[PR]

『チ。 ―地球の運動について―』のノヴァク、良き父親で苛烈な異端審問官の実像

[PR]

アニメ!アニメ!の敵役連載に、『チ。 ―地球の運動について―』の異端審問官ノヴァクについて書きました。

「チ。」ラファウ、オクジーら知性の敵対者・異端審問官ノヴァクはどうして残酷になれるのか? | アニメ!アニメ!

『チ。』についてはこの連載で取り上げたいと思っていた1本です。この作品は、主人公は変わっていくけど、敵であるノヴァクはずっと出続ける作品だからです。その物語構造が面白いなと思ったのと、ノヴァクというキャラクター自体のインパクトも大きかったので。

信仰と探求心を巡るこの作品で、探求心を押さえつける象徴的な役割としてノヴァクはいるわけですが、それがどういう動機からなされているのか、この作品は非常によく描けていて、そこに説得力があるんです。

ノヴァクは悪人ではない、敬虔な信徒であり、良き父親です。それ故に探求心を持った連中を拷問にかけている。この図式がすごいですね。非常に分析しがいのある物語と敵役です。

どうしてこういう敵役がこの作品に必要とされたのか、その必然性みたいなものを強く感じさせます。非常に完成度の高いキャラクターだと思います。
 
 
以下、原稿作成時のメモと構成案。
 
 
———————-
 
 
「チ。―地球の運動について―」ついに完結!魚豊×津田健次郎、情熱が理屈を超えてしまった人間たちの物語を語り尽くす (2/2) – コミックナタリー 特集・インタビュー

チ。-地球の運動について- – Wikipedia
 
Thesis
最後に自分が悪役だったと男が悲しく認める物語
 

Point5つ
主人公が変わっていく物語、しかし敵役はずっと不変でノヴァクがいつづける
善良で凡庸な父親であり仕事人。既存の価値観に疑わない、ずっと同じがいいと考えている
この物語は好奇心と知性が主人公、ではその敵は? 信仰や愛でさえもそれに敵対してしまう時がある、あるいは「不安」、、不安があるから神にすがる?
最後に自分が間違っていた可能性に気づいた、、、
痛みを面倒くさがって無視してしまった
 
 

Intro

チ。―地球の運動について―の真の主人公は誰かは議論の的だ。

だが、敵役ははっきりしている。

主人公が時代に応じて入れ替わる特徴を持ったこの作品は、どうしてか敵役はノヴァクに固定されている。

ノヴァクというひどく残忍な、しかし、ひどく凡庸で善良な人間が敵役であることの意味を考える。
 
 

Body1 変わる主人公と変わらない敵役

主人公が変わる、代々の主人公を列挙

共通して持っているのは、自由と知性への探求心。前提を疑うことのできる人間たちであること。

これを作中から実例を出して語る

対するノヴァクはどんな人物か。異端審問官として天動説を唱える人間を拷問して改心させる。仕事として淡々とこなすのが特徴

受け継がれる意思の物語。人が変わっても普遍の探求心に対する、既存の価値観を揺さぶられたくない普通の人々の代表としてノヴァクはいるのではないか。

神を信じるのは不安だから、というセリフがある。不安を乗り越えて今の常識を疑える人間たちが主人公で、歌が得ないノヴァクが敵になるのは必然。
 
 

Body2 ノヴァクは凡庸で良き父親

子煩悩で娘を父親として心から愛しているノヴァク。家族を守るためならなんだってやると言う。

何も社会や世界全体を救おうなんて思ってない、ささやかな家族を守りたいだけの普通の男であり、真面目な仕事人なのである。ただ、拷問に慣れすぎているし、既存の価値観や常識を疑うことを知らない。

拷問要素を除けば、大変に凡庸で、ささやかな愛を持ってつつましく生きる人間とも言えるような男だ。そんな人間が苛烈な拷問で地動説を追いかける者たちを八つ裂きにしている。

こういうことができるのは、最初から残忍な人間というわけではない。普通の人間が、普通の幸せを守るために残酷になれるということ。

だが、そういうやつは物語の主人公ではない。大抵の場合。

最後の彼が悪役だったと気が付いてしまう。その瞬間だけは、彼は物語の主人公になれたような、そんな気がする。

知性と好奇心に敵対するものは不安、それを鎮めるための信仰や常識に従う規範。安寧を守るためなら人はなんだってやる、普通の人間の残忍さを体現する男だった
 
 
———————
 
メモ終わり。

ノヴァクは、最期の最期に変われるのですが、死を間近にしてその心の変化が訪れるのが、この作品のすごいところで。本当にやるせない気分になりますが、たしかに人の人生はこういうものかもしれない、という強烈な説得力があります。本作に欠かせないキャラクターですね。
 
関連作品

※サムネイル画像は、Chat GPT(DALL·E)にて作成。