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是枝監督提言の新資本主義会議:コンテンツ産業の人材支援と海外展開戦略の転換点

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Brancに、是枝裕和監督や山崎貴監督も出席した新しい資本主義会議について、コラムを書きました。

政府は今度こそコンテンツ産業の人材支援に向かうか。是枝監督も提言した新しい資本主義実現会議の内容とは | Branc(ブラン)-Brand New Creativity-

4月17日の「第26回新しい資本主義実現会議」はコンテンツ産業にまつわる話し合いが行われました。テーマはテーマは「官民連携によるコンテンツ産業活性化戦略」。日本の文化支援行政は長いことうまくできない状態が続いていますが、今度こそそれを変えようという意気込みを感じさせる内容だったので、取り上げました。

これまでと違い、第一にクリエイターの支援をすることを最重視する姿勢が掲げられたのは、大きな前進です。会議には公正取引委員会も出席していて、人材支援をするには、これまでよりも大きな市場を獲得する必要があるとセットで海外市場開拓も指摘されていることで、的をいた議論ができていると感じます。

この会議で話されたことがきちんと仕組みとして実現できれば、かなりいい感じの文化行政が実現できるかもしれません。日本の文化行政が変われるかの瀬戸際の重要な場面だと思います。今後も注視していきたいです。
 
 
以下、原稿作成時のメモと構成案。
 
 
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TITLE:政府のコンテンツ支援は今度こそ人に向かうか。是枝監督も提言した新しい資本主義実現会議
 

Intro

新しい資本主義実現会議が開催、総理大臣官邸にて。

これは何?

「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした新しい資本主義を実現していくため、内閣に、新しい資本主義実現本部を設置しました。

新しい資本主義の実現に向けたビジョンを示し、その具体化を進めるため、新しい資本主義実現会議を開催しています。

26回目の今回は、「官民連携によるコンテンツ産業活性化戦略」という議題であった。

政府機関によるコンテンツ支援は、長いことうまくいったためしがない分野だ。どうにも利権企業にお金が流れるだけのケースもあった。(根拠を示す。。。クールジャパンの事例などがいいか。本を参照する)

だが、今回は現場のクリエイターの育成を第一の課題に挙げている点は注目しておくべき。
 
 

Body1論点案で次世代のクリエイターの育成一番にあげている

新しい資本主義実現会議(第26回)|内閣官房ホームページ

日本総合研究所 翁百合の資料にはJaniCaの資料が添付。

若年層の賃金が低いことが指摘される。これは、こないだのNAFCAのJaniCaの比較の記事でも言及した通りだ。このことが政府レベルにも伝わったことには大きな意味があるだろう。

シブサワ・アンド・カンパニー株式会 代表取締役 渋澤 健

「新しい資本主義資本主義」の文脈においてのコンテンツ産業活性化戦略は「人」に焦点を当てるべき、すなわち、「人的資本向上」、「人への投資」、「構造的賃上げ」である。

IGPI グループ会長 冨山和彦
コンテンツ産業、エンターテイメント産業は本質的に「知識集約産業」であり、その価値の根源は「個人」の知的創造性に由来する。

東京⼤学 柳川範之

川上のクリエーターがしっかり収益を得られる産業構造にしていくこと

日本労働組合総連合会 会長 芳野 友子

〇連合が行った文化芸能芸術分野で活躍しているフリーランス当事者や関係者との意見交換では、「契約概念自体が曖昧」、「業務が完了するまで報酬の明示がない」、「長時間におよぶ業務や休日の取り決めが不透明」、「本来得られるべき二次使用料が払われない、交渉の機会もない」など契約に関する課題が寄せられた。また、放送番組の制作現場では、サブスク配信を見越して、短期間に多くの作品を制作していく風潮が加速しており、制作側だけでなく出演者も長時間労働が当たり前で、ハラスメントも含めて、特に立場が弱いフリーランスにしわ寄せが行きやすいとの声もある。

