スカパーさんが会員向けに発行している会報誌「スカパー!と暮らす」の8月号、戦争映画特集で戦争映画の変遷やタイプについて取材でコメントしました。
8月の終戦記念日に合わせてスカパーさんで戦争映画特集をやるとのことでしたので、放送予定の中からいくつかの作品について語っています。戦争映画がどのように戦争を伝えてきたのか、各作品の方向性や特徴などについて語りました。
具体的には、以下の6作品について語りました。
・人間魚雷出撃す
・日本のいちばん長い日(原田眞人版)
・終戦のエンペラー
・野火(市川崑版)
・火垂るの墓
・この世界の(さらにいくつもの)片隅に
実写から4本、アニメから2本。戦争被害を描いたものに加害を描いたもの、終戦処理を描いたものなどそれぞれ視点の異なる作品を選んだつもりです。スカパーさんでは外国の戦争映画も放送していましたが、日本の終戦記念日なので、日本のものから選びました。あと、制作年代も新旧偏らないように心がけました。
それぞれの作品については、なんとなく、以下のようなことを語っています。
反戦系
・人間魚雷出撃す
アメリカのジャーナリストから質問を受ける艦長。インディアナポリス号が原発を運び終わった後に撃沈した。若い命を散らさなければいけない不条理に悩む艦長
・野火
戦場で戦った人を描いたわけじゃない。餓死や病死で悲惨なことになり、人肉を食べるまで追い詰められた兵士たちの話。こちらのバージョンはまだ悲惨さや加害性は抑えていて、幻想的なシーンもあったりする。ゾンビみたいに日本兵がウロウロしてる。
客観的に分析するような視点
・終戦のエンペラー
アメリカ側から日本の不思議な精神性を描いている。
脚色されているが、冷静な視点で日本の天皇の戦争責任の有無を問うている
・日本のいちばん長い日
旧作と比べるとなぜあのような事件が起きたかというメカニズムや、それぞれの登場人物の思惑を深く掘り下げて、昭和天皇の考えなども描いている。旧作は、その1日に起きた出来事を「現象」として外から客観的に捉えるみたいな感じ
阿南陸軍大臣の描写が異なる。陸軍の青年将校たちの暴発をギリギリまで抑えるために葛藤していたという解釈になっている。
自決の理由も、仮にクーデターが成功してしまった時、あなみ大臣がいなければ、担ぎ上げる人がいないから正当性を失うことになる。なので自分が自決しておけば絶対にクーデターは成功しないという考え。
昭和天皇の関与と貢献もはっきり描いている
イデオロギーをなるべく排して日常を細かく見せる、その時代に生きた人を見せるのが目的
・火垂るの墓
日常の悲劇を再現する。餓死のリアリティ。神戸の空襲
監督は岡山で空襲を体験している。その体験なども反映されている。
アニメじゃないと挑めないリアリティに挑んだ作品。
・この世界の(もうひとつの)片隅に
呉の日常、笑いも涙も悲劇もあった日常を徹底した時代考証で蘇られている。
戦後の枕崎台風も描いていたりする。空襲で死んだ人の数より多かった。
戦争の証言者は当時子どもだった。子供の視点は全てとは言えない。なので、客観的に膨大な資料を集めて、作品つくりにのぞんだ。
スカパー会員でないと、なかなか読む機会はないかと思いますが、もし手に取る機会があったら読んでみてくれると嬉しいです。