれます。80年代は子どもたちにとってはファンタジー。でも、お父さんたちにとってはリアル。そこに会話が生まれると予測をして、一番大きいコンセプトがそのまま刺さってくれました。
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視聴率は10を少し下回る程度でしたが、毎回視聴熱がすごく、SNSでも大きな話題となっていました
放送終了後も“バズり”続ける「今日俺!!」、一夜限りのコンビ復活も【視聴熱ウィークリーTOP3】 (1/2) | 芸能ニュースならザテレビジョン
『今日から俺は!!』は家族の会話につながる名作ドラマ | ORICON NEWS
今期の90Pt超え満足度3強の1作となっている
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視聴率以上に注目すべきは、ネットでの配信での視聴が多かったことでしょう。
2018年に最もみられた作品は? Hulu年間視聴者数ランキング2018を発表 | | Hulu News & Information
今日おれは安室奈美恵に次ぐ年間2位
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『今日から俺は!!!』のプロデューサー高氏は当初からSNSを強化していく方針であったことを明かし、「放送スタート時には既に全ての撮影を終わらせていたので、出演者のオフショットや動画を意図的に撮り貯めて、準備していた」という。戦略的にSNSを活用した結果、2018年の時点で同局ドラマ公式SNSにおいて歴代1位のフォロワー数を記録した。
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今回の映画のヒットもそもそものドラマ人気の延長にあります
なぜ「今日から俺は!!劇場版」と「コンフィデンスマンJP プリンセス編」は大ヒットしたのか? : 細野真宏の試写室日記 – 映画.com
「[今日から俺は!!劇場版](https://eiga.com/movie/91920/)」の配給元の東宝が公開初日に行なったアンケート調査では、男女比率は4対6と、意外にも女性の方が多いことが分かります。
客層は、10代以下の子供からシニア層まで非常に幅広い客層になっています。
そして、鑑賞動機ですが、「ドラマ版の『今日から俺は!!』が好きだから」が64.1%と、圧倒的に多かったことが分かっています。
しかも、2018年10月期に日本テレビ系列で放送された「今日から俺は!!」をリアルタイムで見ていた、という人が 82.5%もいることが判明しました。
つまり、連ドラ「今日から俺は!!」(平均視聴率9.9%・関東圏)の出来が良かったので、観客の8割以上が、ドラマのコアなファン層であることが分かります。
次に多かった鑑賞理由は、「ストーリーが面白そうだから」が28.8%で、「キャストが好きだから」は26.8%で、「笑えそうだから」が26.6%となっています。(複数回答可)
個人的に、少し残念なのは、「福田雄一監督・脚本の作品だから」ということで選んだ人は12.6%と少数であった点です。
Body2福田ブランドはいかに確立されたか
細野さんは、「個人的に、少し残念なのは、「福田雄一監督・脚本の作品だから」ということで選んだ人は12.6%と少数であった点です」と言っているが、1割以上の人が福田作品であることを理由に挙げているのは、決してすくなくないのではないかと思います。
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そもそも、ドラマ版の時点でかなり福田ブランドは浸透していたことをうかがわせる調査があります。
「今日から俺は!!」大学生調査から見えたのは「福田雄一ブランド」?(境治) – 個人 – Yahoo!ニュース
小々馬教授はこのマイニングから「福田作品シリーズの信頼」を見出している。ジブリのようなブランド感が福田作品につきはじめている、というのだ。大学生たちは福田ワールドをすでに評価し、”わかって”いる。
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勇者ヨシヒコで深夜ドラマが話題になり、その後映画でもブレイク。
銀魂では40億円を超えるヒットを記録し、若い世代にはある程度福田ブランドは浸透していたと考えられます。
『読んだことないけど、福田雄一でやったらいいんじゃないの? ってネットで書かれてるみたいですよ』とお伝えしたんです。長男から言われてたことなんですけど
例えば、ぎりぎりのパロディーは原作にもありますが、実写映画には福田雄一監督のオリジナルのパロディーが随所に出てきて、感想を見るとお客さんが喜んでいるのはそこだったりするんですよね。 小岩井宏悦プロデューサーはオリジナルパロディが結構受けていたと述懐している。
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そこに年長世代に刺さるネタ、ツッパリの今日からおれはでさらにその認知が広まっていったのでしょう。
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劇場に足を運んだ世代で多かったのが子ども連れのファミリー客
コロナ禍でどう宣伝したのか。
YouTubeプロモも成功 映画『今日から俺は』3世代ヒットの裏側:日経クロストレンド
そして子供に「映画も見たい」と思わせた仕掛けがYouTube動画だ。映画版公開前にも、オリジナル動画を公開。理子がチョコ作りに挑戦する「ヤンキー1分クッキング2020♡ バレンタイン三橋×理子編♡」は、20年2月の公開から10月下旬時点で735万回視聴を記録。こうした公式動画の合計再生回数は、何と1億5000万回超に上る。また、「伊藤のツンツン頭になりたい」と入浴時に髪形をまねする子供も続出した。
結果、前売り券の販売ではジュニア券が44%と高い比率に。東宝が公開初日に行ったアンケートでは、子供と一緒に来場したという人の割合が最も高かったといい、ファミリー層をがっちりつかんだ。
「公開初日をスタートとして、お盆にかけて長く見られるような戦略を仕掛けた」(高氏)と数々の手を打った。
最も異例だったのが、“映画自体のアップデート”。まず公開1カ月後の8月21日から、主演の賀来賢人がファンに感謝を伝える、映画館限定の映像を本編終了後に放映。同25日からは、出演陣が撮影時のエピソードなどを語るトークを専用アプリを通して聞きながら映画を見られる「副音声付き上映」も実施した。リピートしても確実に楽しめる仕掛けをふんだんに施した。
全国6カ所の「hmv museum」ではお盆の時期にかけて、衣装や小道具を展示する展示会を実施。日本テレビ系列各局ではドラマ版を再放送したのに加え、「Hulu」では映画公開に合わせてドラマの未公開シーン復活版を配信した。イベント事業、番組編成、インターネット配信といったテレビ局の多様な部署を巻き込んだかつてない“日テレでのプロモーションを大々的に展開。
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【今日から俺は!!】ヤンキー1分クッキング2020 ♡バレンタイン三橋×理子編♡
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そして、現在公開中の『新解釈・三國志』はオリジナル企画の作品。福田ブランドの本当の実力が試される作品と言えます。
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福田作品だから見たいと答える割合は増えたそうです。
「鬼滅の刃」と同じ週刊少年ジャンプ作品の映画化「約束のネバーランド」のポテンシャルは? : 細野真宏の試写室日記 – 映画.com
東宝の初日のアンケート結果によると、「今日から俺は!!劇場版」の時は「福田雄一監督・脚本の作品だから」ということで選んだ人は12.6%でしたが、「新解釈・三國志」は「福田雄一監督・脚本の作品だから」が30.4%と、1割から3割に急増していました!
