リアルサウンドブックに、マンガ『極主夫道』の書評を書きました。
『極主夫道』に感じる『ごっつええ感じ』の“ズレ” 作品の強度を高める笑いのメカニズムとは?|Real Sound|リアルサウンド ブック
「ズレの理論」をもとに、オーソドックスにこの作品の笑いのポイントを解説したつもりです。非常にクレバーな作りになっていて、お笑いをすごくよく知っている作者なんだなと思いますね。笑いが読んでいるこちらにとって無害であることが保証されていないといけないわけですが、ヤクザがいまや無害なものだというのが、本作のポイントだと思います。
最後のオチのなさが「ごっつええ感じ」ぽいところがありますね。スッと終わってしまうところとか。
マンガもいいけど、アニメもマンガのテンポをうまく落とし込んでます。アニメなのにあんまり動かないんですけど、それはそれでシュール。
以下、原稿作成時のメモと構成案。
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Point3つ
笑いはどうして起きる?無害なズレが面白い
笑いは平和構築に役立つか – 修士論文/卒業論文 – コンテンツ種類一覧 – 広島大学 学術情報リポジトリ
ズレの理論は、パスカル(1623ー1662)、カント(1724ー1804)、ショーペンハウアー(1788ー1860)などの哲学者によって唱えられてきた。ズレの理論では、期待と現実のズレが笑いを引き起こすとしている。それは、パスカルの「予期したことと実際に観ることの間に生じる驚くべき不釣合い以上に笑いを生み出すものは何もない」という言葉やショーペンハウアーの「いついかなる場合にあっても笑いの原因とは単にある概念と、何らかの関連のうちにその概念によって考えられてきた現実の対象とズレに関する突然の知覚であり、笑いそのものはそうしたズレの表現に過ぎない」という言葉に凝縮されている。しかし、ズレが笑いを引き起こすには、そのズレた結果が無害でありそのもたらす感情が小さいものに限定される。たとえば、母親の方へ走り出した幼児が突然バイクにはねられるという状況っは、予期したことと現実との間にズレは生じているが、笑いをもたらすことはない。
ヤクザは無害なキャラなのか問題
ヤクザって昔から映画とかマンガにはたくさん出てくるし、日本では親しみやすい「キャラクター」でもあるのでイメージはしやすかったです。 【インタビュー】『極主夫道』おおのこうすけ 「人に寄り添うようなマンガを描き続けたい」|コミスペ! (comicspace.jp)
オチのないシュールさ。。。ダウンタウンのコント的な感覚
ショートコント的な味わい
どうズレを表現しているか。。。猫ちゃんピーラーのエピソード
実際にダウンタウンのコントに影響を受けたと言ってる
おおの ジャンルと言えるかどうか分かりませんが、僕はコントが好きなんです。「ダウンタウンのごっつええ感じ」とか「笑う犬の冒険」とか、昔からコント番組をよく見ていましたね。
おおの そうですね。もともとちょっとシュールというか、「外し」が多いものが好きだったんです。「どかーん」ってぶち上げて大笑いで終わるものよりは、「すっ」て引いて終わるみたいな……。『極主夫道』と『孤狼の血』の作者が明かす 「極道」をテーマに作品を描いた理由 | 対談・鼎談 | Book Bang -ブックバン-
Intro
極主夫道が面白い
何が面白いのか。笑いのエッセンスがわかりやすくある。笑いを素人にも教える上で最適な教材か。
笑いの基本にすごく忠実なつくり
Body1 笑いのズレの理論
ズレの理論とは
無害なズレじゃないといけない。
Body2 ヤクザは無害なキャラなのか
なぜヤクザか、作者のコメント
ヤクザは親しみやすい「キャラクター」・・・かっこつきである点がポイント
↓
フィクショナルな存在としてキャラが立っていて、一般的にもその一人歩きしたイメージがよく知られている。共通のイメージが広くある。
専業主夫をヤクザがやるズレ。主婦(主夫)のステレオタイプをあえてヤクザにやらせる。緊張と緩和。。ヤクザの姿は緊張、主夫のやり取りは緩和
Body3 オチのないシュールさ
すっと引いて終わるのが特徴。。。ダウンタウンなどのコントは当時、そのオチのなさが画期的だった。
その影響があるのでは。本人もよく見ていたと語る
↓
どんな点にその影響がみられるか。
12話のやり取りを例にする
猫ちゃんピーラーをツメ剥いだろかと解釈してしまうズレ
そして、そのままの勢いですっと終わる
なにげに構図やレイアウトの取り方も上手い。ヤクザの見た目の威圧感を出すためにあおりの構図を徹底し、すっとロングのコマで距離をとって笑いにつなげる。
笑いの作り方の勉強になる作品だ。ギャグの奥の深さを知れる。
参考リンク
お笑いを論理的に分析しているサイトはありませんか?よろしくお… – 人力検索はてな
OK?ひきこもりOK!。。。宮台:宮台─話は飛びますが、お笑いを語ることでも、教育問題は論じられます。お笑いの本質は、互いに共有すると期待される無害なズレから生まれます。
笑いは平和構築に役立つか – 修士論文/卒業論文 – コンテンツ種類一覧 – 広島大学 学術情報リポジトリ
ズレの理論は、パスカル(1623ー1662)、カント(1724ー1804)、ショーペンハウアー(1788ー1860)などの哲学者によって唱えられてきた。ズレの理論では、期待と現実のズレが笑いを引き起こすとしている。それは、パスカルの「予期したことと実際に観ることの間に生じる驚くべき不釣合い以上に笑いを生み出すものは何もない」という言葉やショーペンハウアーの「いついかなる場合にあっても笑いの原因とは単にある概念と、何らかの関連のうちにその概念によって考えられてきた現実の対象とズレに関する突然の知覚であり、笑いそのものはそうしたズレの表現に過ぎない」という言葉に凝縮されている。しかし、ズレが笑いを引き起こすには、そのズレた結果が無害でありそのもたらす感情が小さいものに限定される。たとえば、母親の方へ走り出した幼児が突然バイクにはねられるという状況っは、予期したことと現実との間にズレは生じているが、笑いをもたらすことはない。
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バンチ読切セレクション 【2017年vol.14(GOGOバンチ)】 |PaPa’s Cooking!~父と呼べた日~
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メモ終わり。
哲学者の論じてきた笑いの「ズレの理論」を参考にして、この作品でそれがどう実践されているかを解説、それが「ごっつええ感じ」にどう似ているか、具体的なコントを挙げて比較してみる、という構成にしました。
おおの先生がダウンタウンのコントが好きだとインタビューで語っていたのも大きかったです。今の時代っぽい作品だなと思うのは、やはりヤクザが無害な存在であるというところでしょうか。ここで言われているヤクザは、フィクションの中の想像上のヤクザで、本物ではないです。もう身近にヤクザが存在していることが少ないので、無害なものになったんですね。
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