〇今後もコンテンツ産業を維持・発展させていくには、制作に携わり、様々なサービスを提供しているフリーランスの方々が、公正かつ適正に評価され、安心して働き、能力を発揮することができるルールの早急な整備が必要である。政府には、契約や労働環境などの課題解決に向け、実態を踏まえた指針やガイドラインを策定するなど、施策の強化を求めたい。

〇また、一般社団法人日本アニメーター・演出協会や長野大学企業情報学部の実態調査1・ 2によると、アニメーターの多くは制作会社を主な勤務場所としており、請負契約であっても労働者性が高い働き方をしている者も少なくない。持続可能な就業に向け、フリーランスで働く多くのアニメーターの報酬の引き上げにとどまらず、労働政策審議会において労働者性の判断基準を見直し、芸能従事者にも「労働者としての保護」を広げる必要がある。加えて、就業環境の整備を含めた安全衛生体制を強化するとともに、業所管省庁を通じた支援により、技能や経験の向上を推進する必要がある。
 
 

Body2公取の資料もあるということの意味を考える

岸田文雄首相は、是枝監督の提言に対し、「制作現場の労働環境や賃金の支払といった側面で、クリエイターが安心して持続的に働くことができる環境が未整備」だと見解を述べた。
 
 

Body3 海外市場がなければ、絵に描いた餅

海外市場の資料をここで用いる。ほとんどがアニメであることを示す。

アニメを伸ばすことも重要だが、実写市場も世界では大きい。ここで韓国に大きく後塵を拝している。

是枝さんの資料では海外展開の弱さについて触れている。

① マーケットブースにお⾦をかけていない 僕はカンヌ映画祭に⾏くことが多いのですが(9回)、海辺にはずらっと参加国の⽩いテントのパビリオンが並んでいます。その中にもちろん、ジャパンパビリオンというのがありますが、⽇本映画の情報発信基地としてはとにかく貧弱です。アピール⼒が弱いです。 昨年は、現地に役所広司さん・北野武さん・⻄島秀俊さん・浅野忠信さん初め、国際的に知名度の⾼い多くの映画⼈が参加していたのですから、彼らを⼀同に集めてパネルディスカッションが実現出来ていたら、⼤きな注⽬を集めただろうと思うのですが、残念でした。さらに、公式上映会場のお隣には、マルシェ(マーケット)という、各国の製作会社・配給会社のブースが⼯夫を凝らして⾃作をアピールするスペースがあるのですが(映画祭というとレッドカーペットが注⽬されがちですが、ビジネスとしてはむしろこのマルシェが主戦場です)、ここでの⽇本ブースも、⾔いにくいですが素通りしてしまうぐらい地味です。

国内に強い製作システムや映画産業の存在しない東南アジアや中東の監督や作品なら仕⽅ない側⾯もあるのですが、⽇本はそうではありません。このことはずっと疑問でした。そして、同じ疑問を持った韓国は、コンテンツの海外展開を⾃ら⾏うように変化して来ています。⽇本も、東宝の国際部が主導して北⽶配給を成功させた『ゴジラ-1.0』のケースをきっかけに、そのような意識が芽⽣え広がっていけば、国産の強いエージェントが誕⽣し、そこのブースに⾏けば⽇本映画の情報が⼊⼿できる状況になるだろうと思います。