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これまでの福田作品の映画における大ヒット作は、人気漫画を原作にしたものばかりでした。その意味で、ヒットは原作の知名度に負うところが大きかったわけですが、独特の笑いのセンスで徐々にファンを増やしていき、古い漫画の今日俺を自己流の演出で今の若い人にも受けるものにし、娯楽に飢えていたコロナ禍で先陣を切って公開し、独走状態を作り、話題をさらっていきました。
結果、ブランド力が向上し、今回のオリジナル企画のヒットにつながっているのではないでしょうか。
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テレビでの露出量も多くプレコグ調べでは2週連続で一位でした。
地上波テレビでの映画露出度ランキング【2020/12/7〜2020/12/13】|KIQ REPORT
ちなみにこの2本の映画の間に、テレビドラマ「親バカ青春白書」を手掛けていますが、そこには今日俺の出演者がよくゲスト出演しており、映画人気を上手くドラマ人気につなげようという意図が見えます(放送枠も同じ日曜劇場です)。そして、さらにそこで福田ブランドは拡散していたかもしれません。見逃し配信率もやはり高く、日テレ歴代2位だったそう。福田雄一はネットに強い人であると言えそうです。
『親バカ青春白書』初回見逃し配信の再生回数が日テレドラマ史上歴代2位に|Screens|映像メディアの価値を映す
Body3 福田監督の考え方
笑いと届けたいという思い。。。。つらいことがありすぎる今年、映画館に逃避したい人にとって福田作品の肩の力の抜けた笑いはちょうどいいものだったかもしれません。
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それに結構なチャレンジャーでもある。
【テレビの開拓者たち / 福田雄一】当たるものより、当たる“かも”しれないもの? 気鋭のヒットメーカーの作品づくりの極意 (1/3) | 芸能ニュースならザテレビジョン
『雄一さんは、当たるものをやらないよね。当たる“かも”しれないものをやるよね。そこがえらい!』って。えらいかどうかは別として、確かにそうかもしれないなと思ったんです。
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今回のヒットで、ヒットメイカーとしての福田雄一の実力は本物になったと言えるでしょう。
まだ52歳ですから、作り手としてはこれからが本番かもしれません。今後も日本映画のヒットメイカーの一角として活躍するでしょう。
そのほか参考リンク
新解釈・三國志
ひっそりと公開しようと思っていたんですが…。さすがにそこはゴージャスなお正月映画としてプロモーション計画を練ることになりました。
親バカ青春白書。。。今年8月から9月に放送、平均視聴率8.8%
2020年 夏ドラマ 視聴率・継続率「半沢直樹」「BG~身辺警護人~」「MIU404」「ハケンの品格」「SUITS/スーツ2」「私の家政夫ナギサさん」「親バカ青春白書」「私たちはどうかしている」…めじろ押しの2020年夏ドラマ! | ソレユケ テレビ探偵団
継続率は悪くなさそう
今日おれの役者陣がゲストにいっぱい出てきている。。。同じ放送枠なこともあり
ヲタクに恋は難しい
読書好きが選ぶ、冬のメディア化作品期待度ランキングを発表 ~1位は福田雄一監督で実写映画が公開予定の『ヲタクに恋は難しい』が獲得~|株式会社BookLiveのプレスリリース
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メモ終わり。
福田監督は深夜ドラマで『親解釈・日本史』という作品を撮ったことがあります。今回の『親解釈・三國志』はそれの三國志版なわけですけど、本当はもっと低予算でやる予定だったっぽいですね。この記事でプロデューサーがそんなようなことを言っています。
福田監督のブランド力は着実に上がっていると言えるでしょう。嫌いな人もそのぶん増えているようですが、裏を返すとそれもブランド力が向上したと証なのかもなあと思ったりもします。
少なくとも、コロナ禍に苦しみ映画館の救世主の1人だったことは間違いないでしょう。『今日から俺は!! 劇場版』がヒットしていなかったらもっと多くの作品が公開延期になっていた可能性が高いです。あれで「いけそうだ」という雰囲気になったとこありますよね。
『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』、『プリキュア』など子供向けの映画が客足悪かったんですけど、『今日から俺は!!』にはチビっ子連れた家族連れがたくさん来ていました。今年一番成功した子供向け映画だったんですよね、あれは。