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宣伝しない『君たちはどう生きるか』を受けて、ジブリの宣伝の歴史を書きました

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 シネマズPLUSに、スタジオジブリの宣伝戦略の歴史について書きました。

 【君たちはどう生きるか】時代に寄り添い続けるジブリ宣伝の“本質”とは? | CINEMAS+

 『君たちはどう生きるか』を一切の宣伝なしで公開するという、驚くべき手法に打って出たスタジオジブリですが、これまでの宣伝の歴史を振り返ってみると、その戦略の深い意味を見いだせるかも知れないと思って企画した記事です。

 ジブリの宣伝は一言でいうと、作品の本質に寄り添うということになると思います。とにかくアテンションと取ればいいというやり方というよりは、作品の本質をどう伝えるかに注力しているような感じがします。

 もうひとつ言えば、『ハウルの動く城』の時に宣伝をあまりしないという方針をやったことがあります。鈴木敏夫さんの宣伝の出発点は企画の出発点にあるという言葉が印象的です。

 
 
 以下、原稿作成時のメモと構成案。
 
 
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参考

スタジオジブリの歴史 – スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

「ハウルの動く城」の宣伝戦略はこれまでとは少し違っていました。つまり「宣伝をしない宣伝」です。最近の洋映画の宣伝が事前にほとんどの情報をCMや紹介記事で見せてしまい消費していることで、観客は事前に観てしまった様な気分になり、映画館に足を運ばなくなったのではないかと考えたからです。

この考え方に沿って、本格的な宣伝は公開前一ヶ月に集中し、地方キャンペーンもやめ、テレビスポットの投入も公開後を中心に据えました。また監督が作品を語ることもやめ、ストーリーもほとんど公開せず、予告編のテレビOAも見送ったのです。この宣伝方針は、ジブリにとって大きなチャレンジでした。いうなれば、これまでの宣伝戦略の否定ともいえるからです。結果として「ハウルの動く城」が大ヒットした現在、この挑戦はうまく行ったのではないかと判断しています。

さらに「ハウルの動く城」は初の試みとして、日本国内での公開より前に、第61回ベネチア国際映画祭のコンペ部門に出品されました。結果は「オゼッラ賞」を受賞し、公開前の事前宣伝に大きく寄与しました。さらには、翌年の第62回の同映画祭で、宮崎監督の長年にわたるアニメーション映画制作に対して、「金獅子栄誉賞」が贈呈されました。

宣伝しない宣伝手法で大ヒットした『ハウルの動く城』 | スタジオジブリ 非公式ファンサイト【ジブリのせかい】 宮崎駿・高畑勲の最新情報

ほぼ日刊イトイ新聞 – 『ハウルの動く城』のCMはこうしてできた。

CMないですねぇ?・・・戦略?! -『ハウルの動く城』のCMが非常に少ない- | OKWAVE

ヒットの秘密 ジブリの大博覧会<下>宣伝力 物語の本質を伝える【コラム】| アルトネ
 
 
Thesis

ジブリの宣伝の本質とは何か、歴史で紐解く
 
本格化した宣伝展開・魔女の宅急便。。狙った大ヒット

もののけ姫・・・記録更新しないと赤字になるという作品、

インターネットの活用は実は早かったジブリ。97年公開のもののけ姫で制作日誌を公開していた。日誌索引 – 映画『もののけ姫』制作日誌
 
タイトル・ビジュアル・コピーの考え方・・・補完しあう関係にする
 
ジブリの大博覧会

2004年、ハウルの動く城で宣伝しない宣伝に挑む

しかし、ポスターのファーストインパクトは強かった。「この城が動く」

宣伝とマーケティングの関係

宣伝ゼロだけど、マーケティングの結果としてはそれはある?

しばしば逆をいって目立つという作戦をする鈴木敏夫

予告の作り方など、キネマ旬報の宣伝の部分で語っている。

作品の本質をきちんと伝えることができている

今回の君たちはどう生きるかの本質は?
 
 
Point3つ

これまでのジブリの宣伝の歴史

今回の宣伝なしもジブリの宣伝の本質に合致するか

宣伝よりもマーケティングの時代?
 