文科省が海外展開の全体構想を一応練っている。

クリエイター・アーティスト支援と海外展開の戦略全体構想

労働環境改善には、より売上が必要。是枝さんが指摘する通り。

韓国ではこの52時間ルールにするにあたって、制作費は1.5倍から1.7倍になったという証⾔も得ています。すみません、正確な数字ではありません。⼀⾜跳びにここまでは無理としても、もう少し厳格なルールを定め、若いスタッフが安⼼して職場として映画制作を選んでもらうためには、少なくとも3割から5割の制作費アップが必要になると思います。 しかし、その増額に映連や⽇映協が耐えられるかは、かなり疑問です。せいぜい2割の増額でとどまる程度の「改⾰」しか、今の業界内の資⾦調達の仕⽅では難しいのではないかと思います。労働環境改善の責務は、⼀義的にはもちろん製作会社にあると思いますが、多くの中⼩の製作会社は採算分岐点ギリギリのところでビジネスをしているので、資⾦調達の仕組みそのものを変える必要があると考えられます。

これはプロデューサーレベルでも認識がある。

『私たちの声』プロデューサーが考える国際共同製作のメリットとは?「才能を世界に紹介する最短の方法」 | Branc(ブラン)-Brand New Creativity-

ハリウッドと比較して言うと、あちらは国を超えて撮影する時はプロダクション側が、現地の学校を手配したりベビーシッターを雇ったり、一切合切面倒を見るんです。それを日本でやるには製作費を上げる必要がありますが、そのためには日本の作品がより大きな市場で売れる必要があると思います。

つまり、労働環境改善と海外市場の開拓は同時に行っていく必要がある。鷲尾賀代氏はそれを積極的にやっていくために国際共同製作のスキームを使おうと試みる。

国際市場を開けるプロデューサーの育成は急務であり、VIPOでも国際プロデューサーコースを数年間に設置

「日本映画に必要なのは国際的なプロデューサー」VIPO事務局次長に国際プロデューサーコース設立の意義を聞く | Branc(ブラン)-Brand New Creativity-

そもそも国をまたいで共同で製作することは海外では当たり前です。欧州映画などは、複数の国の資金で作っているのが普通で、自国のファイナンスだけで製作してリクープするというのは、すでにそもそも成り立たなくなっているんです。アジアも同じ状況なので、日本もアジア・EU・北米との製作資金調達のノウハウを身に付けなければいけない状況に益々なってきていると感じます。

『PLAN 75』の水野詠子プロデューサーは第一回の参加者だ。

実際には、国際市場を切り開くというのも、人材の問題である。国内市場だけを見据えるのではなく、海外市場も含めてトータルにプロデュースできて、セールスエージェントともきちんと交渉なりして、資金を調達できる人材がいなくてはいけない。
 
 

Body4 仕組みが整えば、日本は世界トップをとれるか

是枝監督は日本の現状を卑下しているというより、せっかくのポテンシャルを活かせていないからもったいないという話をしている。

フランスやアメリカに匹敵する映画の歴史の豊かさを持ち、しかも産業としての⼒強さを維持している⽇本の映画産業は、世界的に⾒ても稀有な存在です。この新しい仕組みが実現し、国益ではなく、映画という⽂化の利益のためにその仕組みを役⽴てられたとき、⽇本映画のPresenceはかつてないほどに⾼まると思います。

僕のような狭い視野しか持ち得ない監督という⽴場の⼈間だけでなく、多くの異なる⽴場の⽅々からもヒアリングを重ね、専⾨家の知⾒を集約した上で⼤鉈を振るってください。よろしくお願い致します。 本⽇はありがとうございました。

日本映画のポテンシャルをわかっているから是枝監督は言っている。

また、本来は業界の共助システムができないかを考えてきた。しかし、映連は法律ができればやるという言い方をずっとしてきた。政府に頼るのはある意味、忸怩たる思いかもしれない。

今度こそ、政府支援は人の支援に向かうのか。ここで議論が間違った方向に行かせないためには、報道や一般の指摘も是非とも必要である。
 
 
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メモ終わり。

日本の文化は、海外で注目を集めており、非常に競争力が高いはずなんですが、文化行政の貧弱さがそれの足を引っ張っています。各国並みにするだけで、相当にポテンシャル伸びるはずなんです。これができれば、文化立国への道も開けるはずなので、今度も追いかけていきたいと思います。
 
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