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濱口竜介監督が語る、意外な環境問題の本質 – 『悪は存在しない』に込められた深い洞察

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ハフポストに『悪は存在しない』濱口竜介監督のインタビュー記事を掲載しました。

濱口竜介監督が問う自然との共生「環境問題に関心があるのか?と聞かれるが、これは身近な暮らしの問題」 | ハフポスト アートとカルチャー

濱口監督に取材するのは、これで3度目です。今回は濱口監督がフランス滞在中だったのでリモート取材となりました。

本作は、地方の町にグランピング場の建設計画が持ち上がったことで起こる人間関係の軋みを描く作品です。コロナ禍の補助金を目的に、東京の芸能事務所が、全然門外漢なのにグランピング場の建設計画を持ちかけるけど、地元の自然環境を考慮した計画になっておらず、話し合いは紛糾。東京から説明に来た2人もこのやらされ仕事に不満を持っていて、長野の自然との共生生活にふれるうちに、ちょっと変わっていきます。

主人公の男性は薪割りをしながら、自然の湧き水を汲んで生活しています。一人娘と暮らしており、人と自然のバランスのいい暮らしのあり方を体現しているように見えます。

本作は何を描いた作品か、一言で表すのが難しいのですが、単純な環境保護の問題を扱ったという感じではないです。人が生きるには、どうあってもある程度自然を壊さざるを得ない、その業について描いたような、そんな感じです。

「やりすぎたらバランスが崩れる」というセリフが出てくるのですが、壊しすぎが良くないということであって、壊すこと全てを否定するわけではないというか、そういう微妙なポイントをついている作品です。

記事は前後編に分かれる予定で、前編は作品についての話が中心。後編は監督の作家としての活動や映画製作の労働環境についての話です。
 
 
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Thesis
環境問題をどう考えるのか、自然に悪も何もない
 
 
Point4つ
地方と都会の対立の話ではない
人間の一個の身体も最小単位の自然、
身近な暮らしの問題として環境問題を捉える
バランスの話
 
 
Intro

濱口監督の最新作が公開

石橋さんの依頼で始まった本作は、長野の山村で起きるある計画が巻き起こす人間ドラマ。

ひとと自然の関わりについての洞察が深い作品

ドライブ・マイカーで世界を席巻してから満を持して送り出す新作について聞いた
 
 
Body1地方と都会の対立の話ではない
本作のあらすじ

– 思いついたのは、石橋さんの依頼あってリサーチする中で発見した話から

1. 濱口は石橋英子さんのライブパフォーマンス用の映像制作依頼を受けた。
2. 石橋さんの音楽と調和する自然のモチーフを探していた。
3. 地元の風景や住民との世間話からインスピレーションを得た。
4. グランピング計画が地元住民と対立し、崩壊したエピソードに興味を持った。
5. このエピソードが都会の人間がよくやりそうなことだと感じた。
6. 普遍性の高い出来事として、自然と人間の関わりを描く物語の中核に据えることにした。

– グランピング計画のタレント事務所が説明会を開くシーンは出色。無理解な都会の会社と地元の対立が描かれているように見えるが、そう単純ではないと監督は言う。

1. 慣習と現実のイメージ:
– 人々が頭の中で作り上げた現実と実際の現実とのギャップについて述べ、これが映像業界だけでなく企業などでも経験されることだと指摘。

2. 都会と地方の対立なのか:
– 単純な2項対立として描いていない。
– グランピング計画も反対されていたわけではなく、地域のためになることであれば住民は協力的だった。
– 都会と地方の関係はもっと融和的で、自然豊かな暮らしの中にも都市的な要素が入り込んでいる。
 
 
Body2人と自然
環境問題を含む内容だが、環境問題について描こうと思ったのではないという。

1. 意図の有無:
– 当初は環境問題に関する意図はなかったが、結果的にそのように受け取られることがある。

2. 環境問題の認識:
– 環境問題に興味がないとは言えず、身近な暮らしに深く関わる問題であると認識。
– 自然と社会生活、文化的生活の接点にある地域は問題が顕在化しやすい。

3. 都市と自然の関係:
– 都市では自然破壊が見えにくくなっているが、実際には暮らしの行動の一つ一つが自然を壊していると感じる。

4. 個人の問題:
– 環境問題は個人の周辺の問題として捉えられがちだが、実際には一人ひとりの話であると強調。
– 最近の気候変動は危険な変化を示しており、普通に考えるべき問題だと感じる。
 

もっと身近な暮らしの問題としてとらえるという姿勢
 

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メモ終わり。

環境問題を大テーマではなく、生活レベルの問題として捉える姿勢があるようですね。実際、もう地球の将来がうんぬんというより、夏の暑さは身近な生活の問題として危険ですし。視点をもっと生活レベルでもって環境について語れるのでは、それで人間の悲喜こもごもが描けるという確信が濱口監督には合ったんじゃないかと思います。

後編は、映画製作に姿勢などについての話になります。

後編も公開されました。
濱口竜介監督が考える映画製作の極意。作家性か商業性か「自分も大衆の1人という意味では、欲望は創作のベース」 | ハフポスト アートとカルチャー
 
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