リアルサウンド映画部に、アニメのキャラクターデザインと声の変更についてのコラムを書きました。
アニメキャラの魂は“声”か“絵”か 「声優変更」が「キャラデザ変更」以上に論争を呼ぶ理由|Real Sound|リアルサウンド 映画部
『ゆるキャン△ SEASON3』は制作会社がエイトビットに変更となり、キャラクターデザインが一新されています。より原作に近くなり、ちょっと大人びた感じになりましたね。
キャラデザの変更は外見の変更なので、大きな変化だと思うのですが、これ以上に論争になりやすいのが声優の変更です。声は変わると大きな論争になるけど、キャラデザはそこまででない。これはそもそもなぜだろう、と考えるためのコラムです。
これはアニメキャラクターの魂がどこにあるのか、という問題なのかなと思います。さらには、vTuberの魂の問題とも重なる話で、キャラクターとはなにか、人はアニメキャラの何にリアリティを感じ、共感を覚えているのか、集団作業の絵作りと個人作業の声の芝居の違いなど、いろんなファクターがあって、結構考えがいのあるテーマでした。
以下、原稿作成時のメモと構成案。
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参考
VR空間にも共通する、ビジュアルが同一性を担保しない世界|Real Sound|リアルサウンド 映画部
声の高低が政党党首の印象形成に与える影響
AIによる「声」の復活とその脅威 – mhatta’s mumbo jumbo
Thesis
アニメのキャラクターの魂は絵に宿るか、声に宿るか
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vTuberにまで話を拡げる
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人の印象は外見で決まるか声で決まるか、という一般論にも言えること
Point
ゆるキャン△の制作会社変更に見る、キャラデザの印象の違い、、、原作との比較
アニメ・マンガ記号論と声の芝居
vTuberの魂は声か?
人の印象を決めるのは外見か声か?
Intro
ゆるキャン△の制作会社変更になった、
c-stationから『ヤマノススメ』などで知られるエイトビットへ。
全体的に大人びた印象を受ける、劇場版で描かれた大人時代のなでしこたちより大人びた見た目になったかもしれない。
でも、それぞれのキャラクターが全く別人になったわけではない。テイストの変更に過ぎない。
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対して、声の変更は特に物議をかもす面がある。
声優人気を背景にしている面もあるかもしれないが、実際、野沢雅子以外の孫悟空は考えられない、色々なアニメーターが色々な悟空を描いても成立するが。
アニメとは絵の表現だが、声の表現する領域は広いのではないか。
アニメのキャラの魂は絵と声のどちらにより宿るのか
Body1 記号絵の利点、
アニメは集団作業であるため、キャラクターの絵を描く人間が大量に存在する。描いた人間が異なるのに、それを1つの統一されたキャラクターとして認識しているのは、アニメキャラクターの特徴となる記号が揃っていれば、認識可能であるからだ。
最近にアニメ作品は総作画監督が全ての絵柄を統一する方向で修正作業を行っていくが、少し前までは各話の作画監督がそれぞれの個性を出して、エピソードごとに異なる絵柄が観られることもあった。
それでも、各キャラクターデザインの特徴的な記号は引き継がれ、同一人物として認識しうる。
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アニメ・マンガ記号論の便利な点
ハンコ絵を揶揄されることもあったが、むしろ髪型や色、目の大きさや服装などある程度の記号さええ揃えれば、同一のキャラと認識しうる利点を生かしてアニメは発展している。
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記号的な絵柄には、ある種のフレキシビリティがある。
誰が描いても同じキャラと認識できる柔軟性があるので、アニメ表現はなりたつ。レオナルド・ダヴィンチのモナ・リザはダヴィンチ以外が描いてもモナリザにはならないだろうが、アニメキャラではそうではない。
そうなると、キャラクターの唯一性を担うのは絵を描く人間ではない、ということになるかもしれない。
そもそも、原作がマンガの場合、マンガとアニメで絵柄は異なる。それでも同一のキャラと認識しうる
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むしろ、毎週作画監督も原画も変わっても変わらないのは声優の方だ。
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記号的な表現の絵柄においても、声優の芝居が記号的でなく複雑さを表現することは多々ある。
その点でキャラクターの同一性を担保しているのは、むしろ声の方と言えなくもない。実際に同じ声優が毎週声を当てていて、絵の方は毎週異なるアニメーターによって描かれているなら、そこに誰の魂が色濃く反映されるかというと、声優の方かもしれない。
Body2 声と外見のvTuber
アニメ以上に声がキャラクターの核と認識されているのがvTuberの世界だ。
vTuberとして声を発するものは「なかの人」と呼ばれ、外見以上に声を出すものはキャラクターと同一視される。魂とも表現されることもある
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人気VTuberの「声変わり疑惑」が示した「魂」の大切さ: J-CAST ニュース【全文表示】
また、別のvTuberになることを転生と表現することも。
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魂、器、ペルソナ─ VTuber キズナアイの「分裂現象」が投げかけるもの – [KAI-YOU.net]
vTuber的な声とビジュアルの感覚は、初音ミクから始まったものと言えるかもしれない。初音ミクには固有の声(公式が発売する藤田咲の声をもとにしたボーカロイド)はあるが、多くの絵柄のイラストが存在する。そのどれもが初音ミクであるが、声は唯一のものとして認識されている。
私見では、アニメの記号論的特徴を引き継いだ表現でるvTuberの同一性は唯一声によって担保される。
同じモデリングであることが重要なのではない。豪華なMVではキャラデザも変わることはあるが、それでも同じvTuberとして認識される。
しかし、声が変われば別人と認識される。
実際に生放送などでしゃべる人物が背後にいることがわかっているからこそ、そう捉えられるのだろうが、こうしたvTuber文化の流行が、「声が魂」という風潮はアニメにも逆流して強まっている可能性はあるかもしれない。
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アニメの二次創作のキャラクターも同一のキャラクターとして認識する時代、キャラクターの要石となるのは、絵を司る絵師よりも声を司る演者であるという見方の強いのかもしれない。
アニメの少年、女性が演じるのはなぜ? 「アニメと声優のメディア史」石田美紀さんインタビュー|好書好日
Body3声が与える印象とは、人の印象を決めるのは声か
※おまけ程度にしておく。
声の大脳の旧皮質にダイレクトに作用するので、快不快を直接呼び起こすと考えられる。理性で
声によって人間は好きか嫌いかを決めてしまっている、あるいは信頼できるかどうかを決めている。
NHK出版新書 548 声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか | NHK出版
人の心を揺さぶるスピーチをする人は内容よりも喋り方が上手い。声に説得力があるなどの特徴があるし、有名な宗教家はたいて、声の力を重視する。
政治家もそうだ。
『人は見た目が9割』とは……見た目に「声」が含まれる | コミュニケーションスキルを高める発声、話し方、文章のオンラインスクール「声のサロン」
声は飽きない?
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メモ終わり。『ゆるキャン△』の話からはいってvTuberの話を経由して、さらに一般論としての声の重要さについて書く予定でしたが、話が大きすぎるかもなと思って、最後の要素はおまけ程度にしています。
実際、生身の人間関係でも声のインパクトはかなり大きいはずで、外見と声、どちらの方が力が強いものなのか、考えてみるのもいいかもしれません。多分、このコラムのテーマはそこまで直結する話で、アニメは外見と声をそれぞれ分離して作るので、そのことが顕在化しやすいんだと思うんですよね。
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