リアルサウンド映画部に、ロシア映画『親愛なる同志たちへ』のレビューを書きました。
『親愛なる同志たちへ』に凝縮された国家と個人の戦い “ミクロな物語”を知る大切さ|Real Sound|リアルサウンド 映画部
ロシアという国の成り立ちにもかかわる内容で、今のウクライナ情勢のこともあってタイムリーな面もある作品だと思います。
ソ連時代の共産主義のイデオロギーを信望する人が主人公なのが面白いところです。彼女が国家の非道な行いを目撃してしまい、娘の安否とともにその心が揺らいでいく様を描いています。
原稿は「国家のイデオロギーという大きな物語と母と娘という小さな物語のコンフリクト」を軸にしました。この2つの物語が主人公の中で葛藤を起こす要因になっているからです。
大変おもしろい作品です。暴動シーンは背筋の凍るような怖さがあります。
以下、原稿作成時のメモと構成案です。
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Thesis
ソ連とはどういう国だったか。マクロとミクロの人間模様から見つめ直す
ウクライナ情勢といかに絡めることができるか
ウクライナ国境に近い
Point3つ
国家への忠誠と娘の安否に引き裂かれる・・・・まさに個人と大きなものが衝突する
モノクロ・スタンダード
コサックの父という存在。。。3世代の家族、父、母、娘
Thesis
国家のイデオロギーという大きな物語と母と娘の小さな物語の衝突
人は国家なくして生きていくのは難しい
だが、国家の描く大きな物語に煽動されるのはまずい。。。共産主義以外の内を信じれば
そのために小さな物語を見失わないこと・・・母が娘の行方を捜す姿はその小さな物語を取り戻そうとあがくかのようんだ
より大きな人類の歴史の物語へと向かうこと。。。父がコサック、土地に根付くコサックの歴史をにおわせる
Point4つ
市政委員会のメンバーである主人公・・・体制側、工場労働者である娘・・・ストに参加
見たくない、認めたくない事実は隠ぺいする・・・・アスファルトで流血の跡を埋める
物価高騰と食糧不足、給料の下落、、、不満が爆発
ダンスパーティのシーン・・・文化で惨劇を覆い隠そうという意図・・・文化にも責任はある
ミュージカル映画の歌が頭から離れないという主人公。。。プロパガンダ映画
Intro
ウクライナ情勢で、改めてロシアという国はどういう国なのかを考えざるを得ない時期
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そんな時に、ソ連・ロシア近現代を生きた巨匠がソビエトの過去を描く作品が公開
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概要。ノボチェルカッスク事件から始まる母と娘の物語
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大きなイデオロギーと小さな物語に引き裂かれる主人公
Body1
ノボチェルカッスク事件とは
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物語のポイント
主人公は体制側
娘は工場労働者側
父はコサック兵の軍服を大切にしている
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スターリンを崇拝し、共産主義以外何を信じればいいのかという主人公
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そんな政府に反発し、ストに参加する娘
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KGBの男とともに国家に背く行動に出るが、
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彼女の葛藤は、国家という全体装置の一部であることに喜びを感じる主人公ならではだ。
国家の恐ろしさが自分の娘にも向いてしまったことが、彼女の葛藤の源泉
人は複数の立場を生きる。
全体主義者のイデオロギーの市政委員会と娘を案じる母親。一人の人間の中で両者が分裂してゆき苦しむ
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大きな物語と小さな物語
国家に動員されないためにも小さな物語への感性は重要だ。彼女はそれを惨劇前にわかっていなかった。
ミクロな物語を取りこぼさないことこそ、芸術ができること
Body2
流血に染まったアスファルト、水で洗い流しシーンを丹念に見せるカット
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無言で誰も何も言わないが雄弁に映像が語るカットだ。
さらに洗い流りきれないとわかると、道路を新しいアスファルトで舗装してしまう。
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まさに国家の隠蔽を、映像的に具体化している。
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それだけではない。惨劇の中心となった広場で、翌日にダンスパーティを開催する異様さ。
文化は時に、国家の隠蔽や目くらましに加担させられることもあるのだ。
主人公の歌・・・・プロパガンダ映画『恋は魔術師』の歌が頭にこびりついて離れない主人公
ここにはある種の文化の罪も描かれている。
モノクロ・スタンダードサイズの映像は、当時の雰囲気を見事に再現し、観る人を惨劇の目撃者に仕立てる。大きな物語とそれに加担する文化に惑わされずに、冷徹に真実を見つめること、そして、そのために小さな物語へのまなざしを忘れないこと。
今の世界情勢に触れる時にもこの点を大切にしておくべきだ。大きな物語に流されずに小さな物語の小さな声を聞くこと。その小さな声の集積で世界は成り立つ。それは大きな物語に回収しきれるほどに単純ではないはずだから。
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映画という芸術にできることをやっている作品。
それを大切にしている作品だ。
封鎖された街の外に出るという行為は、そのまま自分の信じていた常識やイデオロギーの外に向かうことにつながっている。
参考
ロシアの地域格差は何と62倍! 極端な貧富の差が生じるからくりとは:朝日新聞GLOBE+
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メモ終わり。
主人公のお父さんがコサックの軍服を大事に持っているのもかなりユニークなポイントだと思ったんだけど、うまく入れられなかったです。コサックの歴史もこの映画の背景にはあるんですね。
モノクロ、スタンダードサイズなのも歴史を感じさせていい味を出しています。
非常に見応えある作品なので、是非ご覧になってください。
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