 

Intro
君たちはどう生きるかの好調な成績が業界内では大きなトピックになってる。

宣伝をしないで初週で20億円を超える興行成績。

この宣伝しない宣伝という手法は果たしてジブリの宣伝の歴史の中でどう位置付けられるのか、その宣伝の本質を考えてみたい。
 
 
Body1 ジブリ宣伝の歴史
– 大きく宣伝に舵を切ったのは、魔女の宅急便から。

明確に意識して当てようと宣伝を重視し始めたのは『魔女の宅急便』から。「あれは少しお金を稼がないといけなかった(笑)。」(『熱風:スタジオジブリの好奇心』2016年8月号、P49)
– ポスター作りの極意。。。鈴木氏と奥田氏の証言などから。

ポスターは映画のタイトル、ビジュアル、コピーで情報を補完し合った方がいいということです。例えば、『魔女の宅急便』(89)では、映画のタイトルで魔女が空を飛ぶことが分かっているから、その情報はビジュアルにもコピーにもいらない。それでビジュアルをパン屋の店番をしているキキにして、”おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。”というコピーを入れることで、これが思春期の女の子の話ですという情報を加えたんです。(『キネマ旬報』2016年7月上旬号、P47)

– 地方キャンペーンを熱心にやったのはなぜか

昔シネコンが少ないときは、日本でつくる映画は、日本を5つに分けて、だいたい関東でお客さんが6割から7割入っていたんだよね。それ以外で残りの3割、4割。ところがジブリは、伝統的に地方が70%で、関東が30だった。(『熱風:スタジオジブリの好奇心』2016年8月号、P51)

それが後に地方キャンペーンにつながった。ここを参照。映画の地方宣伝から、これからの映画の話まで―スタジオジブリ鈴木敏夫さんインタビュー | キネプレ https://www.cinepre.biz/archives/24860

– もののけ姫で公式サイトに制作日誌を。。。ネットを使うのは早かった

インターネットの活用は実は早かったジブリ。97年公開のもののけ姫で制作日誌を公開していた。日誌索引 – 映画『もののけ姫』制作日誌 https://www.ghibli.jp/diary_m/diary.html

– 千と千尋でローソンタイアップ。。。コンビニからヒットが生まれていることを見抜いていた。

当時はローソンで曲を流すことでヒット曲が生まれていた。コンビニは若者たちが集まる場所でしたから。

– ハウルで宣伝しない宣伝をすでにやっていた、、、君たちとは異なり、情報を絞って宣伝

「ハウルの動く城」の宣伝戦略はこれまでとは少し違っていました。つまり「宣伝をしない宣伝」です。最近の洋映画の宣伝が事前にほとんどの情報をCMや紹介記事で見せてしまい消費していることで、観客は事前に観てしまった様な気分になり、映画館に足を運ばなくなったのではないかと考えたからです。

この考え方に沿って、本格的な宣伝は公開前一ヶ月に集中し、地方キャンペーンもやめ、テレビスポットの投入も公開後を中心に据えました。また監督が作品を語ることもやめ、ストーリーもほとんど公開せず、予告編のテレビOAも見送ったのです。この宣伝方針は、ジブリにとって大きなチャレンジでした。いうなれば、これまでの宣伝戦略の否定ともいえるからです。結果として「ハウルの動く城」が大ヒットした現在、この挑戦はうまく行ったのではないかと判断しています。

さらに「ハウルの動く城」は初の試みとして、日本国内での公開より前に、第61回ベネチア国際映画祭のコンペ部門に出品されました。結果は「オゼッラ賞」を受賞し、公開前の事前宣伝に大きく寄与しました。さらには、翌年の第62回の同映画祭で、宮崎監督の長年にわたるアニメーション映画制作に対して、「金獅子栄誉賞」が贈呈されました。

– スタジオジブリの歴史 – スタジオジブリ|STUDIO GHIBLI

それから映画館で流す予告篇が、再び力を持つ時代が来た。というのは映画館の年間観客動員数がほぼ固定されてきたんですね。要するに、年間何本も映画を観る人がいて、映画館へ行く人の数は決まっているというデータが出たんです。その人たちに向けて宣伝を厚くするために、予告篇が重要になってきたわけです」(『キネマ旬報』2016年7月上旬号、P49)

映画館での鑑賞頻度を映画サイトユーザーとネット平均で比べると、その差は歴然。「年0回」の割合はネット平均が50%超に対し、映画サイトユーザーはわずか1・8%。また、年5~9回(ミドル層)、10~19回(コア①層)、20~39回(コア②層)で全体の約60%と大きな割合を占める。16年の年間興収が2355億円、22年が2131億円とコロナ禍前後で200億円余の差があるが、芳賀氏は「そのほとんどがミドル、コア①②層の離脱により失われた」とし、この層を劇場に呼び戻す必要性を説いた。

