2023年12月20日に僕の初めての著書『映像表現革命時代の映画論』が、星海社新書から発売されることになりました。
すでにAmazon他、ネットショップで予約はスタートしています。
本書はリアルサウンド映画部で連載していた、実写とアニメーションの境界を引き直すという連載をベースにしています。連載は2,3年やってましたが、ウェブに掲載した内容から大幅に加筆・修正し、書き下ろしも加えて単行本化したものになります。
やっと出たよ!
いったい、どんな本なのか簡単に解説してみたいと思います。
私たちが観ているのは実写か、アニメーションか?
みなさんが好きな映画は実写作品ですか、それともアニメーション作品ですか? これまで私たちは、映像作品を「実写」と「アニメーション」に区別してきました。しかし近年、実写には実物かCGか区別不可能な、アニメーションには実物かと見紛うほどリアルな映像が増え、その境界は曖昧になっています。本書では、進化を続ける映画カルチャーを長年追う著者が、実写とアニメーションの二分法を疑い、そこに隠蔽されてきた「実写映画中心主義史観」を乗り越えるべく、話題作の映画が提示する可能性を大胆かつ緻密に検証します。この映画論とともに、新たなる映像の世紀へと踏み出しましょう!(星海社新刊案内より)
本書は、昨今のテクノロジーの進化と映像演出の発展によって実写とアニメーションの境界が引きにくくなった現代の映像世界を積極的に肯定していき、新しい時代の映画論を考えてみようという内容です。
批評や賞レースなどで、実写とアニメーションはなんとなく棲み分けられてきましたが、例えば、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』などはモーションキャプチャから起こしたデータで全編を3DCGで制作している作品で画面に写っているのはデジタルの絵であって直に撮影した風景ではありません。そういう映画がどんどん増え、かつてないほどに実写とアニメーションの境界がわからなくなってきました。
そういう今日の映像カルチャーを、近年の作品、一般にアニメーションと思われている作品・一般に実写と思われている作品、を取り上げて様々な角度から映像のあり方について論じています。アニメに中にある実写映画的要素、実写映画にあるアニメーション的要素などを丁寧に論じ、さらに映画の歴史を振り返り、アニメーションと実写に本当に違いはあるのかを問い直しています。
もちろん、アニメーションと実写映像は違いはあるのです。しかし、違い以上に共通点のほうが多いと筆者は思っています。その共通点はどんどん増えています。「こういう映像は実写じゃ無理だよね」と思われていたような演出が可能になったり、その逆もあります。例えば『マトリックス』はアニメ的な演出を実写映像に持ち込んで世界をアッと言わせました。両サイドからそのような越境的な行為がどんどん増えていき、かつてないほどに実写とアニメーションは重なりあっているのです。
そして、時代はAIの時代になりました。AIによって実写の映像をアニメーション風の絵のテクスチャーに変換したり、その逆をやってる映像をSNSでよく見かけるようになりました。おそらく実写とアニメーションの重なりはこれからどんどん加速していくでしょう。
そういう未来の映像に向けてこの本は書きました。実際にAIについて章を割いています。以下は目次になります。
第一章:現代アニメに息づく映画史
- 「列車映画」としての『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
- アニメのメロドラマ的想像力『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』
- アニメーションに即興は可能か『Away』
- アニメは震災という現実を記録できるか?『すずめの戸締まり』
第二章:実写とアニメーションの間隙
- 『るろうに剣心』の実写ならではの魅力
- 第3の空間『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
- バレットタイムと複層する時間『マトリックス』
第三章:フレームレートとテクスチャー
- 『PUI PUI モルカー』で考えるピクシレーションとフレームレート
- モーションキャプチャとテクスチャー『攻殻機動隊 SAC_2045』
- 48と24『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』
第四章:実写とアニメーションの弁証法
- 「アカデミー賞」をめぐる、実写とアニメーションの弁証法
- トーキーという分断点、デジタルという結節点
第五章:AI時代の演技論
- ジム・キャリーのアニメーション的身体
- AIで復活したヴァル・キルマー『トップガン マーヴェリック』
- 生成AI時代の芝居と心をめぐる考察
本書のキーワードは3つ。実写、アニメーション、AIですね。今後、さらなる紹介記事を書いていこうと思いますので、お楽しみに!
【1月6日追記】
本書の最初の30ページが試し読みできるようになっています。
『映像表現革命時代の映画論』杉本穂高 – 星海社新書 | ジセダイ
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