– 鈴木氏の映画宣伝の美学とは。

宣伝というのは、たいてい企画の出発点のところにモトがあるんですよ。

『ハウルの動く城』(2004)では原作があったんですけど、企画段階では、本来動くはずのない白が動いたら面白よね、と宮さんが考えたところからスタートしています。

それで城のデザインを造ったら、ロゴを入れる、そしてコピーをシンプルに入れる。

今の世の中って明らかに情報過多で、事前情報を確認するために映画を見にいってるようなところもありますよね。(『文藝春秋』2023年月号、P492、「鈴木敏夫はどう生きるか」)
 
 
Body2今回の宣伝をどう考えるか
その美学と本質に照らし合わせて、どうなのか。

情報過多の時代に情報を遮断することで、逆に目立つという可能性と限界、、、やはり若年層に認知されづらかったのは事実としてあった

しかし、映画は固定された客が見に来るものになっている。そのコア層をまずは捕まえていくことが重要になってるのも事実で、それをちゃんと抑えたやり方とは言えるかも

作品の本質としてはどうか。。。わからないと言うか、イメージの濁流にのみ込まれるような体験。

宣伝は見方を固定してしまう、それをなるべくしないのが作品の本質につながってる

これまでも作品の本質を伝えることを重視している。

魔女の宅急便でも、快活なイメージだけを全面に出すのではなく、思春期の悩みをきちんとポスターに盛り込んでいる。

千と千尋の神隠しでは、観客に人気の出そうな美少年ハクというキャラがいるけれど、それを全面に出す宣伝はしていない、むしろカオナシのような存在の方が目だつ。

そういう意味では本質をきちんと伝える、というより伝えないこと自体がメッセージになっている。今回は。

とはいえ、2週目の週末の興行は前の週から6割ダウン。ここから先は、ある程度情報を得てからじゃないと見に来ない人が多そうな気もする。
 
 
Body3宣伝よりマーケティング?
– USJの盛岡毅の言葉を引用

宣伝という概念が付いている会社、もしくは業界というのは、どちらかと言うと、マーケティングに近代的に取り組むことに遅れているという、全体傾向はちょっと感じます。(『熱風:スタジオジブリの好奇心』2016年8月号、P4)

消費者もこちらに要求してくる時代、ブランドを作るには。

行動へとつなげる気持ちを動かさないといけないという指摘

マーケティングは、顧客のニーズを満たすために行う活動の総称であり、コミュニケーションをとってほしいなら、そうするし、情報を隠してほしいならそうする、みたいなとこもある。

商品やサービスが自然に売れる仕組みを構築することに意味がある。

その意味で、宣伝しないで売れたのだから、ブランドの構築を含めてマーケティングはできているとも言える。

テレビの時代じゃないし、コンビニの時代でもない、情報は自分で取って選ぶものの時代にどうすべきかを考えての結論。

しかし、情報の持ち方にもばらつきはある時代でもあるので、プッシュ型の宣伝が全く無効な時代でもない。

映画宣伝も公開前と後では様子を変えてくるこことが増えている。

公開から2,3週目で冒頭10分公開とかやる作品が増えているのは、公開の週に動く人と、3週目くらいに動く人では、そのコンテンツに対する情報量や熱量にかなり差があるということなんで、動かすには別の情報が必要になるということだろうと思われる。

時代によって変化してきたジブリの宣伝、しかし作品の本質を伝える姿勢は変わっていないと言える。

それでもジブリは公式から出さないのか。ツイッターのハッシュタグのイラスト表示くらいしかやってない、完全に人々の口コミの中で、自ら考えてもらうことを優先する、ただ、これも作品の本質を伝えると言う点で、「君たちはどう生きるか」というタイトルですが、「見に行くか」どうかも自ら考える。その考えることそのものの楽しさとか歓びを取り戻してほしいという、「宣伝しない宣伝」からのメッセージと言えるかも。
 
 
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 メモ終わり。

 宣伝よりもマーケティングの時代、という結びにする予定でしたが、ジブリの話からは外れるために割愛しました。でも、割愛しなくてもよかったかもしれないなと今はちょっと思っている。宣伝しないという今回のやり方は、それはそれでスタジオジブリのブランド力を高めるための方策にもなっている気がしますし、宣伝でプッシュして選ばせるのではなく、顧客に自ら選んでもらうという体験をさせるという点で、宣伝しないはそれを究極的に推し進めた方法と言えるかも知れないです。

商品やサービスが自然に売れていく状態を作るのが最良のマーケティングで、ジブリは宣伝しないことでその状態を作った友言えますよね。ただ、それで潜在的な観客を全て取れたかと言うとそうは言えないかもしれない、やっぱりある程度情報をプッシュして届けないととどかない層はいるよなという気もします。二週目が60%ダウンですから、やっぱり全国のあらゆる世代まで届きっていないかも。
 

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